モータースポーツや自動車のテクノロジー分野に精通するジャーナリスト、世良耕太が東京オートサロン2023で記憶に残った車両はAE86 H2 Concept、AE86 BEV Concept、ホンダ・シビック・タイプR-GTコンセプト、ミツビシ・デリカミニだった。それぞれの魅力を解説する。
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■AE86 H2 Concept「“ハチロク”へのこだわりを大切にした変更。作り手の想いに感動」
2023年はAE86カローラ・レビンとスプリンター・トレノ(総称してハチロク)がデビューして40年を迎える。オリジナルモデルですら、いまでも「乗ってみたい」と思わせる魅力をたたえているが、TOYOTA GAZOO Racingが出展したAE86 H2 Conceptはオリジナルにも増して魅力的だ。
“H2”の車名が示すように、ガソリンの代わりに水素を燃料とする水素エンジン車に改造。「ハチロクのオーナーは4A-Gのエンジンに強いこだわりを持っている方が多い」からと、必要最小限の変更、具体的にはサージタンク下流の吸気系(ポート噴射のインジェクターを含む)のみの変更に留めているのがポイントだ。
シートの表皮やシートベルトのパッド、ドアの内張りにカーボンニュートラル素材を採用したのも開発陣のこだわり。「無鉛」ガソリンのステッカーを模した「水素」ステッカーを作成して貼ったのは遊び心である。作り手が楽しんでいることが伝わってきて、とてもいい。
![写真右:AE86 H2 Concept(水素エンジン車)](https://cdn-image.as-web.jp/2023/01/16154147/asimg_OGA21545_5a63c4f1ab137fc-660x440.jpg)
■AE86 BEV Concept「EVにうれしい6速MTの選択肢。早く乗ってみたい」
ガソリンエンジンと燃料タンクをモーターとバッテリーに置き換えたのが、AE86 BEV Conceptである。BEV(電気自動車)なのにマニュアルトランスミッションを組み合わせているのがユニークだが、「オリジナルのミッションは貴重」だからと、GR86の6速MTを組み合わせているのがポイント。
雑にクラッチをつないでもエンストはしない。クラッチミートした際は、あえてトルク変動を作り、クラッチに振動を返す制御を取り入れているのだそう。また、エンジンのサウンドを車内のスピーカーから流すことで、エンジン車と同じ運転のリズムや、パワートレインとドライバーの対話ができるように仕立てたのだという。
カーボンニュートラルに向かう選択肢のひとつとしての提案には違いないが、「乗ったら楽しい。それに尽きます」の開発者の言葉は真意である。乗ってみたい!
![AE86 BEV Concept(電気じどう車)](https://cdn-image.as-web.jp/2023/01/16154149/asimg_OGA21546_7463c4f1acdf388-660x440.jpg)
■ホンダ・シビック・タイプR-GTコンセプト「最高で最上のタイプR。2024年に向けた進化に期待」
ホンダは事前に「2024年シーズンの実戦投入を目標に開発を進めている新型レーシングカーのコンセプトモデルを初公開」すると予告していた。GT3かな、GT4かなと深く考えもせずにベールを脱ぐ瞬間を待っていたのだが、現れたのは2024年のSUPER GT GT500クラスに投入する車両だった。それも、ベース車はシビック・タイプRである。驚いたのなんの。
そして、「これはカッコいいぞ!」と思った。現在のGT500規定のルーツとなっているクラス1規定はDTMと共有する内容で、4ドアセダンと基本骨格を共有する2ドアクーペがカッコ良く見えるような規定になっている。だから、4ドアセダン風(実体は5ドアハッチバック)のシルエットを持つシビック・タイプがカッコ良く仕上がって当然(と耳打ちしてくれたのは開発者のひとり)。つまり、規則との親和性が高いベース車のチョイスではある。実戦投入に向けた進化が楽しみだ。
![ホンダ・シビック・タイプR-GTコンセプト](https://cdn-image.as-web.jp/2023/01/16154156/asimg_OGA22724_2a63c4f1b3a21e4-660x440.jpg)
■ミツビシ・デリカミニ「実車を見てさらに魅力倍増。自分流カスタムを考える楽しさ」
元も子もないことを言えば、デリカミニの中身はeKクロススペースだ。しかし、「デリカ」の小さい版だと知ると途端に興味が湧いてくるし、実際、事前に公開された写真を見ると、魅力的に感じる。
会場でも同じように感じた人たちが多かったとみえて、三菱自動車のブース、それも、新型デリカミニをカスタマイズした車両は人だかりが絶えなかった。「お、あった、あった」と興奮を口に出しながらブースに入ってくる人もいる。観察していると、購入対象車として真剣に要所をチェックしている人たちが目に付いた。
「デリカという車名の偉大さを感じます」と説明員。魅力的なクルマに仕上がっているのは間違いないが(展示車を見ているとキャンプに行きたくなるし、雪道を走りたくなるし、車中泊したくなる)、同感である。
モータースポーツや自動車のテクノロジー分野に精通するジャーナリスト、世良耕太が東京オートサロン2023で記憶に残った車両はAE86 H2 Concept、AE86 BEV Concept、ホンダ・シビック・タイプR-GTコンセプト、ミツビシ・デリカミニだった。それぞれの魅力を解説する。
![ミツビシ・デリカミニ](https://cdn-image.as-web.jp/2023/01/16154144/asimg_DSC05347_9663c4f1a783453-660x440.jpg)
![ミツビシ・デリカミニ](https://cdn-image.as-web.jp/2023/01/16154142/asimg_DSC05334_3c63c4f1a5d63b0-660x440.jpg)
![ミツビシ・デリカミニ](https://cdn-image.as-web.jp/2023/01/16154146/asimg_DSC05376_d563c4f1a9657d7-660x440.jpg)