【中野信治のF1分析/2022最終回】大きく飛躍した角田裕毅と岩佐歩夢。高まる期待と勝負の2023年

 マックス・フェルスタッペンの圧倒的な強さと速さが目立った2022年のF1シーズン。最終戦のアブダビGPから見えたレッドブル、フェラーリ、メルセデスの関係性を元F1ドライバーの中野信治氏が独自の視点で振り返ります。そして2023年に大きな期待が掛かるF1参戦3年目の角田裕毅、そしてスーパーライセンスの獲得が目前に迫ったFIA F2に参戦している岩佐歩夢の成長と進化について、中野氏が語ります。

レッドブル&HRC密着総集編:すべてが研ぎ澄まされたフェルスタッペンと、安定感が増したペレスの走りで圧勝の2022年

 レッドブルにとって、2022年はチーム史上最高のシーズンとなった。

 まずマックス・フェルスタッペンがドライバーズ選手権2連覇を達成。チームもコンストラクターズ選手権を制し、2冠に輝いた。レッドブルが2冠を独占するのは、2013年以来9年ぶり。F1が2014年にハイブリッド時代に入ってから初めてのことだ。2021年にコンストラクターズ選手権を取り逃がしたレッドブルにとって、この2冠はメルセデス時代に完全に終止符を打つことになったという意味で大きな価値がある。

ペレスはフェルスタッペンと戦うために「ハードルを上げることが必要」と元F1ドライバー。ブラジルでの一件は今後に影響か

『Sky F1』の解説者たちによると、2022年F1第21戦ブラジルGP後のマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスの間の摩擦は、レッドブルに永続的な影響を及ぼすだろうということだ。

 フェルスタッペンが、ポジションをペレスに戻すように指示するチームオーダーに従わなかったため、ペレスはそれをよしとせず、チーム代表のクリスチャン・ホーナーはレース後すぐに緊急会議を開くことを余儀なくされた。ホーナーは双方のドライバーに、このような状況に折り合いをつけるよう強いた。

リカルドがレッドブルF1にリザーブとして帯同するのは特定のレースのみ。ピレリのタイヤテストにも参加へ

 レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、2023年にダニエル・リカルドがリザーブドライバーとして待機するのは、限られた数のレースであることを認めた。

 マクラーレンを去るリカルドはレッドブルとリザーブドライバー契約を結んだが、ホーナーは例外的な事情がない限り、リカルドをレースシートに昇格させる計画はないことを明確にした。必要に応じてレッドブルのジュニアドライバーであるリアム・ローソンが、チームの第一の代役要員になるのだ。しかしながらローソンは、2023年は日本で全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦することになっており、そのうちの3戦がF1のエミリア・ロマーニャGP(イモラ)、カナダGP(モントリオール)、メキシコGP(メキシコシティ)と日程が重なっている。

レッドブルF1のマルコ、ペレスの貢献を讃えるも「彼はフェルスタッペンではない」と実力差を指摘

 レッドブルのモータースポーツコンサルタントを務めるヘルムート・マルコは、レッドブルの成功へのセルジオ・ペレスの貢献を高く評価しているが、マシンのポテンシャルを最大に、もしくはそれ以上に引き出すことにかけては、ペレスはマックス・フェルスタッペンにおよばないという。

 2022年、レッドブルは記録破りの1年を過ごした。このシーズン中にチームはF1の22戦中17戦で勝利を飾ったのだ。それでもメルボルンでの第3戦で2回目のリタイアを喫したフェルスタッペンは動揺し、フェラーリのシャルル・ルクレールとのタイトル争いは事実上すでに終わってしまったと確信していた。

レッドブルのニューウェイ、F1ハイブリッド時代初期は「戴冠はないとわかっていたので気が滅入った」と振り返る

 レッドブルのチーフテクニカルオフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイは、2014年にエンジンの規定が変更された時のことを振り返り、「あれはリセットだった」と語った。

 レッドブルとセバスチャン・ベッテルは、2010年から2013年までF1を席巻した。ベッテルは4年連続で世界タイトルを獲得し、チームも同じく4年連続でコンストラクターズタイトルを手にした。この4年の間に他のチームが優勝できたのは、ほんの一握りのレースだけだった。

レッドブルF1、2月にオーストラリアで開催のバサースト12時間レースでデモランを実施へ

 レッドブルは2011年のチャンピオンマシンであるRB7を2月にオーストラリアに送り出す。2月のバサースト12時間レースの週末に、マウント・パノラマでデモランを行う予定だ。このマシンのショーランを誰が行うのかについて、レッドブルはまだ明らかにしていない。

 デイビッド・クルサードは古巣のレッドブルのためによくデモランを行っているが、地元のファンは、すぐにも対応できるであろうレッドブルのリザーブドライバーのダニエル・リカルドが、オーストラリアの象徴的なレーストラックでのデモランを託されることを望んでいるに違いない。

フェルスタッペン、僚友に遅れをとったドライバーは「自分の役割を受け入れる必要がある」と語る

 レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、いつもチームメイトに遅れをとっているF1ドライバーは、「おとぎ話」の世界に生きるのではなく、ナンバー2ドライバーとしての立場を受け入れなければいけないと述べている。

 2016年にフェルスタッペンがレッドブルに昇格して以降、レッドブルにおける彼のリーダーシップが脅かされたことは一度もない。ダニエル・リカルドから、ピエール・ガスリー、アレクサンダー・アルボンに至るまで、フェルスタッペンのチームメイトは彼の圧倒的ポジションに挑むことはできず、来ては去っていった。

レッドブルF1ボス「ホンダにまつわる状況は難しい」2026年以降のPU計画について近々決定。アルファタウリ売却は否定

 レッドブルのモータースポーツコンサルタント、ヘルムート・マルコは、2026年以降のパワーユニット(PU)プランについて近いうちに決定する予定であると語った。2026年からF1には新世代パワーユニットが導入される予定となっており、レッドブルは、自社のパワーユニット部門レッドブル・パワートレインズ(RBPT)での参戦を登録している。一方、現在レッドブル・パワートレインズに技術支援を行っているホンダ・レーシング(HRC)も、マニュファクチャラーとしての登録を行った。

レッドブルとホンダの関係性。ホンダF1事業の理想的な未来予想図を考察する【大谷達也のモータースポーツ時評】

 モータースポーツだけでなく、クルマの最新技術から環境問題までワールドワイドに取材を重ねる自動車ジャーナリスト、大谷達也氏。本コラムでは、さまざまな現場をその目で見てきたからこそ語れる大谷氏の本音トークで、国内外のモータースポーツ界の課題を浮き彫りにしていきます。今回は、レッドブルとホンダの現在の関係、そしてホンダF1事業の未来予想図について考察します。