1993年以来30年ぶりに復活したGTPクラスの下、ついに登場した4メーカーのLMDhカーによって総合優勝が争われた2023年のデイトナ24時間レース。ポルシェ、アキュラ、キャデラック、BMWの新型ハイブリッド・プロトタイプカーのデビュー戦は既報のとおり、メイヤー・シャンク・レーシングw/カーブ・アガジャニアンの60号車アキュラARX-06が制し、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権“新時代”の記念すべき1ページ目にその名を残している。
そんな第61回ロレックス24・アット・デイトナの決勝レース後のトピックスをお届けする。
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*** メイヤー・シャンク・レーシング(MSR)は、ロレックス・デイトナ24時間レースで通算3勝目を挙げ、規定の異なるアキュラのマシン(アキュラARX-05【DPi】とARX-06【LMDh】)で2連勝を達成した。同チームのもうひとつの勝利は2012年、フォードエンジンを搭載したライリーDP(デイトナプロト)で記録したものだ。
*** エリオ・カストロネベスは、1973年と1975-76年に優勝したピーター・グレッグ以来の3連覇ドライバーとなったが、3年で勝利を収めたのはカストロネベスが史上初。これは1974年の大会がオイルショックの影響で中止となったためだ。
*** トム・ブロンクビストとシモン・パジェノーは、ともに2連勝で2回目の優勝を飾った。彼らとチームを組んだコリン・ブラウンは2014年のPC(プロトタイプチャレンジ)と2020年のLMP2クラス優勝に続いて、ロレックス24で初の総合優勝を果たしている。
*** MSRチームの共同オーナーであるマイク・シャンクは、残り26分で迎えた最後のリスタート時に、10号車コニカミノルタ・アキュラARX-06を駆るフィリペ・アルバカーキが「とても敬意を払ってくれた」と、同じアキュラ・ファクトリーGTPチームのオーナーであるウェイン・テイラーに感謝した。
■車検失格車両なし。リザルトが確定
*** ポルシェLMDhのファクトリー・ディレクターであるウルス・クラトレによると、6時間目にバッテリーの交換作業を行った7号車ポルシェ963はウォーターパイプの問題により、残り6時間を切った段階で追加のガレージ送りを強いられたという。クラトレは次のように説明した。「ウォーターパイプが破損したのは初めてのことだった。私たちはこの他にも多くの問題を抱えていた。今回のレースでは初めてのことが多く、今まで直面したことのない問題もあった。レースの後にやるべきことがたくさんある」
*** アクション・エクスプレス・レーシング(AXR)のチーム・マネージャーであるゲイリー・ネルソンは、ジャック・エイトケンのデビュー戦に満足している。「我々は、ジャックにとても感激している。彼は初めて我々のマシンに乗り、ピットを出てそして接触してしまった。でも、接触は彼のせいではなく、あの瞬間にクルマが集まってしまっただけなんだ」
*** BMW Mモータースポーツ・ディレクターのアンドレアス・ルースは、スタートフラッグを振ったBMWグループ取締役会長のオリバー・ツィプセの存在と関心によって、ファクトリーLMDhの運営に弾みがついたと語った。「彼はレース中ずっとここにいて、皆にありがとうと言っていた」とルース。「彼はチームの一員であることを楽しんでいた。彼にとっても我々にとっても、いい機会だったと思う」
*** ルースは、25号車BMWが序盤にハイブリッドの問題に遭遇したにもかかわらず、姉妹車の24号車よりも速かったと付け加えた。BMWは、この差をさらに分析するつもりだ。「それはドライバーのせいではないことは確かだ」とルースは述べた。「(2台に乗った)コルトン・ハータがあるクルマでパフォーマンスを発揮し、別のクルマで遅いということはドライバーのせいではないからね」
*** GTPクラスのレース後技術検査は、事前のアナウンスのとおり月曜日の午前中まで延長された。これは、新しいハイブリッドエンジンを搭載したプロトタイプカーの確認作業が、以前に比べて複雑になったためだ。全5クラスで車検対象となったすべてのクルマが検査を受け、当初発表された結果が変更されることなく無事に検査が終了した。
■昨日の敵は今日の友?
*** LMP2クラスで、クラウドストライク・レーシング・バイ・APRのベン・ハンリーをわずか0.016秒差で破ってクラスウイナーとなったジェームス・アレン(プロトン・コンペティション)は、皮肉にもアルガルベ・プロ・レーシング(APR)から2月に4レースが開催されるAsLMSアジアン・ル・マン・シリーズに参戦することになった。
*** プロトン・コンペティションは、2014年のコア・オートスポーツ以来、デイトナ24時間の1レースでふたつのクラス優勝を達成した最初のチームとなった。チームのボスであるクリスチャン・リードによると、LMP2クラスに初参戦したプロトンにとって、この勝利は厳しいスタートとなったという。「残念ながら、予選でアクシデントがあったんだ。この1週間でもうひとつアクシデントがあったからメンバーは休む暇もなかった。だが、それよりも重要なのは今日、彼らが達成したGTDプロ(ウェザーテック・レーシング)とLMP2の勝利だ。本当に素晴らしい一日になった」
*** ウィンワード・レーシングは、ロレックス24のジェットコースターのような旅におとぎ話のような終わりをもたらすという希望を抱いていたが、最終的にはリタイアに終わってしまった。57号車メルセデスAMG GT3は、フィリップ・エリスがターン2で3号車コルベットC8.R GTD(コルベット・レーシング)とサイド・バイ・サイドになり左後輪にダメージを負った。皮肉なことに、エリスはルーカス・アウアーがオープニング・プラクティスでクラッシュしたのとほぼ同じポイントでウォールに激突してしまった。
*** アイアン・リンクスのメカニックたちは、ウィンワードが全損となった車両の代わりとなるメルセデスAMG GT3を用意するために役立ち、金曜日の夜から決勝日の朝4時までの長いシフトをこなした。ラッセル・ワードは、このレースをウィンワードの「もっとも信じられない」レースだと表現した。「このレースは、オール・オア・ナッシングで、勝利を手にするために全力を尽くした。今、僕たちは失望している。何しろ、最後尾からトップまで一気に駆け上がり、一時はGT3勢をリードすることもあったのだからね」
■ニューモデルが苦戦する一方、アストンマーティンが初優勝
*** ランボルギーニは、アンドレア・カルダレッリ、ミルコ・ボルトロッティ、ロマン・グロージャン、ジョーダン・ペッパーのアイアン・リンクス63号車がGTDプロで4位となり、ウラカン・エボ2モデルのデビュー戦を表彰台まであと一歩のところで終えた。チーム代表のアンドレア・ピッチーニは、「我々に与えられたBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)は優勝争いの可能性を奪ってしまったが、強力な戦略と素晴らしいドライバーのおかげで、レース全体を通してリーダーラップに留まることができた」と語った。
*** 今戦がデビュー戦となった新型フェラーリ296 GT3と“タイプ992”ポルシェ911 GT3 Rも苦戦を強いられた。跳ね馬の最速タイムはダニエル・セラの1分47秒277で、GTDプロの最速ラップを記録したジュール・グーノン(79号車メルセデスAMG GT3/ウェザーテック・レーシング)に約1.7秒の遅れを取った。ポルシェの最速タイムはパフ・モータースポーツ9号車のパトリック・ピレがマークした1分48秒472とさらに厳しいものだった。
*** ロレックス24で初のクラス優勝を果たしたアストンマーティンは、デイトナでGTD表彰台に2台を乗せたメーカーとして、ポルシェ(2015年)、ランボルギーニ(2018年、2020年)、メルセデスAMG(2021年)に続いた。マグナス・レーシング(44号車バンテージGT3)は、昨年のクラス2位という結果を繰り返している。
*** 一方、優勝したハート・オブ・レーシングチーム(27号車アストンマーティン・バンテージGT3)は、2021年にプチ・ル・マンで勝利し、昨年はワトキンス・グレン6時間で優勝を飾ったことから、これでミシュラン・エンデュランスカップの4レース中3レースで勝利を収めたことになる。
*** 元F1ドライバーのロマン・グロージャンは、NBCスポーツの中継のなかで、アイアン・リンクスのGTDプロ・ランボルギーニのエントリーで次戦セブリング12時間に参加することを確認した。Sportscar365は、彼の僚友であるジョーダン・ペッパーもエンデュランスカップ第2戦のラインアップの一部になる可能性が高いとのことを理解している。
*** FIAフォーミュラ3のレースウイナーであるラルフ・アロンが、アイアン・リンクスのゲストとしてレースに参加した。24歳の彼は現在、アイアン・リンクスと提携し、ランボルギーニLMDhプログラムでイタリアチームと協力するプレマのチームマネージャーを務めている。
*** デイトナ・インターナショナル・スピードウェイは、ロレックス24のファン動員数が過去最高を記録したと発表した。NASCARの方針により数字は公表されないが、インフィールドは近年まれに見る混雑ぶりで、今年初めて一般入場券保持者に開放されたガレージエリアも満員だった。