少し時間が経ってしまったが、2022年11月8日にスペインのリカルド・トルモ・サーキットで行われた公式テストについて、今回はヤマハとホンダに焦点を当てていくことにしよう。ヤマハはファビオ・クアルタラロがドゥカティのフランセスコ・バニャイアと最終戦バレンシアGPまでタイトルを争い、クアルタラロは惜しくも2連覇を逃した。
一方のホンダは、今季未勝利。表彰台獲得としても、マルク・マルケスが2位1度、ポル・エスパルガロが3位1度という結果で、未だに長いトンネルから抜け出すことができずにいる。2023年シーズンに向けたバレンシアのテストについて、ライダーの反応を見ていこう。
■クアルタラロ「トップスピードが2日前と変わらない」
バレンシアテストで、ヤマハは2023年に向けたエンジンやシャシー、フロント側の空力デバイス、テールカウルのウイングなどをテストした。焦点のひとつはエンジンだろう。以前からクアルタラロは、トップスピードの向上を求めている。ただ、バレンシアテスト後はポジティブなコメントにはならなかった。
「エンジンはミサノ、バルセロナでのテストで走らせたものよりも少し、速くなるはずだったんだ。でも、2日前まで走らせていたもの(2022年型エンジン)と同じだとわかった。特に、予選ラップだ。スピードを比較すると同じだった」
バレンシアGPのQ2でクアルタラロが記録した最高速は324.3km/h、決勝レースでは330.5km/h。テストでは327.4km/hを記録しているが、クアルタラロは、このときはスリップストリームを使ったからだと説明した。
テストで1番手の最高速を記録したバニャイアの335.4km/hからは離れていることは確かだ。クアルタラロは、以前はあった新しいエンジンの改善が見られなくなっていた、と語っている。
「僕たちはミサノとバルセロナ、2回テストをした。その後、カル(・クラッチロー)がモテギとヘレスでテストをした。彼らは(新しい)エンジンに違いを見出していた。でも、今は違いがない。だから、何が起こったのかよく分析しないといけない」
クアルタラロはがっかりしている? と質問されると「もちろんだよ」と答えている。
「こんな風に今年を終えたくなかった。でも最後に何かがおかしくなってしまったんだ。ミサノとバルセロナでは僕たちは改善を感じたのに、今日何もないというのはありえない。何かが間違っていた」
バレンシアテストでは、ヤマハ勢として、クアルタラロがトップから0.546秒差の9番手、フランコ・モルビデリがトップから0.659秒差の14番手だった。
■マルケス「このバイクではチャンピオン争いはできない」
新しい空力デバイス、小さな変更を施したエンジン、異なるシャシーを備えるプロトタイプマシンを走らせたと言うマルケス。テストではこのプロトタイプに集中した。
「あまり大きな違いはない。フロントのフィーリングは少し増した。でも、まだほかの領域で失っているものがある。以前のバイクとこのプロトタイプのラップタイムはとても近い。結局、タイムの面で、パフォーマンスはとても似ていた」
何かを改善すれば、また別の問題が発生する。「僕たちはいつもそこにいる」とマルケスは言う。「コントロールを改善するためには、彼らはそれを理解しなければならない」と。さらにリヤのグリップは改善したか? との質問には「ノー」とも回答していた。「あまり大きな違いはない」のであるならば、ホンダが抱える問題は変わっていないということになる。
「もちろん、もっと期待していたよ。僕は常にさらに上を求めているから。でも、がっかりしているとは言えない。ホンダは取り組んでくれているんだからね」と語りつつ、マルケスはこうも明言していた。
「でも、もしチャンピオン争いがしたいなら、もっと必要なものがある。ここに持ち込んだバイクでは、チャンピオン争いはできないだろう」
マルケスはトップから0.644秒差の13番手で、ホンダ勢最上位。チーム・スズキ・エクスターから移籍のジョアン・ミルがトップから0.882秒差の18番手、中上貴晶がトップから1.049秒差の19番手、ミルと同じく移籍組のアレックス・リンスはトップから1.196秒差の20番手だった。