1月15日、2022年の大晦日から16日間にわたって激戦が繰り広げられたダカールラリー2023がフィニッシュを迎えた。世界一過酷なラリーとして知られるイベントに計3台の『GRダカールハイラックスT1+』で参戦したTOYOTA GAZOO Racingは、競技3日目にトップに立って以来、最終日まで順位を守ったナッサー・アル-アティヤ/マシュー・ボーメル組が後続を1時間20分以上引き離す圧勝で大会2連覇を達成。通算5勝目を挙げた。
チームメイトのジニエル・ド・ヴィリエール/デニス・マーフィ組は総合4位でフィニッシュし、ダカールラリー3度目の挑戦となったヘンク・ラテガン/ブレット・カミングス組が総合5位で続いた。TOYOTA GAZOO Racingは参戦車3台がいずれもトップ5フィニッシュを果たす強さを見せた。
サウジアラビア東部を舞台に争われたラリー終盤戦の各日レポートは以下のとおりだ。
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【ステージ12】
1月13日(金)のステージ12は、マラソンステージの2日目。“エンプティ・クォーター(空白地帯)”と呼ばれるルブアルハリ砂漠を走り、シェイバーのビバーク地へと戻る、総走行距離376km、SS距離185kmのステージ。2日間にわたるマラソンステージを終えた各車両は、ようやくビバークでの整備、修理を受けられることとなりました。
総合首位を守るアル-アティヤ/ボーメル組にとって、このマラソンステージを無事に走り抜くことが、2連覇へ向けて大きな意味を持つこととなりました。慎重にベテランらしい走りを見せ、ノートラブルでこのステージを3番手で走り抜いたアル-アティヤ/ボーメル組は、2番手との差を1時間27分10秒へと拡大することに成功しました。
総合4番手につけていたラテガン/カミングス組は、ステージ序盤の柔らかい砂地で横転。右リヤのサスペンションとブレーキディスクにダメージを負ってしまいました。このため、リヤブレーキ無しで走り続けることを強いられ、大きくタイムロス。ステージを首位から48分35秒遅れの28番手でフィニッシュとなり、総合順位ではド・ヴィリエール/マーフィ組にかわされる形で5番手に後退。総合では首位と2時間34分21秒送れ、4番手のド・ヴィリエール/マーフィ組とは12分差となっています。
ラテガン/カミングス組は、ラリー終盤に入ってからのタイムロスに無念の意を表しながらも、アクシデントが起きても自分たちクルーを無事に守り、最後までステージを走り切ったGRダカールハイラックスT1+の耐久性を高く評価しました。
ド・ヴィリエール/マーフィ組はトラブルなくステージ12をトップから11分34秒遅れの9番手で走り抜き、ラテガン/カミングス組をかわして総合4番手に浮上しました。
このダカールラリーは世界ラリーレイド選手権(W2RC)の1戦としても争われており、昨年のチャンピオンであるアル-アティヤ/ボーメル組は今年もタイトル防衛を目指しています。
W2RCではステージ勝利にもポイントがかけられていますが、アル-アティヤ/ボーメル組は、ステージ勝利数では目下ライバルの後塵を拝している状況です。それでも、ステージ12を終えた時点でトップとの差は9ポイントであり、総合優勝での大きなポイントも含め、激戦が続いています。
【ステージ13】
残すところ2ステージとなった1月14日(土)のステージ13は、総走行距離675km、SS距離は154kmと短いものの、柔らかい砂丘が広がる、予想以上に過酷なコースで、最後の最後まで気の抜けないステージとなりました。そんななか、TGRのGRダカールハイラックスT1+は3台ともに堅実な走りで揃ってトップ10フィニッシュ。総合順位を守りました。
総合首位のアル-アティヤ/ボーメル組はペースをコントロールしながらも、首位と5分28秒差のステージ2番手。総合では2番手に1時間21分52秒差をつけ、最終ステージを残すのみとなりました。
前ステージで横転し、総合5番手に後退したラテガン/カミングス組はこのステージ13で5番手フィニッシュと好走。総合では4番手に7分24秒差の5番手となっています。
ド・ヴィリエール/マーフィ組はこのステージ、TGR勢では唯一トラブルに見舞われました。スタート直後に左フロントダンパーの不具合発生、ペースダウンを余儀なくされました。また、ステージ中盤では視界不良のために乗り物酔い症状となり、厳しい一日となってしまいました。それでもステージをトップから13分51秒遅れの10番手でフィニッシュ。総合4番手を守っています。
【ステージ14】
1月15日(日)、のステージ14は、アル=フフーフからダンマームへ向かう、総走行距離417km、SS距離は136kmでラリーフィニッシュへ向けた最後の戦いが行われました。 最後のSSを走り終えた参加車両は、100kmほどのリエゾンを経て、サウジアラビア東海岸の都市ダンマームに設置されたフィニッシュポディアムへと向かいました。
1時間以上のマージンを持って首位でこの最終ステージに挑んだアル-アティヤ/ボーメル組は、首位から5分41秒遅れのステージ8番手でフィニッシュ。この瞬間、アル-アティヤにとっては通算5度目、ボーメルにとっては4度目のダカールラリー総合優勝が決定しました。アル-アティヤ/ボーメル組は、ステージ3で総合首位に立った後、一度もその座を譲ることなく、2番手に1時間20分49秒の差をつけて、昨年に続く2連覇を達成しました。このコンビによる、トヨタでの総合優勝は3度目。この勝利はまた、トヨタ車のさらなる品質、耐久性と信頼性を示すものとなりました。
ド・ヴィリエール/マーフィ組は総合4位でフィニッシュ。ド・ヴィリエールにとっては20回目のダカールラリー完走であり、2009年の優勝を含め、15回目のトップ5フィニッシュ、そして、トップ10圏外フィニッシュは1度のみと、ベテランらしい粘り強さを示す結果を今年も達成しました。
ダカールラリー3度目の挑戦となるラテガン/カミングス組にとっては、今年のダカールラリー2023は、悔しいレースとして長く記憶に残るものになるでしょう。一時は総合2番手まで浮上するも、2度のトラブルで順位を落とすこととなりました。それでも4位と5分以内という僅差での総合5位。自身初のトップ5フィニッシュを果たし、今後の活躍に期待がかかる結果となりました。
ダカールラリー2023は、TGRワークスのGRダカールハイラックスT1+が1位、4位、5位という結果となりましたが、加えて、プライベート参戦のルーカス・モラエス/ティモ・ゴットシャルク組のGRダカールハイラックスT1+が総合3位に入り、トヨタ勢はトップ5のうち4台を占めるという好結果を残すこととなりました。今大会がダカール初挑戦だった、若きブラジル人ドライバーのモラエスは、経験豊富なコ・ドライバーのゴットシャルクとともに、見事な走りを見せました。
今大会ダカールラリー2023は、2シーズン目となる2023年世界ラリーレイド選手権(W2RC)の開幕戦でもあり、アル-アティヤ/ボーメル組は合計85ポイントを獲得しました。ステージごとの成績も加味されるW2RCは、2023年シーズンは全5戦で争われ、第1戦を終えた時点で、アル-アティヤ/ボーメル組は首位と2ポイント差の2位、マニュファクチャラー選手権でもTGRは1ポイント差の2位に付けています。次戦は2月の最終週に行われるアブダビ・デザートチャレンジです。
■ダカールラリー2023最終結果(総合順位)
Pos. | Driver&Co-Driver | Car | Gap |
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総合優勝 | #200 ナッサー・アル-アティヤ&マシュー・ボーメル | GRダカールハイラックスT1+ | - |
総合4位 | #205 ジニエル・ド・ヴィリエール&デニス・マーフィ | GRダカールハイラックスT1+ | 2h31’12 |
総合5位 | #217 ヘンク・ラテガン&ブレット・カミングス | GRダカールハイラックスT1+ | 2h36’23 |
■コメント
●TGR ダカールチーム代表 グリン・ホール
「チームにとって最高の日だ! ダカールで勝つというだけでも大変なことだが、この世界一タフなラリーで2連覇できたというのは本当に驚異的だ。すべてのチームメンバー、パートナーの皆さま、そして、もちろんドライバーとコドライバー、この素晴らしい結果をもたらしてくれたすべての方に感謝する」
「GRダカールハイラックスT1+は、世界一過酷な自動車レースで勝てるというだけでなく、2年連続でそれを達成できるだけの信頼性と耐久性を持っているということを改めて示せたし、本当に誇りに思っている」
●TGR W2RCチーム代表 アラン・デュハディン
「まず、3組のドライバー/コドライバーに心から感謝したい。ナッサーとマシュー、ジニエルとデニス、そして、ヘンクとブレット、全員が最初のステージから全力で戦ってくれた。彼らの努力により、TGRにふたたびダカールのトロフィーがもたらされた」
「今日のダカールラリーでの勝利は、W2RCを戦う上でも重要な一歩となる。とくに熾烈な争いが予想される今季のW2RCにおいて、ダカールラリー総合優勝によってもたらされたポイントはとても大きい」
「ダカールラリー同様、W2RCでもタイトル防衛を目指し、ライバルと僅差でサウジアラビアから次のステージへと向かうことになるが、残るシーズンも良い戦いができると確信している」
●ナッサー・アル-アティヤ(No.200)
「最高の気分だ! ともに戦ってきたすべてのチームメンバーを含め、多くの人に感謝したいと思う。タフな2週間だったが、またダカールを戦い、こうして勝つことができたことが素晴らしい」
「GRダカールハイラックスT1+を誇りに思うし、TGRとともに3勝目を飾れたことは本当に格別だ」
●ジニエル・ド・ヴィリエール(No.205)
「ダカールはつねに挑戦の日々だが、今年も挑戦し続けた。もちろん、もっと良い結果も望んでいたが、それは他の多くの参加者も同じだろう。表彰台に上れればもっとよかったが、全体的に見れば、マニュファクチャラーとして、トヨタは誇るべき結果を成し遂げたと思う」
「この結果はハイラックスの信頼性を改めて証明するものだと思うし、今年もサウジアラビアでこの素晴らしいGRダカールハイラックスT1+の性能を披露することができた」
●ヘンク・ラテガン(No.217)
「僕にとって、今年のダカールラリー2023はジェットコースターのようだった。非常に良い日もあったが、残念な日もあり、タフな2週間だったよ」
「こんなに厳しい、さまざまなことが起こったダカールラリーで、トップ5フィニッシュを果たせたことに満足している。レース中のことを思い返すと、好結果で完走を果たせたことを本当に嬉しく思う」