2022年のFIA F2で4勝を挙げてランキング3位に入り、スーパーライセンスポイント40点を獲得。さらに、レッドブルとアルファタウリのリザーブドライバーを務め、3度F1のフリー走行に出走するなど、レッドブル育成ドライバーの中でもっともF1に近い存在と目されるリアム・ローソンが、2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権にTEAM MUGENから参戦する。
12月7〜8日に鈴鹿サーキットで行われたSF合同/ルーキーテストからTEAM MUGENに合流したローソンは、「スーパーフォーミュラの車両を走らせるのは楽しいし、鈴鹿サーキットは子供の頃からF1のゲームで慣れ親しんでいて、ずっと走りたいと思っていたサーキットだったから、ようやく走ることができて、素晴らしい経験だったね」とテストを振り返った。
「2日間のテストではセットアップを含め、2023年シーズンを見据えてさまざまなことに取り組んだ。また、TEAM MUGENと関係を深めるためにも非常に重要なテストだったと思う」
「最後の方は首が……ね(笑)。正直、かなり筋肉痛が出たよ。(セッション4での)初めての20周のロングランは長く感じたね。でも、FIA F2はパワーステアリングがないけど、SFはパワーステアリングがあるから、すごく乗りやすく感じた。クルマ自体もレスポンスがよくドライブしやすく、特にハイスピードなコーナーが続く鈴鹿のセクター1は感動的だった」
2021年から2シーズンFIA F2を戦い、通算5勝をマークしたローソン。SFのダラーラSF19とFIA F2のダラーラF2 2018、ともにイタリアのダラーラ製でロールアウトも1年しか違わない両車両の最大の違いは「ダウンフォース量だ」と語る。
「あとは車重だね。FIA F2の車両は車重が重いから(ダラーラF2 2018は720kg、ダラーラSF19は670kg)、もし鈴鹿のセクター1をFIA F2車両で走った場合、ウエイトの影響を大きく受けるだろうから、SFのようなレスポンスの良さを感じることはできないと思う。そして、SFがハイスピードかつスムーズに走ることができるのはタイヤの違いも大きいと思う」
「ヨコハマタイヤは、FIA F2のピレリのタイヤとはウォームアップ性能もピークも、タイヤのドロップも違う。だからヨコハマタイヤに慣れるまで想像以上に長く感じたというのが正直なところだ」
SF合同/ルーキーテストにTEAM MUGENはローソン1台で臨んだ。ただ、2年連続王者となった野尻智紀もチームに帯同し、SF初ドライブとなったローソンをサポートした。
「テスト前日に野尻と一緒にトラックウォークに出たんだ。歩きながらコーナーごとにアドバイスを貰ったし、テストの2日間もずっと応援してくれたね。無線も聞いてくれていて、セッションの間には僕の質問にも答えてくれた。それはすごく役に立ったと感じている」
「参戦ドライバーがみんなそうだと考えているとおり。僕の目標はシリーズチャンピオンだけだ。もちろん、ルーキーだから頑張らなければならないことも多いけど、チャンピオンチームで、チームメイトも2021年と2022年シーズンのチャンピオンの野尻だ。もちろん、野尻よりもいい結果を出さなければいけないし、そのためには彼からも多くのことを学ばなければいけないと思う」
そんなローソンには、来日の前からふたりのSF経験者が助言をしていたという。そのひとりが、ローソンにとっては母国の先輩にあたる2019年のSF王者ニック・キャシディだ。
「ニックはクルマのセットアップの組み立て方を教えてくれた。FIA F2のセットアップがベーシックだとすると、SFのセットアップはレベルが高い。セットアップを組み立てる上で注意しなければいけないこと、そしてハイスピードな車両のドライビングについてアドバイスをもらった」
「日本まで来るかはわからないけど、もしかしたらシーズン中に応援に来てくれることもあるかもしれないね。ニックはすごく昔からの友達であり、僕にとっては子供のころからのアイドルなんだ。すごく憧れた存在だし、今は彼も僕もイギリスに住んでいるからたまに会って夕食をともにしたり、仲良くしてもらっている」
そして、もうひとりは2017年にTEAM MUGENからSFへ参戦しランキング2位となったピエール・ガスリーだ。2016年GP2王者のガスリーはレッドブル・レーシングのリザーブドライバーを務めつつSFに参戦。最終鈴鹿大会の2レースが台風の影響により中止となり、タイトルには0.5ポイント届かなかったが、日本のファンに強烈な印象を与え、また同年のマレーシアGPからはダニール・クビアトに代わりトロロッソからF1の終盤5戦を戦った。
「SF参戦についてはピエールとも話をしたんだ。アルファタウリからF1のフリー走行に出走した際にはピエールのクルマにも乗ったし、彼とともに過ごす時間も多かった。僕が日本に行くと決まってからは、ピエールもたくさんのアドバイスをくれた。彼は日本に住んでいたしね」
「彼は高い目標を定めてSFに参戦していた。だから、僕も同じことができると考えている。僕の走りを楽しみにしてほしい」
なお、ローソンは、F1に参戦するレッドブルとアルファタウリのリザーブドライバーを2023年も務めるとされている。そのため、生活の拠点はレッドブルF1のファクトリーのあるイギリスに置き、レースのたびに来日するかたちとなりそうだ。
F1でリザーブドライバーを務めつつ、SF王者を目指すという立場もあり、“ガスリーの再来”とも評されるローソン。2023年のSF参戦は、F1への最終試験とも言えるだけに、その戦いの行く末に大きな注目が集まるに違いない。