国鉄・JRの鉄道線から転換されたバス路線「代替バス」72路線のうち、全国で54路線が現在も活躍中だ。
1本のバスに乗れば、鉄道時代と同じように端から端まで乗り通せる路線もあれば、細かーーーく分けられ乗り継ぎが必須になった路線もある。後者の筆頭格に挙げられるのが、西日本のJR三江線代替バスだ。
文・写真:中山修一
中国地方の長〜いローカル線
島根県の江津(ごうつ)を始点に、広島県の三次(みよし)までの約108kmを、山中を流れる雄大な江の川を沿い進むように結んでいた鉄道路線が三江線だ。
全通は1975年と、国鉄が敷いた鉄道線の中では後発の部類に入る。民営化後もJR西日本が引き継いでそのまま営業が続けられた。
2010年代の時刻表を見ると、端から端まで乗り通せるチャンスは1日あたり上下線とも3回。距離が長く線形も険しかったため最速でも2時間44分〜3時間16分程度かかった。
現役当時はJRの路線の中でも特に利用者が少ないことで知られており、青春18きっぷのシーズン等を除けば、普段は1両編成のディーゼルカーが往来する、のどかなローカル線の様相であった。
場所柄、自然災害の影響を受けやすく幾度も不通となるも、その度に復旧の手が入る不死鳥のような存在だったが、利用者数とコストを天秤にかけた現実からは逃れられず、2018年3月に廃止された。
代替バス化で1本が“輪切り”に!!
鉄道廃止後、ほぼ同じ区間をバスが引き継ぐ流れはセオリー通りだ。ただし三江線の場合、バスも変わらず1路線のまま……ではなく、当初は14路線に“輪切り”された形で運行を開始した。
全国に54路線の代替バスが活躍中と先に記しているが、これは「三江線代替バス」を一括りにして数えてあるため、細かく言おうとすればもっと増える。
各路線ごとにバス事業者も異なっている。もともと鉄道時代も乗り通しをするのは鉄道マニアくらいなものだったので、地元民の利便性を特化させる分には切り分けても大きな影響はないのだろう。
その反面、土地勘がない旅行者にとっては頭を抱えるタネになってしまったのは否めない。
三江線代替バスの枠組みに含まれるのは2022年現在11路線程度。その全部に乗れば始点から終点まで向かえるワケではなく、下手をすると枝分かれして途方に暮れるしかない場所まで連れて行かれてしまうのだ。
どの路線を選べば鉄道の要領で通過できるか見極める必要が出てくる。そのためにはまず、マップを開いて地理のお勉強を始めないといけない。
マップとバス路線図を照らし合わせれば合わせるほど「レンタカー」のキーワードが頭をよぎる…
…それくらい複雑難解極まるのだが、何とか頑張って使えるバスを抽出したところ、以下の路線を乗り継げば、江津を出発して三次までバスで結べるとわかった。
【パターンA】
(1)石見交通 江津川本線
(2)大和観光 川本美郷線
(3)備北交通 作木線
または
【パターンB】
(1)石見交通 江津川本線
(2)大和観光 川本美郷線
(3)飯南町営バス 谷・赤名・頓原線
(4)備北交通 赤名線
他の行き方も確認できたものの、全部書き出して選択肢を増やすと「ジャムの法則」が働いてしまい本末転倒もいいところなので、今回は2パターンに留めておこう。
時刻表に潜んでいた真の強敵!!
そんなのアプリやWebサイトの乗換情報サービスで検索すれば一発では? と思いきや、そう簡単に出てこないのが三江線代替バスである。「こっちのほうが早いですよ」と、代替バスと関係のない経路を提案してくるのが普通だ。
一つ一つ個別のバス停の時刻表を開いて手動で繋げていく作業となる。ここにもまた巨大なトラップが仕掛けられている。ローカル路線バスのお約束、本数の少なさだ。
3時間程度で通過できた鉄道に対して、バスの所要時間は最速で3時間52分(土日祝パターンA)。平日ダイヤになるとバスがきれいに繋がらず7〜9時間を要する。
また、パターンBの(3)は土日祝に運休するため、間違っても該当日に選んではいけない。途中で急に腹が痛くなる等、万一に備えて1回どこかで降りられるよう最終バスを猶予に残しておきたいなら、条件はますます厳しくなる。
訪問予定日が平日に決まり、自動的に時間がかかる行程をクリアしていくことになりそう……どうにか机上での理屈はまとまった。あとは現地へ赴き、実践できるか乗りバスで確かめてみよう。続きは次の機会に。
投稿 最初から諦めたくなる“最凶”難易度!? JR三江線代替バス!! は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。