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 ボルボトラックスの自動運転部門(V.A.S.)とアメリカで貨物マッチングプラットフォームを提供するウーバーフレートが、戦略的長期パートナーシップを結んだ。

 トラックドライバーの立場からは自動運転に対して賛否がある。ともあれ、世界で最も包括的といわれるウーバーのプラットフォームで、自動運転が利用可能になったことで、無人輸送ソリューションの商用化は大きく前進したと言えそうだ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Volvo Autonomous Solutions ・ Uber Freight

ボルボとウーバーが自動運転で提携

ボルボとウーバーが北米の自動運転トラックで戦略提携!! 自動運転による輸送が商用化されてもドライバーは仕事を失わない!?
北米市場でボルボとウーバーフレートが戦略提携

 2022年12月14日、ボルボトラックスの自動運転部門、ボルボ自動運転ソリューション(Volvo Autonomous Solutions、以下V.A.S.)と、荷主・運送会社向けに貨物マッチングプラットフォームを提供するアメリカのウーバーフレートは、長期間(マルチフェーズ)の戦略的パートナーシップ協定を発表した。

 今回のパートナーシップには、V.A.S.の自動運転による輸送ソリューションと、ウーバーフレートの輸送プラットフォームを統合することも含まれており、これによりサービスを利用している荷主企業はテキサス州の一部で自動運転による輸送を利用可能となる。

 また、ボルボがネットワークを拡大するのに合わせて、それ以外の路線でも利用できるようになる予定だ。

 「自動運転」というとトラックドライバーにとって(一般の人にとっても?)、「運転手の仕事がなくなる!」というイメージが先行しているが、両社が思い描いているトラック輸送の未来は、自動運転トラックと人間が運転するトラックが協調して働くというもの。

 そのためにV.A.S.は H2H(Hub to Hub = ハブからハブへ)という輸送モデルを構想している。このモデルはハブ(輸送拠点)からハブまでの長距離輸送を自動運転が担い、人間のドライバーが集配送を行なうというものだ。

 ドライバーを長時間拘束する長距離輸送を自動運転に置き換えることで、モノの移動はより安全に、そしてより効率的になる。また両社は、こうした新しい輸送モデルによりドライバーの待遇や労働環境、生活の質も向上するとしている。

自動運転による輸送の商用化を目指す

 ウーバーの宅食事業などは日本でもすっかりおなじみになった。その貨物版であるウーバーフレートは、荷主と運送事業者をマッチングする輸送プラットフォームで、世界中のあらゆる事業規模の荷主と運送会社に、トラック輸送の新しいあり方を提案している。

 技術に基づく輸送ソリューションによって、貨物輸送の価格設定や予約など定着した商慣行を変革し、モノの移動に信頼性と柔軟性、そして透明性をもたらすとともに、トラックドライバーに公平な環境を提供することを目指している。

 ウーバーフレートの輸送ネットワークは中小企業から「フォーチューン500」のグローバル企業まで、13万社の運送事業者と荷主企業で構築されている。

 今のところテキサス州の一部だけとはいえ、こうした包括的なネットワークで自動運転トラックによる輸送が利用可能になったことは、その商用化に向けた大きな前進といえるだろう。

 この提携に際してV.A.S.社長のニルス・イエーガー氏は次のようにコメントしている。

 「V.A.S.とウーバーフレートの提携に期待を寄せています。私たちの自動運転ソリューションとウーバーフレートのネットワークを統合することで、お客様である荷主企業には商品をより効率的に運ぶ機会を提供します。

 また、業界の変革期にあって最大の課題となっているトラックドライバー不足に対しても、自動運転という技術により解決を目指します。

 私たちのソリューションとウーバーフレートの顧客基盤を合わせることで、お客様が求めている実際のニーズを学ぶことができ、業界全体に利益をもたらすソリューションを構築する機会を得ます。これまで経験したことのない変革に直面している運送業界は、今まさに新しいソリューションを必要としているのです」。

 いっぽう、ウーバーフレートのCEOを務めるのリオル・ロン氏は次のように話した。

 「V.A.S.は間違いなく自動運転分野のリーダーです。私たちのお得意様である荷主企業は革新的であり、しばしば新技術のアーリーアダプターとなります。自動運転による輸送ソリューションへのアクセスを提供することは、輸送能力の拡大とサプライチェーンの効率性・持続可能性の改善への道を開くでしょう」。

 V.A.S.とウーバーフレートのパートナーシップは、荷主、運送事業者、輸送サービスプロバイダー、貨物ブローカーなどに向けたもの。V.A.S.はこうしたパイロットプログラムを通じて一部の顧客と戦略提携し、自動運転による輸送ソリューションの商用化に取り組んでいる。

仮想ドライバーではオーロラ社と協力

 V.A.S.はボルボの「トランスポート・アズ・ア・サービス」(サービスとしての輸送)に基づき、自動運転による輸送ソリューションを提供している。

 これには仮想ドライバー(自動運転に必要なソフトウェア、ハードウェア、センサー類などを一つにまとめたシステム)と自動運転に対応した車両、必要なインフラ、運行と稼働のサポート、輸送システムやロジスティクスを管理・制御するためのクラウドソリューションなども含まれる。

 これらの輸送ソリューションは、顧客のニーズに合わせてオーダーメイドすることで、トラックの運行をより安全に、より生産的に、より持続可能にすることを目的とする。

 また、V.A.S.は自動運転のパイオニアであるオーロラ・イノベーションと協力し、安全性と効率性をさらに高める仮想ドライバーを共同開発し、それをボルボの大型トラックへ展開している。

 2021年9月には、ボルボの北米における長距離輸送用フラッグシップ大型トラックである「VNL」の自動運転プロトタイプが公開された。

 ちなみにオーロラ社はグーグルの自動運転部門(現・ウェイモ)のトップと、テスラおよびウーバー出身の技術者の3人が創業した自動運転技術のスタートアップだ。

 かつてはフォルクスワーゲンと提携し乗用車向けの自動運転システムの開発を行なっていたが、2020年にトラック向けを中心とした自動運転システムに方針を転換した。パッカー、ボルボなどのトラックメーカーのほか、日本のトヨタ、デンソーなどとも提携している。

 オーロラ社はウーバーの自動運転部門を買収しており、ウーバーはオーロラ社に出資するという関係だ。仮想ドライバーの「オーロラ・ドライバー」が採用するライダー(光による検知と測距)は、従来のレーザーパルスに替わり低出力のレーザービームにより連続してセンシングを行なうことで精度を高めた。

 トラック輸送の変革を目指すウーバーフレートは「ドライバー・アズ・ア・サービス」(=仮想ドライバー)や「トランスポーテーション・アズ・ア・サービス」といった分野で業界をリードする企業との連携を深めている。前者を代表するのがオーロラやウェイモなどの企業、後者にV.A.S.などの企業が含まれている。

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