レッドブル・レーシングが2021年にF1レギュレーションで定められている支出額の上限を超過したことでペナルティを受けることが決まっているが、2023年に空力テストにおいて制限を科されることについて、チーフテクニカルオフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイは、コース上のパフォーマンスに影響するとして懸念を示した。
レッドブルは多額の罰金を科されただけでなく、2023年には風洞とCFD(数値流体力学)における開発時間を10パーセント減らされることになった。
F1は、空力テストを行える時間についてハンディキャップシステムを導入しており、コンストラクターズ選手権の順位が高ければ高いだけ、許されるテストの機会が少なくなる。2023年初めは、2022年ランキング7位のチーム(アストンマーティン)が100パーセントに設定され、風洞テストは1日2回までの走行が320回、風洞稼働時間は80時間、風洞占有時間は400時間許される。CFDのテスト量はMAUh(Mega Allocation Unit hours)で計測され、異なる立体パーツ2000個が基準に定められている。マシン1台はひとつのパーツとしてカウントされるが、ひとつの変更が行われるだけでそのマシンは“新パーツ”となる。
これらを基準として、10位(ウイリアムズ)は115パーセント、チャンピオンチーム(レッドブル)は70パーセントのテストを行うことが許されるのだが、レッドブルはここから10パーセントさらに引かれるため、63パーセントにまで減らされる。
つまり、レッドブルは、時速54km以上で稼働する風洞テストは50.4時間、CFDテストは1260パーツ/3.78MAUhに制限されることになる。チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、このことを「極めて厳しいペナルティ」と表現した。
2023年、ポーパシング対策が強化されることで、各チームは新たなフロアレギュレーションに対応しなければならないこともあり、レッドブルは難しい対応を迫られることになる。
ラップタイムにおいて、ライバルたちからどれぐらい遅れてしまう可能性があるかと尋ねられたニューウェイは次のように答えた
「テストが行われていないので、『1周あたり10分の何秒もの遅れが出る』といった答えを出すのは非常に難しい」とニューウェイはチームが公開したビデオで説明した。
「だが内部テストの削減によって、評価できる件数が減ってしまう。評価できるコンポーネントやアイデアの数が減るわけだ」
「賢明に行動し、常に適切なものをモデルに適用していけば、それほど大きな違いにはならない。しかしそのようにうまくはいかないものだ」
「常に望みどおりに作動しないパーツがあり、その逆の場合もある。この制限は間違いなく我々に影響するだろう」
ニューウェイは主な懸念事項として、新レギュレーションによってフロアのエッジの高さが引き上げられることを挙げている。
「もちろん小さなことに聞こえるだろうが、現実にはかなり大きな空力上の変更だ。他のチームと同じく、毎年の通常の開発に加えて、変更による損失を減らすための作業を行っている」
レッドブルRB18は、2022年シーズンに圧倒的優位に立った。マックス・フェルスタッペンは2年連続でドライバーズタイトルを獲得し、年間15勝の記録を作った。しかしニューウェイは、2023年にはライバルたちがギャップを縮め、僅差の戦いになると予想している。
「我々は明らかに素晴らしい1年を過ごした。特にシーズン後半だ。我々には最高のマシンがあった」
「しかしフェラーリが休むことはない。彼らはいくつか信頼性の問題を抱え、何度かピットウォールでミスを犯した。しかしそういった弱点を解決してくるだろう。そうして彼らは戦いに戻ってくる」
「メルセデスは、最初はペースが非常に劣っていたが、最終的には1回とはいえ優勝できるところまでマシンを進化させた。彼らも戦いに加わるだろうことは分かっている。間違いなく厳しい年になるだろう」
空力テスト削減のペナルティについては、フェルスタッペンもそれが妨げになると予想している。だが、レッドブルならこの不利な状況を克服できるとの考えを示した。
「僕たちはどこから始め、何に取り組むべきかを知っている」とフェルスタッペンは『Auto Motor und Sport』に対して語った。
「もしどちらへ進めばいいのか分からないということだったら、もっと大きな問題になるだろうけどね。どれだけ苦労するかは、一年の中ではっきりしてくるだろう。でも僕たちのマシンには競争力があった。この勢いを維持すれば、大丈夫なはずだ」