【新シーズンF1読本(後編)】正念場を迎える角田裕毅。真のマニュファクチャラー参入への期待と史上最多開催の課題

 2023年F1始動が近づきつつあるなか、ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、来るシーズンに注目する10の項目を挙げた。前編「フェラーリに黄金期以来のフランス人代表。アロンソのハネムーン時代の限界点とハミルトンの去就」 に続く後編では「重要な一年を迎える角田裕毅」「時間切れが迫るウイリアムズ」「新ラスベガスGPのビジネスプラン」「新たなマニュファクチャラー参入への期待」「史上最多開催数のシーズン」について紹介する。

インディNXTへの参戦を決めたチャドウィックがウイリアムズ・ドライバー・アカデミーに残留「F1への夢を持ち続ける」

 ウイリアムズ・レーシングは、ジェイミー・チャドウィックが2023年もチームのドライバー・アカデミーにとどまることを発表した。

 女性のみが参加するレーシングシリーズWシリーズで、2019年、2021年、2022年に3回タイトルを獲得したチャドウィックは、今年、インディNXT byファイアストンにアンドレッティ・オートスポートから参加することが決まっている。

自身に高い期待を抱くルーキーのサージェント。アメリカ人F1ドライバーであることに「余計なプレッシャーはない」と語る

 ウイリアムズのルーキーであるローガン・サージェントは、2015年以来となるF1におけるアメリカ人ドライバーであることに余計なプレッシャーは感じていないと述べており、国籍ではなく「ハードワーク」によってシートを勝ち取ったのだと主張している。

 アメリカでF1は明らかに大きな盛り上がりをみせており、2023年はマイアミ、オースティン、ラスベガスでグランプリが開催される。しかし歴史的に見ると、アメリカはたったふたりのF1世界チャンピオンを輩出したにすぎない。そのふたりとはフィル・ヒルとマリオ・アンドレッティだ。また、レース優勝を飾ったのは、当然だがヒルとアンドレッティ、そしてダン・ガーニー、リッチー・ギンサー、ピーター・レブソンの5人だ。

2023年F1新車発表スケジュール:トップ交代のウイリアムズがローンチイベントを開催。新カラーリングを披露へ

 ウイリアムズ・レーシングは、2023年シーズンのローンチイベントを、2月6日(月)に行うことを発表した。イベントの模様は14:00GMT(日本時間23:00)から、ウイリアムズのウェブサイトおよびアプリで配信される。

 1月11日、ウイリアムズは『2023年シーズン・ローンチ』を2月6日(月)に行うと発表、当日は、2023年仕様のカラーリングが披露され、新ドライバーペア、アレクサンダー・アルボンとローガン・サージェントが登場することを明らかにした。

ウイリアムズF1、FIA F3参戦のフランコ・コラピントの育成プログラム加入を発表

 1月9日、ウイリアムズ・レーシングはFIA F3に参戦するフランコ・コラピントが、同チームのドライバー育成プログラムであるウイリアムズ・レーシング・ドライバー・アカデミーに加入したことを発表した。

 アルゼンチン出身のコラピントは2003年生まれの19歳。2018年のスペインF4選手権で4輪レースへステップアップすると2019年には同選手権のシリーズタイトルを獲得。2020年はフォーミュラ・ルノー・ユーロカップに参戦しシリーズランキング3位を獲得。また、同年のウインターシーズンにはトヨタ・レーシング・シリーズ(2023年よりフォーミュラ・リージョナル・オセアニアとして開催)に参戦し、イゴール・フラガ、リアム・ローソンに次ぐシリーズランキング3位となった。

【動画】ウイリアムズF1、2023年F1デビューを果たすサージェントのアブダビテスト密着動画を公開

 2023年シーズン、ウイリアムズからF1デビューを果たす新鋭ローガン・サージェント。彼のF1ドライバーとして初めての走行の様子をウイリアムズが公開した。

 2000年生まれのサージェントは2021年末にウイリアムズ・ドライバー・アカデミーに加入し、2022年シーズンをFIA F2で戦った。アメリカGPの週末にはスーパーライセンス取得を条件にF1昇格が発表され、ランキング4位でシーズンを終えた彼は無事にそのシートを射止めた。

マグヌッセンが躍進を後押し。ドライバー泣かせのマシンでライバルを上回ったガスリー/2022年F1戦力分析(1)

 新たな技術規則が導入され、前年までとはまったく異なるマシンが誕生した2022年シーズンのF1。マシンの特徴やシーズン中のアップデート、ドライバーのパフォーマンスなどから、各チームの戦力を振り返る。初回となる今回は、コンストラクターズ選手権8位のハース、9位のアルファタウリ、10位のウイリアムズだ。

SeCR初代チャンピオンの武藤壮太。ウイリアムズeスポーツとの契約のきっかけは「1通のメール」

 12月17〜18日、国内最大のeモータースポーツの体験イベント『SUZUKA eMotorsports Experience 2022』にて、スーパーGTドライバーや国内トップシムレーサーが参戦するeモータースポーツのプロシリーズ『SUZUKA E-SPORTS CHALLENGE RACE(SeCR)』の第4戦/第5戦の開催が開催され、武藤壮太(Bigholiday eSports Team With 465garage)が、SeCRの初代シリーズチャンピオンに輝いた。

 F1に参戦するウイリアムズのeスポーツ部門『ウイリアムズeスポーツ』にも所属する武藤壮太に、2022年シーズンのSeCRを振り返ってもらうと同時に、ウイリアムズeスポーツへの加入の経緯を聞いた。

F1史上まれにみるチーム体制リシャッフル。フェラーリ、ザウバー、マクラーレンの新首脳がチームにもたらす効果を探る

 12月12日から13日にかけて、約18時間のなかで、F1チームの40パーセントのチームプリンシパルの変更が発表された。ウイリアムズ、ザウバー/アルファロメオ、フェラーリ、マクラーレンが立て続けに代表の人事について公表したのだ。これほど短時間に多数のチームのトップの移籍が発表されたのは、前例のないことだ。

 フェラーリはフレデリック・バスール、マクラーレンはアンドレア・ステラをそれぞれチーム代表に任命、ザウバーはCEOとしてアンドレアス・ザイドルを起用、ウイリアムズは代表を務めたヨースト・カピートの離脱を発表した。これら4チームには、体制変更によりしばらくは日々のチーム運営にネガティブな影響が出ると考えられ、そういう面では残りの6チームの方が2023年への準備を有利に進めることができるだろう。しかし、長期的に見るとトップ交代を行った4チームにはポジティブな効果が表れてくることが期待される。

ウイリアムズF1のシートを失ったラティフィ。苦戦した2022年シーズンは「3年間のなかで最悪の年になった」

 ウイリアムズを離脱するニコラス・ラティフィは、先月の最終戦アブダビGPがF1での最後の出走ということになりそうだ。このシーズンの締めくくりは、ラティフィのF1での3シーズンのなかでも最悪のものになった。

 ラティフィがグランプリドライバーとしての3年間で獲得したのはわずか9ポイントで、そのうち7ポイントは2021年に獲得し、2022年は10月の日本GPを9位でフィニッシュして2ポイントを獲得した。相対的に言えば、ラティフィは2020年と2021年にチームメイトのジョージ・ラッセルと肩を並べることはできず、今シーズンもアレクサンダー・アルボンを相手に苦戦が続いた。