アストンマーティンF1は、2022年シーズン限りでF1キャリアを終えたセバスチャン・ベッテルの引退に華を添える特別なビデオを公開した。
動画にはベッテルの引退レースとなった2022年最終戦アブダビGPの裏側に密着した模様が収められているほか、関係者とベッテル本人のインタビューも盛り込まれ、ベッテルへの感謝と愛が詰まった内容になっている。
2007年にBMWザウバーからF1デビューを果たしたベッテルは、その後数々の記録を樹立しながら、足掛け16年にも渡ってF1の世界を戦ってきた。しかし「すべてのものには終りがある」と本人も語るように、ついにそのキャリアに終止符を打つときが来た。
広報担当としてレッドブル時代からベッテルと仕事をしてきたブリッタ・ロースケは、「いつも最後にパドックを後にする人間だった」と、若かりしベッテルのハードワークを振り返る。
しかし一方で彼女は、ワールドチャンピオンになるためにすべてを捧げていたというベッテルが近年、「感情的になることは少なくなり、より他の人に寄り添う姿勢を見せるようになった」とその変化を明かした。
ベッテルが愛される理由は、その華々しい成績だけでなく、周囲の人間やファンへの気配りを忘れない人柄によるところも大きい。メカニックのマイキー・ブラウンも「ガレージにいるときはリラックスしていて、周りにいる人間を特別な気持ちにしてくれる」とベッテルの素顔を語った。
誰もがベッテルとの別れを惜しむなか、もちろんベッテル本人もパドックの友人やレースでのアドレナリンが恋しくなるだろうと認めている。しかし、彼は静かにこう続ける。
「おそらく場所を開けて、他の誰かにこの華やかな世界を楽しんでもらうときが来たんだ」
300戦の出走を重ね、優勝53回、4年連続ワールドチャンピオンという成績とともにF1を去るベッテルは、引退レースでも10位に入賞。この世界でまだ十分に戦えることを示しながら、彼はすでに新たな挑戦に歩みを進めていると最後に語った。
「僕はこれを始まりだと考えている。いつも次に何が起こるのか楽しみにしているんだ」
「スポーツ選手は引退後、本当の課題やチャレンジに直面することになると思う。それを恐ろしいと思う理由も十分あるけど、それが幸せだと思う理由もたくさんあるんだ」
「何か面白いと思えるアイデアや物事はきっとあるし、それを見つけるつもりだ」