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暖機運転はもう不要!? 「冷え~たクルマ」をシャキッ! とさせる現代のクルマのウォームアップ術

 エンジンをスタート後、しばらく時間をおいてから走り出すクルマの「暖機運転」。スポーツで言うところの準備運動やストレッチのように、日常的に行っているとなんとなくクルマが長持ちしそうなイメージのある暖機運転だが、果たして本当に必要なものなのだろうか?

 クルマ好きの間でも必要派と不要派、それぞれに意見が分かれる「暖機運転」について調べてみた。

文/井澤利昭、写真/写真AC

案外モヤッとしている「暖気運転」の定義、そもそもその目的とは?

暖機運転はもう不要!? 「冷え~たクルマ」をシャキッ! とさせる現代のクルマのウォームアップ術
古いクルマの場合、寒い季節はきちんと暖機運転をしないとアイドリングが落ち着かずエンストしてしまうことも

 ひと口に「暖機運転」と言ってもその方法は所説さまざまだが、エンジンを始動後アイドリング状態でそのまましばらく待機し、タコメーターの針の動きが落ち着いたり、水温がある程度上昇するのを待ってから走り出すというのが一般的。また、エンジン始動直後に走り出しはするもののしばらくは回転数を上げず、低負荷で走りながら行うという方法もあるようだ。

 その目的は文字通りエンジンを中心としたクルマ全体を“暖める”こと。ガソリンなど燃料の噴射を安定させることでエンジンの回転数のバラつきを抑えるとともに、クランクシャフトやカムシャフトといったエンジン内の駆動パーツに潤滑油であるオイルを十分に行き渡らせることで、そのエンジンが持つ本来のパフォーマンスを引き出すとともに、クルマを長持ちさせるという効果があると考えられている。

 気温が低くエンジンが冷え切ってしまう冬場では特に必要に思えるため、寒い日の出発前の“儀式”として暖機運転を長めに行っているという人も多いのではないだろうか?

現代のクルマに限って言えば「暖機運転は必要ない派」が圧倒的! その理由は?

 昭和の時代からクルマに親しんだ世代からするとなんとなく必要を感じ、やっておかないと愛車に悪影響が出そうにも思える暖機運転だが、現在のクルマではあまり重要視する必要はないようだ。

 その理由は、エンジンに供給される燃料の噴射技術が大きく進化したおかげ。現代のクルマでは電子制御によりエンジンの状態に合わせた最適な燃料噴射が行われるため、エンジンが冷えている始動直後であってもそれに合わせた適切な燃料噴射が自動的に行われている。これにより気温が低い冬場にすぐさま走り出しても、エンジンが不調になったりダメージを負うことはほぼ皆無。

 加えて、エンジンオイルを含む潤滑剤の性能が大きく向上している点も、現代のクルマには暖機運転が必要ないとされる理由のひとつだ。

 1970年代以前に製造された古いクルマなど燃料噴射に機械式のキャブレターを使う車種であればもちろん暖機運転は必要となるが、そんな旧車のオーナーなら、自分の愛車に最適なウォームアップの流儀を十分心得ていることだろう。

こんな場面であれば話は別!? 現代のクルマでも暖機運転をしたいシチュエーション

古いクルマの場合、寒い季節はきちんと暖機運転をしないとアイドリングが落ち着かずエンストしてしまうことも
長い間動かしていないクルマは、エンジン内部を潤滑するためのオイルの多くがオイルパンまで落ち、軸受けなどが“油切れ”になっている可能性も

 日常的に動かしているクルマの場合、エンジン内の各部には潤滑油であるエンジンオイルによってできた膜が形成されており、動作時に生じる摩耗から各パーツを防いでいる。

 ところが長い期間動かさずにいたエンジンの場合、摩耗を防ぐ役目を果たすエンジンオイルの多くがオイルパンまで流れ落ちてしまっているため、そのままの状態でアクセルを大きく吹かすといった強い負荷をかけてしまうとエンジンを傷めることになりかねない。長期の旅行や出張などで1~2週間ぶりにクルマを動かすといった場合は、現代のクルマでも暖機運転をしておくと安心できる。

 またマイナス10度以下になる寒冷地の朝など、気温が極端に低い場面も暖機運転をしておきたいシチュエーションだ。想定から大きく外れる低温下ではエンジンオイルの粘性が落ちている可能性があるため、アイドリングで暖機運転でオイルの温度をある程度上げてから走り出すのことでエンジンの負担を軽減できる。

それでもやっぱり心がけたい、現代のクルマに合わせた「暖機運転」とは?

暖機運転はもう不要!? 「冷え~たクルマ」をシャキッ! とさせる現代のクルマのウォームアップ術
ハイブリッド車では、エンジンが冷えている場合でも始動と停止が自動的に行われるため暖機運転の必要はない

 現代のクルマでは必要とされない暖機運転。とはいえエンジンの始動直後からいきなりアクセルを全開にするという走り方はやはりクルマにダメージを与えてしまう。そこで心がけておきたいのがクルマを労わる丁寧なドライブだ。

 エンジン始動後、停車(アイドリング)状態でエンジンオイルを十分に循環させたら、ゆっくりと走行をスタート。エンジンにあまり負荷をかけないよう、水温がある程度上がるまでの5分程度はできるだけ回転数を抑えるという優しい運転を日常的にするだけでも、エンジンを含めたクルマ全体へのダメージを防ぎ、愛車の寿命をより長く延ばすことができる。

 ここで注意しておきたいのが、エンジンを暖めるためのアイドリングの時間。30秒~1分程度の短い時間でもその効果は十分で、長時間のアイドリングは思いのほか燃料を消費してしまうだけではなく、排ガスや騒音といった周辺の迷惑になってしまうことも。早く暖めたいからといってアイドリング中に空ぶかしするのもエンジンへの負担が増すばかりでメリットはほとんどない。また、低速で走りながらの暖機運転も交通の流れを邪魔しないよう配慮が必要だ。

 必要以上にアクセルを煽ったり、急ブレーキや急ハンドルなど、クルマに過度な負担を強いる乱暴な走り方は避け、愛情を持った安全でスムーズな走りを心がけるこそが、現代のクルマの「暖機運転」へとつながりそうだ。

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