1月28日(土)13時40分にスタートが切られた第61回ロレックス24・アット・デイトナ(デイトナ24時間レース)は、翌29日(日)13時40分過ぎにフィニッシュを迎え、GTPクラスのトップチェッカーを受けたメイヤー・シャンク・レーシングw/カーブ・アガジャニアンの60号車アキュラARX-06(トム・ブロンクビスト/コリン・ブラウン/エリオ・カストロネベス/シモン・パジェノー組)が総合優勝を飾った。
今季もアメリカ・フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで幕を開けたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権。この2023年にWEC世界耐久選手権のハイパークラスにも参戦可能な“LMDhプラットフォーム”を用いた新型車両が登場した同シリーズでは、従来のDPiクラスから置き換えられたGTPクラスにアキュラ、キャデラック、ポルシェ、BMWの4メーカーが参加し、開幕ラウンドのグリッドには計9台のハイブリッド・プロトタイプカーが並んでいる。
決勝レースの前半戦は、25号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームRLL)や7号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)がトラブルを抱えて後退するなか、ポールスタートの60号車アキュラARX-06(MSR)を中心にトップ争いが繰り広げられた。
チャンピオンシップとデイトナ24時間、このふたつのディフェンディングチャンピオンであるMSRは、フルコースコーション中に迎えた12時間の折り返しも総合首位で通過した。しかし、直後のピットインでエンジンカバーを開けて作業を行ったことでポジションを下げてしまう。
また、同じタイミングで10号車アキュラARX-06を走らせるウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティ・オートスポートも短時間ながらガレージにクルマを戻して作業を行ったためトップから2周遅れとなった。この2台のトラブルについてアキュラのスポークスマンは、オイルシステムに燃料が浸透したためにオイルフラッシュが必要になったと説明。加えて10号車はオイルフィラーブラケットを修理したという。
リスタート後、5番手となった60号車はバジェノーの追い上げによりわずか30分ほどで首位に返り咲く。しかしその後はチップ・ガナッシ・レーシングが運営するキャデラック・レーシングの01号車キャデラックV-LMDhがトップを走り、60号車はこれを追いかける立場となった。
スタートから15時間後、キャデラック・レーシングの01号車と02号車がワン・ツー体制を築く。6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)と31号車キャデラックV-LMDh(ウェーレン・エンジニアリング・レーシング)が続いたが、ピポ・デラーニ駆る31号車はギアボックストラブルによりガレージで約30分の修理作業を強いられ16周遅れとなった。
31号車が復帰してまもなく、今度はニック・タンディの6号車ポルシェがインフィールド区間でコースを外れボディにダメージを負った。幸いにも大きなアクシデントに至らなかったが、トラブルなく走っていたポルシェ963の一台はボディカウルの交換と確認作業による遅れで3周遅れとなっている。
夜明けを迎えた現地7時過ぎ、スタートから17時間が経過した時点でリードラップに残っているのは、首位を走る01号車キャデラックと姉妹車で3番手につける02号車、この間に挟まれている60号車アキュラの3台のみ。スタートから14時間後以降フルコースコーションが出ず、総合4番手の10号車アキュラ以下、周回遅れとなっているグループがラップダウンを解消できていない。
長いアンダーグリーンにピリオドが打たれたのは、スタートから20時間過ぎのこと。ル・マンシケインで発生した20号車オレカ07・ギブソン(ハイクラス・レーシング)のクラッシュによって出された9回目のコーションにより、1分以上離れていたトップ3の間隔はリセットされ、同時にピットタイミングも揃うこととなった。
リスタート後はアキュラのパジェノーが01号車のセバスチャン・ブルデーを交わしてトップに浮上。22時間目に6号車ポルシェの一時的なストップによって出されたコーション明けでも2台のキャデラックの前を走っている。なお、6号車ポルシェはマシントラブルのためガレージに運ばれ、後にリタイアとなった。
■WTR10号車がリードラップに復帰。4台でのトップ争いに
22時間目のコーションではピット作業で02号車が01号車を先行した。また、この間に10号車がリードラップに復帰し、リスタート直後に導入された12回目のコーションの後にはトップ3の背後につけた。優勝候補が3台から4台に増えた状況で迎えた12回目のリスタートで、その10号車を駆るフィリペ・アルバカーキが3番手に上がりキャデラック勢の間に割り込む。さらに約15分後に02号車のバンバーを攻略して2番手に。これでアキュラ勢のワン・ツーとなった。
レースの最終盤、残り1時間を切った段階でLMP3車両がコース脇にストップしたため今レース13回目のコーションが導入される。この直前にGTPの上位勢は全車がピットインを行い、3番手の02号車に関してはセーフティカーの先導中にもう一度ピットに入り、タイヤを交換して最終スティントに向かった。
残り34分でリスタートが切られるが、GTDクラス2番手を走る57号車メルセデスAMG GT3を含むマルチアクシデントがあり、この事故で出たデブリと車両回収のためセーフティカー先導の走行に戻った。約5分後の再スタートはクリーンに決まり、直後から01号車と02号車による3番手争いが繰り広げられる。キャデラック2台が争う間に前を走るアキュラの2台は逃げを打ち、トップを走るブロンクビストは同門の10号車をも引き離していく。
結局60号車アキュラはそのまま快走を続け783周目の終わりに栄光のトップチェッカーを受け、見事ポール・トゥ・ウインでLMDhカー時代の初優勝を飾り同時に大会2連覇を達成した。2位となった10号車アキュラは4.190秒届かず。3位には9.630秒差で01号車キャデラックが入っている。
4位は02号車キャデラック、ギアボックストラブルで遅れた31号車キャデラックが5位。トップから15周遅れた24号車BMWが6位となっている。ポルシェ963は7号車が34周遅れてクラス7位/総合14位で初レースを完走した。
■最後は並んでフィニッシュ。その差は0.016秒
LMP2クラスはレース中盤以降、04号車オレカ07・ギブソン(クラウドストライク・レーシング・バイ・APR)と35号車オレカ(TDSレーシング)、そこに52号車オレカ(PR1・マティアセン・モータースポーツ)と55号車オレカ(プロトン・コンペティション)が加わるかたちでバトルが続いていた。そんななか、残り1時間半となった終盤にニコラ・ラピエール駆る52号車がトラブルから戦線離脱。この段階でトップを走っていたのは35号車だったが、残り40分の時点で行われていた04号車とのバトルの中でターン1でスピンを喫しトップの座を失ってしまう。
これで首位に立った04号車の勝利かと思われたが、追い上げてきたジェームス・アレン駆る55号車がラスト2周でトップ車両に追いつき、ここからファイナルラップにかけてテール・トゥ・ノーズの戦いを繰り広げる。アレンとベン・ハンレーの争いは最後の最後まで続き、ル・マンシケインの立ち上がりでややLMP3車両にひっかかる形となったハンレーの04号車に並びかけた55号車が、ハナ差でフィニッシュラインを超え逆転勝利を収めている。両車のタイム差はわずか0.016秒だった。
LMP3クラスは終盤の20時間目からトップを守ったAWAの17号車デュケインD08が圧勝。GTDクラスでもレース終盤を優位に進めたハート・オブ・レーシングチームの27号車アストンマーティン・バンテージGT3がライバルを退けクラス優勝を飾っている。なお、マグナス・レーシングの44号車アストンマーティン・バンテージGT3がクラス2位、同3位にインセプション・レーシングの70号車マクラーレン720S GT3が続いたことで、GTDクラスはイギリス車がトップ3を占める結果となった。
GTDプロクラスはウェザーテック・レーシングの79号車メルセデスAMG GT3が激戦を制した。同クラスでは13時間目以降、長く79号車がリーダーとなっていたが、19時間目に3号車シボレー・コルベットC8.R GTD(コルベット・レーシング)がこれを逆転。さらに10回目のコーションのリスタートでは14号車レクサスRC F GT3(バッサー・サリバン)が3番手から首位に躍り出た。
以降この3台の争いは終盤に相次いだフルコース・イエローコーションのたびにシャッフルされ混迷を極めることに。しかしペースではメルセデスAMGに若干の利があり、最終盤の戦いのなかで一歩抜け出た79号車がGT3カテゴリーのプロクラスウイナーとなった。クラス2位でフィニッシュしたコルベットとの差は3.9秒。14号車レクサスはさらに7秒ほど遅れ同3位でのフィニッシュとなっている。
このレースがデビュー戦となったフェラーリ296 GT3は、GTDプロクラスのリシ・コンペティツィオーネの63号車を含む計3台がリタイア。唯一完走したトリアルシ・コンペティツィオーネの023号車は総合23位/GTDクラス10位だった。同じく新型のポルシェ911 GT3 Rはリタイアこそ1台のみだったが、前週のロアから苦しんでいたペースが改善されず後方に沈むかたちに。最高位はパフ・モータースポーツ9号車の総合25位/GTDプロクラス9位だ。
日本人ドライバーの金丸ユウがスタートドライバーを務めたファストMDレーシングの87号車デュケインD08・ニッサンは、一時クラス3番手を走行する場面もあったがギアボックストラブルによって遅れを取り総合51位/LMP3クラス6位でレースを終えている。