もっと詳しく

 今シーズンは降雪が多いようで、早くも大雪による立ち往生や、雪国ではない地域での積雪が観測されました。一般ドライバーならば降雪時に不要不急の外出を控えることができますが、職業ドライバーはそうも言っていられません。

 ベテラントラックドライバーのヒデさんは、普段はあまり積雪のない関東在住ですが、大雪で立ち往生した経験からしっかり積雪に備えるそうです。ヒデさん流の大雪への備えをお聞きしました。

文/フェリー便ドライバーヒデさん、写真/国土交通省・ヒデさん・フルロード編集部
*2022年12月12日発行トラックマガジン「フルロード」第47号より

ヒデさんが経験した立ち往生のエピソード

ヒデさんが大雪でドハマリしてしまったときの様子。関東は積雪が少ない反面、一度積もると交通は大混乱をきたす

 積雪への備えということですが、幸い関東在住のため大雪に見舞われることは少なく、ここ数年はチェーンすら巻いておりません。

 ただ、運転手として20年近く走ってきて大雪にハマった経験が2回ほどありまして、その経験があるからこそしっかり準備します。大雪にドハマリしたのは2014年2月14日、いわゆる「平成26年の大雪」の日です。

 あの日は東京〜名古屋に向かって走行していました。事前情報では都心でもかなりの積雪の予想が出ており(実際に都内で27cm、埼玉県熊谷で62cmの積雪を観測)、昼過ぎに都内を出発して早めに切り抜けようと高速移動したのですが、厚木を超える頃には路面は真っ白。

 渋滞が発生して次の秦野中井ICまで1時間くらい掛かったかなぁ。御殿場の上り坂でスタック車両続出という情報があり、下道に逃げました。

 しかし、高速がダメな時は下道もダメです。R246に出たものの、ともに降り積もった雪は時間と共にガチガチに……。ツルツル滑り出した路面にさすがにチェーンを巻きました。

 大井松田を超えて駿東郡に差し掛かったところで車列が完全にストップ。数時間まったく身動きが取れない状態で、何度か車外に降りて積雪状況を確認したら、長靴がスッポリ埋もれてしまう状況だったことを覚えています。

 日付が変わって反対車線から公団のクルマが一台一台声掛けしに回ってきて「下りは除雪作業をして、上りは止めているから走れるなら反対車線逆走で走って下さい」とのことだったので、「ヨシ!」ってことで深雪を踏みしめながら逆走で走り出しました。

 この時に走り出したのは数台で、私が先頭でした。御殿場まではキツイ上り坂が3カ所あります。2カ所目まではなんとか上りきったものの、最後の坂がどうしても上り切れず、500mほど泣く泣くバックで坂を下りていきました……。

 さすがにそこで諦めがつき、Uターンして高速の通行止めが解除になるのを待ちました。朝になって雪は止んで晴れたのですが、路面はガチガチに凍っており、道中スタックしたトラックを皆で救助したりいろんなことがありまして、その日の夕方通行止めが解除になり、2日遅れの納品ということがありました。

大雪の経験から備えは万全!?

 昨今の降雪状況において西日本や日本海側での被害は尋常ではありません。ここ数年で各高速道路や主要国道ではスタック車両による立ち往生を防ぐべく、スタッドレスタイヤのチェック強化や危険区域を事前通行止めにする等の対策をしていますが、立ち往生に巻き込まれてしまう状況はどうしても発生してしまいます。

 対策として、まず自身が立ち往生の原因を作らないように車両管理が必須です。タイヤの溝や降雪予想地区を走行する場合はスタッドレスタイヤやチェーンの有無、チェーンも摩耗具合や劣化具合を確認しましょう。

 関東地方などでは、稀に「持っていても掛けたことが無い」という運転手さんもおりますが、毎年必ず練習しておくことが大事です。練習のついでにチェーンの状態のチェックをすれば一石二鳥です。

 ここでチェーンを巻くのにあると便利なグッズですが、ダブルタイヤなら内側タイヤに咬ませる5cmほどの板があると外側が浮くので掛けやすくなります。また、短い手鉤棒があるとチェーンの端を簡単に引くことができるので重宝します。

 チェーンを巻いていない状態で万が一スタックした時には、「ワンタッチチェーン」という緊急脱出用のチェーンもありますので気になる方は調べて見て下さい。実際に立ち往生に遭遇してしまった場合、数時間、もしかしたら数日間も身動きが取れないことも考えられます。

 最悪の事態を常に想定して、少し過剰なくらいの考え方が大事だと思います。狭くて寒い車内で燃料切れは死活問題にもなり得るので、半分を目安に入れると良いです。そして食料や水分を多めに持参していくことも大事です。携帯トイレを積んでおくこともお忘れなく。

 長時間放置されますと、エアの配管やブレーキチャンバーが凍りついて正常に作動しなくなる場合があります。過剰装備かもしれませんが、私は一応ガストーチを積んでいます。もしこの記事を読んで装備しようと思った方は、使用の際は充分注意して下さい。

外気温が低いと、エア配管等の水分が凍りつき警告が鳴りエンジンがかからなくなったり、正常に動かせなくなる可能性があるので要注意

 そして情報取得。出発から到着先までの天気予報、ライブカメラでの確認や通行止めが予測される地域では下道の情報も取得しておくと良いでしょう。ここまで大雪の対策等をお話してきましたが、最も重要なこと、それは「決して無理をしない!」ということ。

 納品に間に合わなくて焦ってしまい先を急ぎたくなるでしょうが、諦めることも大事です。先のエピソードでは私自身も無理をして走りましたが、結果は変わりませんでした。

 確実に荷物を届けることも大切ですが、逆に迷惑をかけてしまうこともありますので、大雪の時は自分を守る行動を最優先にして下さい。それでは明日もご安全に!

投稿 関東在住だけど大雪でドハマリ!! 立ち往生の経験から備えは万全に!【トラックドライバーに聞いた積雪対策・関東編】自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。