2023年、日本人WRCドライバーの勝田貴元がTOYOTA GAZOO Racing WRT(TGR WRT)のサードドライバーとして、チーム3台目の『トヨタGRヤリス・ラリー1』をセバスチャン・オジエとシェアすることになった。つまり、2022年のエサペッカ・ラッピの役割を担うのだ。
今季2022年、勝田はWRC世界ラリー選手権の全13戦にTGR WRTネクストジェネレーションから出場。“マニュファクチャラーチーム”としてマニュファクチャラー選手権にエントリーした結果、ドライバーひとりだけで選手権ポイントを138ポイント稼いだ。
■オジエと勝田が3台目をシェアしたものとして獲得ポイントを計算すると……
第11戦ニュージーランド以外は全戦で完走してポイントを獲得し、13戦中10戦で総合6位以上、第6戦サファリ(ケニア)と最終戦ラリージャパンでは総合3位で表彰台に立った。完走した12戦の平均総合順位は5.25位で、ドライバー選手権は5位と、非常に安定感の高いシーズンだったといえる。
では、もし2022年シーズンの計7戦に出場したラッピの代わりに、勝田がワークスノミネートを受けていたとしたら、マニュファクチャラー選手権の獲得ポイントはどのようになっていただろうか?
マニュファクチャラーは1戦につき最大3台をノミネートすることができ、そのうち上位2台がマニュファクチャラーズポイントの獲得対象となる。また、最大5ポイントを得られるパワーステージでもボーナスポイントを獲得することが可能だ。
2022年シーズンの全13戦を戦ったTGR WRTは、合計525ポイントで2年連続となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得したが、ラッピが出場せず勝田がワークスノミネートされていたとしたら、合計獲得ポイントは531ポイントと、6ポイント増えていた計算になるのだ。
■サードドライバーとなるに相応しい結果を残した
次に、もし勝田が全13戦でワークスノミネートを受け、オジエもラッピも出場していなかったとしたら、どうなっていたのだろうか? この場合の合計ポイントは496ポイントとなり、実際の獲得ポイントと比較して29ポイント目減りしていた計算となる。
オジエは開幕戦モンテカルロや優勝したスペインなど計6戦に出場し優勝1回、総合2位が2回、総合4位が2回。デイリタイアによりノーポイントの総合51位に終わったポルトガルを除く計5戦の平均順位は2.6位と、流石といえる強さだった。
勝田がTGR WRTネクストジェネレーションで“マニュファクチャラーチーム”として出場していなかった場合は、ヒョンデ(455ポイント)やMスポーツ・フォード(257ポイント)の獲得ポイントは増加し、ランキング2位となったヒョンデは491ポイントを獲得していた計算になる。つまり、TGR WRTの仮想獲得ポイントとの差はわずか5ポイント。シーズン前半、ヒョンデのマシンの信頼性がもう少し高かったら、違うストーリーになっていた可能性もある。
それでも、勝田は2022年シーズンをとおして、ワークスチームのサードドライバーに相応しい役割をきちんと果たしていた。だからこそTGR WRTは2023年シーズンに向けて、勝田を全戦ではないにしてもワークスに昇格させることを決めたのだろう。ワークスノミネートを受けるとなれば精神的な重圧はかなり増えるに違いないが、2022年の結果と内容を見る限り、2023年の勝田の活躍が非常に楽しみである。
■WRC世界ラリー選手権のポイントシステム
順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
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選手権ポイント | 25 | 18 | 15 | 12 | 10 | 8 | 6 | 4 | 2 | 1 |
PSボーナスポイント | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
※PS=パワーステージ