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 乗り物が動く速さを知る目安のひとつに「平均速度」がある。バスの場合、平均するとどれくらいのスピードで走っているのだろうか。

文・写真:中山修一

ものすごく“遅く”見える?

路線バスなら通常40〜50km/hくらいまで出すが…
路線バスなら通常40〜50km/hくらいまで出すが…

 平均速度は「距離÷かかった時間」で求められる。例えば東海道新幹線の東京〜新大阪間は実距離515.4km、区間最高速度285km/hとなっている。

 新幹線を平均速度で見ると、便によって所要時間に開きがあるため共通ではないが、「のぞみ」の場合210.3km/h、「こだま」では132.2km/hになる。

 首都圏を代表する山手線は最高速度90km/hで、一周の距離(実キロと営業キロはほぼ同じ)が34.5kmある。一周するのに大体66分かかり、その値から計算した平均速度は31.4km/hほどに収まる。

 趣味で楽しむ「乗り物の速さ」は最高速度を基準にすることが多く、平均値だとかなり遅く見えるのは確かだ。

50km/h出しても平均だと「11km/h」?

 路線ごとに条件が違いすぎるため比較はできないのだが、始点から終点まで通しでバスを利用した際の平均速度を何パターンか見てみよう。

 まずは東京都内の一般路線バス各線の例だ。それなりに本数が多い「都07系統」錦糸町駅前発・門前仲町行きでは、7kmの距離を25〜33分(時間帯によって差がある)で結んでいる。

 上記を踏まえると、都07系統門前仲町行きの平均速度は16.8〜12.7km/h、ということになる。

 続いて、都営バス最長距離を走る「梅70系統」はどうだろう。青梅車庫〜花小金井北口間30kmを、1時間34〜36分程度で結んでおり、平均速度19.1〜18.8km/hで進んでいる結果になった。

 渋谷駅〜中野駅間8.8kmの区間を走行する、京王バス「渋64系統」の所要時間は40〜48分で、けっこう平均速度が低く13.2〜11km/hである。

都会の一般路線バスはどのエリアでも平均速度が低め
都会の一般路線バスはどのエリアでも平均速度が低め

 瞬間速度では40km/hないし50km/h出ている区間も含まれるだろうが、平均すると3路線とも10km/h台であるとわかった。自転車より多少速いくらいのイメージだろうか。

 上記のデータは時刻通りに運行した際の平均速度で、渋滞等で遅延が発生すると、さらに数値は低くなっていく。

 ただでさえ思うように進めない都内の道路状況を考えれば、バスのダイヤ的にどうしてもこれくらいの平均速度になってしまうのだろう。

ローカル路線バスは速いのか

 都会の路線バスが平均10km台だとすると、交通の流れがすこぶる良好なエリアを走行するローカル路線バスの平均速度はもっと高いのだろうか。

 国内最長距離を誇る一般路線バスである、おなじみ奈良交通の特急301系統 大和八木駅〜新宮駅を例に挙げると、169.8kmの全区間を6時間32〜46分で走破している。

 平均速度で表すと、特急301系統は26〜25.1km/hで進んでいることになる。都内のバスよりキビキビ走るイメージだ。

 次に沖縄県の西表島交通 豊原〜白浜間52.9kmの場合、所要時間1時間40分で平均速度31.7km/h。なんと山手線並みになった。

 北海道の木古内駅前〜松前出張所58.3kmを1時間36〜40分で結ぶ、函館バス「510系統」の平均速度は36.4〜34.9km/hにまで上がる。

函館バス510系統の大型路線車
函館バス510系統の大型路線車

 全国的に一般路線バス車両の基本性能に大差はないので、道路上をコンスタントに走る路線なほど“速い”わけだ。

高速道路で数値を爆上げ

 高速道路をメインルートに据える空港連絡バスや都市間高速バスとなれば、当然ながら一般路線バスよりも平均値が高いと予想される。

 島根県の益田駅前〜広島県の広島駅新幹線口間のアクセスを担う高速バス、石見交通広益線「清流ライン高津川号」に注目すると、154kmの距離を3時間10分で走るということで、平均速度は48.6km/hになる。

石見交通広益線の大型高速車
石見交通広益線の大型高速車

 羽田空港への主要アクセス手段である京浜急行バスの空港線(横浜YCAT〜羽田空港第3ターミナル)では、距離29.9kmに対して所要時間39分の平均46km/hだ。

 東京駅八重洲南口から新東名を経由して名古屋駅新幹線口に向かう、JR東海バス「新東名スーパーライナー」はどうだろうか。

 公表されている実距離が353km。これも便によって所要時間が異なるものの、中でも速達タイプの5時間9分の便で計算すると、平均速度68.5km/hになった。

 新宿〜小田原間82.5kmの区間を走る小田急の特急ロマンスカーで、停車駅が多いタイプの列車が平均速度61.1km/hなので、(あくまで感覚的にだが)電車特急と変わらないほど速いバスも存在する、というわけだ。

 石見交通広益線と羽田空港バスの平均速度が低めなのは、まず前者の行程154kmのうち60kmほどが一般道路であるのと、後者は羽田空港内での移動に時間を使う関係で、平均値が低めになっている。

 ちなみに羽田空港バスの横浜YCAT〜羽田空港第1ターミナルまでなら平均速度は66km/hだ。

 最高速度が「尖ったデータ」だとすれば、平均速度は「平たいデータ」。時には趣向を変えてフラットな目線でバスを愛でるのも悪くない。

投稿 徐行レベル!! バスの平均速度が衝撃の遅さだった自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。