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新発売のムック「トヨタ・スポーツ」は、トヨタのスポーツカーやモータースポーツの魅力を1冊に凝縮した完全保存版だ。ここでは、そのコンテンツから「コペンGRスポーツ」と「アバルト124スパイダー」の試乗レポートをチラ見してみよう。

【写真7枚】対決!コペンGR、アバルト124のディテールをチェック

クルマ選びをする時には、似かよったモデル同士を比べることが多いが、スポーツカー選びは個性を重要視したい。国産のオープンスポーツカーは決して選択肢が多くないが、視野をめいっぱい広くとると、意外な2台が浮かび上がる。

最初は誰かの気軽なひと言だった。「コペンのGR出たよね。面白そう。ちょっと乗ってみたい」。ありがたいことに、ロータスやポルシェの最新モデルには必然的に触れることができるが、国産車の多くは狙って企画を練らないと触れられないものも多い。もちろんコペンGRスポーツは、その中の1台だ。

じゃあ対決する相手を何にするか?(注:掲載時は対決企画の1本として登場)同じ国産車であり、今や世界のオープンカーの基準でもあるマツダ・ロードスター。中でもコペンと同じくリトラクタブルハードトップを持つロードスターRFがいいような気もしたのだが、結局は優等生同士という感じがして結論が読めてしまった。それならばマツダ・ロードスターと同じプラットフォームを持つアバルト124スパイダーのほうが興味深いのでは?ダイハツが開発しトヨタGRが味付けしたコペンと、マツダが開発しアバルトの心臓が移植されたスパイダー。数奇な生まれを持った国産オープンスポーツカー2台という組み合わせである。

人の手が掛かったスポーツカー「コペンGRスポーツ」

マツダ・ロードスターやアバルト124スパイダーはこれまでも度々試乗している。だが初代コペンや、コペンGRスポーツのベースとなった2代目モデルには乗ったことがないので、トヨタGRが手掛けたコペンがどれほど練り込まれているのかという伸びシロは申し訳ないが不明だ。とはいえレカロ製のシートに腰を下ろし、モモ製のステアリングを握って走り出してみると、非常に大人びたモデルであることがすぐにわかった。ステアリングフィールがしっとりとして奥深く、軽自動車よりも大きなクルマを連想させる。

ステアリングを通して感じるBBS製ホイールを含むバネ下も敏感で軽い印象。ダンパーとスプリングは”ギリギリしなやか”と言える程度に引き締められているが、それを受けるボディ側はさらにガシッと硬められている。

パワートレーンと駆動方式は3気筒エンジン横置きのFFだが、フロント偏重な感じもしない。すごいな、これは確かに、人の手が掛かったスポーツカーだと思った。

660ccのターボエンジンのフィーリングは混沌としたものだった。出だしは鋭いが、3000r.p.m.以上の領域ではパワーが立ち上がるというよりもトルクが飽和状態になっている感じで、エンジンの吹けとか、ヌケの良さと言ったものを一切感じさせず、でも結果的にけっこうな俊足を披露する。これは最高出力を64psに規制している軽自動車規格の功罪なのだろうが、最高出力に達する6400r.p.m.までの間、思いっきりフラットなパワーとトルクが放出されていることが容易にわかる。

ゆったりと走らせれば、今どきのTNGAシャシーを与えられたトヨタ車のように上質で、山道でリズムよく走らせれば”これ以上何が必要なの?”と思えるくらい、コペンGRスポーツは優秀だった。コペンGRスポーツは車体下の前と中間、そして後ろにブレースを追加し、ボディ剛性を確保しているというが、その効果がはっきり出ているのだろう。

アバルト124スパイダーは、今どき珍しいドッカンターボ

ところが首都高速横羽線の50km/h程度の流れに乗ってみると、コペンの様子が一変した。道路の継ぎ目を越えるときのゴツンゴツンと縦揺れがダイレクトに車体に伝わってきて、ペースをさらに落として走らなくてはならなかったのだ。軽自動車規格を考えれば致し方ないと言うべきかもしれないが、少なくともコペンGRスポーツの性能は、全方位的に優れているというわけではなさそうだ。

走りの個性を尊重するがゆえに犠牲が発生するという走りの性格は、そのままアバルト124スパイダーにも当てはまる。アバルト謹製の1.4リッターターボエンジンの最高出力は170ps。そしてこのエンジンのパワー特性は今どき珍しいくらいのドッカンターボなのである。だから124スパイダーを速く走らせようと思ったら、コーナーの曲率や路面のミューを考えるより先に、ターボの特性を読み解くことが重要になる。最初は”なんじゃコリャ”と思うのだが、アバルトが仕掛けたゲームのルールがわかると俄然面白くなる。ふたクセはあるドライバビリティを掌握するのは簡単ではなく、結果としてイタリア人とのハーフ娘に恋い焦がれてしまうわけだ。

国産オープンスポーツと言うだけでなく、スイートスポットが広くない者同という共通点もあった今回の2台。掛け値なしに楽しい!と思ったのはアバルトの方であり、ゆっくりと走らせている時にすこぶる快適なのもアバルトの方ではあった。

ということで個人的な結論としてはアバルト優勢。でも商売としてはどうか? コペンGRスポーツはベースモデルより約50万円高のお値段238万2200円〜。安くはないが、よくできたスポーツカーとしてはお手頃価格と言える。一方のアバルト124スパイダーは6速M/Tの新車価格が406万円〜(注:既に生産終了)となる。人の手が掛かった良いものはそれなりにお高いのだ。続きは本誌「トヨタスポーツ」 https://amzn.asia/d/8O0cCvNにて。

 

text:Takuo YOSHIDA(吉田拓生)photo:Satoshi KAMIMURA(神村 聖)

取材協力:トヨタ自動車 ステランティス・ジャパン

 

スクランブル・アーカイブ トヨタ・スポーツ

【CONTENTS/掲載全内容】
●Prologue
巻頭言:トヨタとはスポーツカーの名プロデューサーである
年表:スポーツブランド”GR”に至るまでの系譜
表紙のクルマ:セリカGT-FOUR1995年サファリ・ラリー・バージョン
●New Cars
GRカローラ:”モリゾウ”の名を冠した究極のカローラが登場
GR86:ハチロクの聖地で考える”86とは”
GRスープラ:近くに見えて遠い境地
GRヤリス:3車3様に見るヤリスの多様性
コペンGRスポーツ:似た境遇を持つ”国産”オープンスポーツ
カタログ:新車で買えるGRのスポーツカーたち
●Heritage Cars
コラム:トヨタ・ツインカムの時代
2000GT:日本の誇りを世界に示す時
オーナーヒストリー:目黒通りの2000GT
スポーツ800:軽さがもたらすスポーツ性とは
1600GT:トヨタ・ツインカム第二章
セリカLB:ファストバッククーペの逆襲
スプリンター・トレノ:トヨタ・ツインカム帝国拡大へ
セリカXX:儀式や注釈なしに楽しめる国産スポーツ
イラスト:ヤングタイマーなトヨタのスポーツモデルたち
コラム:ソアラがなければLFAもなかった
●Motor Sports
WEC:世界耐久選手権を次世代へ繋いだ孤高の挑戦者
WRC:母国開催ラリーのポディウムを目指して
ヒストリー:モータースポーツの系譜
●Life with Toyota Sports
フォトグラファー神村さんのMR2人生
9台を所有してきた渡辺さんのヨタハチ人生
KP61スターレットでパリダカに挑んだ日本人たちの記録
モデルカーで辿るトヨタGTマシンの変遷
あなたのトヨタ・スポーツ愛、語ってください!
●And More
編集後記/スタッフリスト/読者プレゼント
自動車画家Bowさんの表紙画の世界
スクランブル・アーカイブ・シリーズのお知らせ

タイトル:スクランブル・アーカイブ トヨタ・スポーツ
定価:1,980円(本体1,800円/税10%
本誌購入は以下より
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