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タイヤ用艶出しワックスってなぜ水性が良いの?油性は本当にダメ?

 洗車のあと、クルマ好きの人が最後の仕上げとして行うのが、タイヤワックスでしょう。タイヤワックスには、水性と油性がありますが、油性は鮮やかな光沢と艶が魅力的な一方で、タイヤの劣化が進みやすいとされ、一般的には水性のほうが、よく使用されているようです。

 水性ワックスと油性ワックスの違いや、油性ワックスによる劣化のメカニズム、最近の動向についてご紹介します。

文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:Adobe Stock_ George Dolgikh
写真:写真AC

タイヤの光沢や艶を引き立たせるタイヤワックス

 洗車した際、最後にタイヤにワックスがけをすると、タイヤの黒さが光沢や艶で強調されて、クルマの魅力がさらに引き立ちます。タイヤワックスは、シリコンをタイヤ表面にコーティングすることで、新品のように、あるいは新品以上に光沢や艶を出すために開発されたタイヤゴム専用のワックスです。

 ワックスとは、一般には常温で固体、加熱すると液体になる有機物で、日本語では蝋といわれ、クルマ以外にも床磨きやクレヨン、整髪料など、艶出しや撥水に効果的な材料として重宝されていますね。ボディ用のワックスは、主として天然の蝋を石油系の溶剤で柔らかくしたもので、ボディ表面をコーティングします。

 一方でタイヤのワックスは、シリコンを水で溶かした「水性ワックス」と石油系溶剤で溶かした「油性ワックス」の2種があります。シリコンは、ケイ素を原料とする機能性材料で、ゴムや樹脂、オイルなどに加工され、光沢を放ちつつ耐熱性や撥水性など多くの優れた特性を持ちます。

タイヤワックスは、シリコンをタイヤ表面にコーティングして、光沢や艶を出すために開発されたタイヤゴム専用のワックスで、水性と油性の2種がある(PHOTO:写真AC_チャコ)

水性と油性の違いは、シリコンを溶かしている溶剤の違い

 タイヤワックスにおける、水性と油性の違いは、コーティング剤のシリコンを何で溶かしているかであり、その名の通り、水性は水で溶かし、油性は石油系溶剤で溶かしています。この溶剤の違いが、2つのワックスの性質の違いです。

・水性のタイヤワックス
 水性ワックスは、油性ほど鮮やかな艶は出ませんが、自然な深みのある艶が特徴で、シリコンコートがタイヤの表面を保護して、汚れや劣化を防止する効果が期待できます。ただし、比較的高価で水性ゆえに雨などでワックスが流れ落ちて、長持ちしないことがデメリットです。

・油性のタイヤワックス
 油性ワックスは、比較的安価ながら水性に比べてより鮮やかな艶が出せ、水はけが良いため雨などに強く長持ちします。ただし、石油系溶剤を使っているため、頻繁に使用するとタイヤの劣化を促進して、タイヤのひび割れなどを起こすリスクがあります。

 水性ワックスは、自然な艶を放ち、ワックスは落ちやすいですがタイヤへの攻撃性はなく、油性ワックスは、鮮やかな艶が出せて見栄えは派手ですがタイヤ自体を攻撃して劣化させるリスクがある、というのが両者の端的な違いです。

タイヤワックスにおける、水性と油性の違いは、シリコンを溶かしている溶剤の違い(PHOTO:Adobe Stock_George Dolgikh)

油性ワックスの劣化促進は、石油系溶剤に起因

 油性のワックスがタイヤを劣化させる要因は、前述のとおりシリコンを溶かしている石油系溶剤が大きく影響しています。

 タイヤは、クルマの足元を支える重要な部品。高い強度と衝撃を吸収する柔軟性が求められるため、主原料である天然ゴムと合成ゴムのほか、用途や目的に応じて様々な補強材や配合剤が調合されています。

 なかでもゴムの劣化防止のために配合されている劣化防止剤や亀裂防止剤は、ワックスのような成分を含み、タイヤのサイドウォールから表面に滲み出て、柔軟性を維持して劣化を抑えるという重要な働きを担っていますが、油性ワックスで使われている石油系溶剤は、この劣化防止剤や亀裂防止剤と混ざると溶けだしてしまうため、頻繁に油性ワックスを使い続けることで、柔軟性が損なわれてゴムの劣化が加速、ひび割れなどを引き起こしてしまうのです。

 ブリヂストンやヨコハマタイヤのホームページでも、油性のタイヤワックスを使用する際には、ゴムの変質や劣化に影響を与えるので注意が必要、と記載されています。メーカーとしては、タイヤの本来の性能や耐久信頼性を損なうようなものは、使わないでほしいでしょう。早めにタイヤにひび割れが発生して、タイヤのせいにされては、困りますからね。

油性ワックスで使われている石油系溶剤が、タイヤ内部の劣化防止剤や亀裂防止剤と混ざることで溶けだしてしまうため、劣化が進んでしまう(PHOTO:Adobe Stock_ Norikko)

水性と油性の弱点を軽減する中性タイプも登場

 以上のような油性ワックスによる劣化のリスクを考えて、タイヤ用ワックスは水性ワックスを使う人が多いようですが、水性ワックスでは物足りない、鮮やかな艶感を求める人も少なくはありません。そこで登場しているのが、油性ワックスのような艶感を持ちながら、タイヤの劣化のリスクを減らしたワックス。例えば、タイヤアタックのない水性ワックスでシリコン含有量を増やして、コーティングを厚くして油性のような鮮やかな艶を出したものが、(高価ですが)商品化されています。

 また、シリコンオイルを使った艶だし剤を利用して、中性タイプと呼ばれるタイヤワックスも登場しています。鮮やかな艶感を実現しながら、石油系溶剤を使ってないので油性でなく、また水も使ってないので水性でもない、新しいタイプです。

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 キラキラした光沢が苦手で、自然な仕上がりを好む人であれば、劣化の心配のない水性ワックスを選ぶのが安心です。どうしても、艶のある光沢が欲しいなら、ワックスの成分をしっかり確認して、その特性を把握したうえで使用するようにしてください。

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