新型プリウスはもはや単なるエコカーではない。新世代のスポーツクーペなのだと考えたほうが納得がいく。ベストカーがその根拠とする5 つの「状況証拠」をお目にかけよう。
文/ベストカーWeb編集部、写真/ベストカーWeb編集部、トヨタ
■スポーツカーに近いシートポジション
いよいよ発売が秒読みとなったトヨタの新型プリウス。ディーラーで購入について相談している人も少なくないと聞く。
ベストカーのこれまでの取材で明らかになってきたのは、新型プリウスは「エコカーの再発明」であるということだ。燃費性能を優先するためにドライバビリティを犠牲にするのではなく、運転することの楽しさに主眼を置きつつ、それでいて圧倒的な低燃費を実現する。一介のセダンというより、スポーティな4ドアクーペというべき存在なのである。
そう考える理由をいかに説明したい。
【その1】シートポジション
ベストカーの編集部員がシートに座った写真を見てみると、新型プリウスのシートポジションが極めてスポーツカー的であることが分かる。大きく寝たフロントガラスに合わせてシートバックの角度も倒し気味で、座面だけでなく上半身も含めてシートがホールドしている。そこから自然に腕を伸ばした先にステアリングがあり、左手の手首を返せば、真下にシフトレバーが存在するのだ。
このドライバーオリエンテッドな着座姿勢は、新型プリウスのキャラクターをなによりも雄弁に物語っている。「走りを楽しんでくださいよ」と言わんばかりのポジションなのだ。
【その2】ペダルレイアウト
あちこちで話題になっているのが、新型プリウスのアクセルペダル。多くのクルマが上からぶら下げる構造なのに対し、新型プリウスは床面を支点とするオルガン式を採用しているのだ。
オルガン式はポルシェやBMW、トヨタではクラウンやスープラなどが採用しているが、運転姿勢にこだわるマツダが全車に採用していることでも知られる。足首の動きとペダルの踏み込み軸がシンクロするので繊細なアクセル操作に向くが、右足をきちんとペダルに載せないと踏力が重くなるため、ドライバーがおのずと正しいドライビングポジションを取るというメリットが大きいと筆者は考える。これも新型プリウスが走りを重視している証拠だろう。
■動画からも走りのレベルが高いことはあきらか
【その3】メーターレイアウト
これまでのプリウスは伝統的に、ダッシュボード中央付近に計器類を配置するセンターメーターを採用してきた。しかし運転時の視線の移動量を考えると、少なくとも走行に関する情報はドライバー前部にレイアウトしたほうがよい。そこで新型プリウスはセンターメーターを廃止し、電気自動車bZ4Xと同様のトップマウントメーターを採用してきた。これも運転を主体とする思想の表れだ。
トップマウントメーターはステアリング奥にメーターを配置し、ステアリング上側から情報を読み取るレイアウト。あえてメーターを奥に置き、前方からメーターへ目を移した時のピントが合いやすくしている。「メーターが小さい」という声もあるようだが、7インチ液晶を採用しているため実際の場面で不都合を感じることはないだろう。
【その4】0-100km/h加速
新型プリウスはPHEVモデルの0-100km/h加速が6.7秒とアナウンスされている。通常のハイブリッドモデルですら、2リッターモデルは7.5秒といわれており、トヨタ86並みの動力性能なのだ。先代プリウスが約10秒とも言われていたから、驚異的な進化である。
ここにはプリウスの「立場」が影響しているのかもしれない。たとえば電動化が進む欧州市場。ここに新型プリウスはプラグインハイブリッドモデルのみを投入するのだが、どうであれ、なみいる電動車たちとの性能競争にさらされることは間違いない。とくにBEVは0-100km/h加速が大得意だから、立ち向かうプリウスもライバルに一泡吹かせるパフォーマンスを求められたのだ。「ハイブリッドだから遅い」はもはや通じない時代に突入したといえよう。
【その5】公式映像の走り
最後にお伝えしたいのが、トヨタが公開した新型プリウスの走行映像だ。全編を通じて俊敏さがあり、従来のプリウスとは一線を画す姿が見て取れる。
上りから下りに転じる丘越えのような区間では、サスペンションが路面から離れず、車体がビシッと安定してタイヤに追従する。中盤のコーナリングシーンではロール量が適度に抑えられており、イン側のタイヤもしっかり接地していることが分かる。こういったシーンからも、新型プリウスがスポーツサルーンとして走りを鍛えてきたことは間違いない。
いかがだったろうか。今度のプリウスがハイブリッド車の立ち位置を変えることは間違いなさそうだ。もうすぐ高速道路やワインディングで、プリウスの思わぬ走りを見ることになるかもしれない。
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