国土交通省は2023年1月4日から車検証の電子化をスタートした。この対応に伴い、費用が必要なことから道路運送車両法関係の手数料を引き上げている。この車検証のデジタル化によってユーザーにはどのようなメリットがあるのか、検証してみた。
本文/国沢光宏、写真/国沢光宏、国交省
■車検証のデジタル化がもたらすものとは?
2022年3月に契約したノアがやっと納車されました! ディーラーで引き渡しの説明を受けた後に渡された車検証を見て「これですね!」。
2023年1月4日から、いわゆる『電子車検証』となっている。驚くことに車検証のサイズ、写真のようにちっさい! ハガキよりひと回り小さく、スマートフォンよりひと回り大きい程度。これなら「車検証入れ」も小さくなります。
考えてみたらグローブボックスのルーツは運転時に使う手袋の収納場所。やがて車検証や取扱説明書を入れておく場所になった。したがって「車検証のふたつ折」が基準になっている。
電子車検証は従来の車検証の4分の1サイズ。遠からず取扱説明書だって2次元バーコードを使ってスマホで見るようになると思う。自賠責保険や整備手帳だって電子化されていくと思う。
■電子車検証になった理由は?
閑話休題。では、なんで電子車検証なんだろう?ちなみに「小さくなる」は今のところまったく当てはまらない。なぜか?
確かに電子車検証についちゃ4分の1サイズになったのだけれど、それ以外に『自動車検査証記載事項』と書かれた、従来の車検証とまったく同じサイズの「紙」を同時に持っていないとダメだからです(写真参照のこと)。このあたりがアナログでお粗末だったりして。
なぜ電子車検証のほかに自動車検査証記載事項が必要かといえば、電子車検証に車検の有効期限や個人情報が記載されていないためだ。今までの車検証を見ると、所有者や使用者の住所や氏名、使用の本拠の位置などが記載されていた。
電子車検証だけだと誰のクルマなのかわからない。事故や盗難事案などの捜査で車検証を見ても、持ち主がわからないです。自賠責保険証と合わせればわかりますけどね。
ここまで読んでも「なんで電子車検証なんだろう?」という疑問に対する答えはわからないと思う。実際、自動車ユーザーが享受できるメリットを探してみたけれど、これといったおいしい内容などない。
車検時も名義変更時も自分で手続きするなら陸運事務局に行かなくちゃならない。サイズが小さくなったことくらいで、それだって前述のとおり今までと同じサイズの自動車検査証記載事項を持ってないとダメですから。
■メリットは……なし! でも従来から100円上乗せの発行料金
また、スマートフォン+専用アプリケーションがないと、車検の有効期限がわからない。だからこそ「今後最短で3年間は所持を義務付けられる」自動車検査証記載事項も併用される。
もし3年後以降も自動車検査証記載事項の所持が必要になったら、今までの車検証とまったく変わらないということになる。だとしたらオタンコなことだと腹を抱えて笑うしかありません。
このあたりは役所も問題意識あるらしく、専用アプリケーションを入れておけば車検満了日の前に通知してくれることになっているけれど、ふつうの人は面倒なことなどしない。
こういったメリットのない不完全なシステムなのに、電子車検証の発行料金として100円上乗せされる。100円くらい気にならないけれど、その金額で新たな天下り団体を作ることを考えたら腹立たしい。
今後の発展性はないのだろうか? 名義変更などがオンラインでできるようになるかと言えば、無理! ナンバープレートを変更しなければならないですから。ナンバープレートを液晶表示などに変更し、名義が変わっても対応できるような時代になれば可能だろうけれど、そう簡単じゃないと思う。名義変更や継続車検など、今までと同じ手続きが必要になるハズ。
■車両整備記録を残す電子カルテ機能を追加してほしい!
個人的に期待したいのは「電子カルテ」のような車両コンディションの記録を残しておく機能の追加だ。名義変わったりした時点で整備記録を失ってしまう(個人情報が入っているため記録簿は処分されることも多くなった)。
電子車検証にオイル交換や交換した部品などの記録を残してあれば中古車を買う時にチェックすることで、そのクルマのさまざまな経歴がわかるようになります。
参考までに書いておくと、新規登録だけでなく車検継続や名義変更などにより新しい車検証が発行されたら電子車検証に切り替わる(250cc以上の2輪も含む。250cc未満の2輪は電子車検証の対象外)。軽自動車は2024年1月からの対応で、最低3年間の自動車検査証記載事項を同時に所持することが義務づけられる。
以上、何のメリットもない電子車検証が始まったというニュースでした。
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投稿 果たしてメリットはあんのかい!? 2023年1月から「車検証の電子化」スタートで何がどう変わる? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。