新車登録や車検時に払う自動車重量税を優遇する「エコカー減税」について、政府が2023年4月末までの期限を3年間延長し、現行の適用基準を2024年から段階的に引き上げていく方針を固めた。ガソリン車やハイブリッド車の優遇を絞り、EVに移行させるのが狙いだが、この先新車を買うタイミングはいつが正解か、渡辺陽一郎氏が分析する。
本文/渡辺陽一郎、写真/国交省、ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部
■そもそもエコカー減税、グリーン化特例とは何か?
クルマのユーザーは、多額の税金を負担させられている。燃料価格に含めて徴収される税金を除いても、購入時に納める環境性能割、毎年支払う自動車税と軽自動車税(自動車税は3月登録以外、購入時に月割りでも納める)、購入時と車検を受ける時に支払う自動車重量税がある。
これらのうち、自動車重量税と環境性能割の前身だった「自動車取得税」は、道路の建設や維持に使う道路特定財源として徴収を開始した。いわゆる目的税だったが、道路特定財源制度は2009年に廃止されている。
従って今の自動車重量税と環境性能割は一般財源であり、普通の税金として使われている。クルマの所有者はほかの人に比べて、多額の税金を不当に徴収されているわけだ。
この矛盾を抱えたうえで、エコカー減税やグリーン化特例といった名称により、以前から環境性能に応じて税金を軽減する制度が実施されてきた。その理由は「環境性能の優れたクルマの普及促進」と説明されている。税金に格差を付けて、環境性能の優れた車種を購入しやすくするのが狙いだ。
減税制度とセットにして、初度登録(軽自動車は届け出)から13年を超えた車両については、自動車税や自動車重量税を増税する制度も実施されている。古いクルマを使う人たちには、年金に頼って生活する高齢者、コロナ禍によって所得が下がった飲食店などの関係者、納期が遅いために新車に乗り替えられないユーザーも多く含まれるが、これらの人たちから多額の税金を徴収している。それにより税収のバランスを取り、減税を行っているわけだ。
■エコカー減税は2023年4月いっぱいで終了予定だったが……
当初の予定では、自動車重量税のエコカー減税は2023年4月30日、自動車税/軽自動車税のグリーン化特例は2023年3月31日、環境性能割の現行税額も2023年3月31日までが期限とされていた。
この内容が2023年12月31日まで据え置かれることになった。今は納期が遅れており、納車を待つ間に減税基準が変わって納める税額も増えると、ユーザーを困惑させるからだ。
問題はその後だ。自動車税/軽自動車税のグリーン化特例は、2026年3月31日まで現行基準を維持するが、自動車重量税と環境性能割は2024年1月1日に刷新される。
さらに自動車重量税は2025年5月1日、環境性能割は2025年4月1日にも変更され、順次、基準値を厳しい方向へ引き上げていく。2025年に引き上げた基準の期限は、自動車重量税が2026年4月30日、環境性能割は2026年3月31日とされているから、毎年春になると基準値が厳しく変更される。
■徐々に厳格化していく燃費基準
自動車重量税の購入時の減税率を見ると、免税(100%の減税)を受けるには、2025年4月30日までは2030年度燃費基準を90%達成すればいい。それが2025年5月1日以降は、2030年度燃費基準を100%達成しないと免税を受けられなくなる。
また、自動車重量税で50%の減税を受けるには、2023年12月31日までは2030年度燃費基準を75%達成すればいい。その基準が2024年1月1日以降は80%に引き上げられ、2025年5月1日以降は90%になる。
つまり、2030年度燃費基準達成率が90%の車種は、2025年4月30日までに登録すれば免税だが、5月1日にズレ込むと50%の減税に格下げされてしまう。そこで2030年度燃費基準達成率が100%の車種を選ぶと、免税を維持できる。従って自動車重量税の免税を狙うなら、2025年4月30日までに登録する必要がある。
同様に自動車重量税の25%減税も、2023年12月31日までなら2030年度燃費基準達成率が60%でいいが、その後は順次70%、80%と高まっていく。
■環境性能割はどう推移していく?
一方、購入時に納める環境性能割の税率は、非課税(税率は0%)と取得価額の1~3%だ。例えばカローラクロスにノーマルのガソリンエンジンを搭載したZ・2WDであれば、消費税込みの車両価格は264万円で、税抜き価格は240万円になる。
これをベースに値引き相当額の10%を差し引いた216万円が取得価額として算出され、カローラクロスZ・2WDではこの3%が環境性能割の税率だから、216万円×0.03の6万4800円が今の環境性能割の税額だ。
小型/普通乗用車の場合、環境性能割を非課税とするには、2025年3月31日までは2030年度燃費基準を85%達成すればいい。それが2025年4月1日になると、95%を達成する必要が生じる。85%では取得価額の1%を負担せねばならない。
そして環境性能割を1%負担する2030年度燃費基準の達成率は、2023年12月31日までは75%だが、2024年1月1日以降は80%に高まり、2025年4月1日以降は前述の85%になる。
■ハイブリッド車でもすべては免税にならないことに注意
このように自動車重量税や環境性能割が徴収されない免税や非課税とするには、2025年3月/4月末日が期限で、それ以下の減税は2024年1月1日以降、順次基準値が厳しくなっていく。
注意したいのは、ハイブリッドでもすべてが免税にならないことだ。例えばフリードハイブリッドクロスター2WDの場合、2023年12月31日までの現行基準でも、環境性能割は非課税だが自動車重量税では1万円少々の負担が生じる。
その理由はフリードハイブリッド2WDの2030年度燃費基準達成率が、85%に留まるからだ。自動車重量税の免税は今でも90%を必要とするため、減税率が50%になった。2025年5月1日以降は、減税率が25%に下がり、税額はさらに増える。
環境性能割は、2030年度燃費基準達成率が85%なら、2025年3月31日までは非課税を保つ。それが2025年4月1日以降は、取得価額の1%を負担せねばならない。
■現行基準の2023年12月までの新車登録がおススメだ
以上の点を踏まえると、支払う税額を抑えたいなら、基本的には現行基準が続く2023年12月31日までに登録したい。それが無理な場合でも、環境性能割の基準がさらに引き上げられる直前の2025年3月31日までに登録するのが得策だ。
今はクルマの納期が1年に達する車種も珍しくないから、購入したいなら2023年の1月中には契約しておきたい。2022年には売れ筋カテゴリーとされるミニバンのノア/ヴォクシー、ステップワゴン、セレナのほかエクストレイルやCX-60などSUVの新型車が豊富に発売されたから、新車を選びやすい状態になっている。
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