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 2018年にJR三江線が廃止となった後に運行が始まった代替バス。江津を出発し石見川本と浜原駅前・潮温泉を経由して、道の駅グリーンロード大和までコマを進めると、ここで代替バスが「枝分かれ」する。

文・写真:中山修一

究極の選択を迫られる場所?

青い車体と「いーにゃん」が目印の飯南町生活路線バス
青い車体と「いーにゃん」が目印の飯南町生活路線バス

 前回まで利用した大和観光バスも発着する「道の駅グリーンロード大和」停留所が、三江線代替バス3回目の乗り換えポイントになる。

 ここまで来ると終点の三次が視野に入ってくるが、備北交通の作木線と、飯南町生活路線バス 谷・赤名・頓原線の2路線が道の駅から出ており、両方が三江線代替バスの枠に組み込まれている。

 どちらを選んでも最終的には三次に着けるので結果は同じ、とはいえ進む方向がかなり異なる。作木線は三次駅に直行かつ途中まで鉄道時代に近い場所を通るため、少しでも鉄道を偲びたい時は一択となる。

 ただし、平日の作木線は8:05発と14:57発の2本しかなく、今回の場合は14:57に乗ることになる。これだと3時間以上待つのに加え、最終バスのため緊急時の対応(途中下車)ができないリスクを背負う。

 後者の飯南町生活路線バスの場合、13:50発の「赤名駅」行きを利用する。前者よりも待ち時間が少し短いのと、最終便を残せるため詰む可能性が低くなる。その代わり鉄道線の跡からは遠く離れてしまう。

 「欲張るんじゃねぇ」とばかりに、どれかを一つ捨てないと完遂させてもらえないのが、三江線代替バスが見せるドライな一面かもしれない。

 訪問当日は雨だったのと物凄く寒かったせいもあり、先に来るほう・飯南町生活路線バスに優先権を与え、作木線を緊急時のバッファーに据えた。

 ちなみに生活路線バスは平日しか運行していないため、土日祝に訪問すると最初から選べない。

バスで来たからこそ拝めたスゴイ鉄道風景

 飯南町生活路線バスが来るまで2時間以上。道の駅から1.5kmほど先に、三江線の「石見都賀駅」跡があり、その付近まで町内を散策してみることにした。動いていたほうが寒さを誤魔化せるものだ。

 この区間は立体的な線路配置となっていて、町内を貫くような形で続くコンクリート製の高架橋が今も堂々たる姿を見せている。

美郷町内に残る三江線の高架橋
美郷町内に残る三江線の高架橋

 鉄道で通った際の印象があまり残っておらず「こんな凄い場所あったっけ?」が率直な感想。これはバスで来たからこそ、鉄道施設を客観的に眺める絶好のチャンスが得られたのだ、と思いたい。

 同地は石見川本〜GR大和間で利用した大和観光バスの拠点でもある。営業所近隣の車庫を軽く覗いてみると、大型貸切車4台の隣に大和観光カラーの日野ポンチョが1台停めてあった。ポンチョの川本美郷線もちょっと乗ってみたい。

どこで待てば良いのやら……

 雨足が強まり外での観光は流石に厳しく、散策も手短に道の駅へ逃げ戻る。「道の駅」の中では大変かわいらしい規模で、物産品販売コーナーとカフェ、ミニスーパーの3軒が営業している。少し離れた駐車場エリアに、休憩スペース兼トイレの建物がある。

 カフェで時間調整中にふと気づいたことがあった。道の駅グリーンロード大和停留所では、来た道を戻る江津方面の車線にだけバス停の標識が立っていて、三次方面へと続く反対車線には何も置かれていないのだ。

ひまわり型の停留所標識が2本置かれている
ひまわり型の停留所標識が2本置かれている

 バス停標識には赤名駅行きバスの時刻表も掲示されており、それならバス停標識側の車線が乗り場になるのだろうと考えて、標識の前で待つ。

 出発時刻の13:50が近づくと、道の駅の駐車場で待機していた赤名駅行き飯南町生活路線バスの青い日野ポンチョが道路に出てきた。しかし赤名駅行きの進行方向は見事に三次方面の車線だった。最も悪夢を見るパターンである。

 道路を挟んで、ちょうどバス停標識がある真向かいあたりに立っていれば停まってくれたのだろうが確証はない。バス停標識の有無だけでなかなか不安感を増大させてくれるものだ。

 結局のところ手を上げて停まってもらい、他のクルマが来ていないのを猛烈にチェックしてから道路の反対側まで移動して乗車した。どこで待つのが正解だったのやら?? 苦労が絶えない。

山を登るコミバス

 飯南町生活路線バス 谷・赤名・頓原線はコミュニティバスの一種だ。道の駅グリーンロード大和〜赤名駅までの約12kmを25分ほどで結んでいる。停留所の数は19カ所。

 「生活路線バス」の名称が物語るように、地元住民の生活の足を支えるのが主要目的の公共交通機関だ。とはいえデマンド交通を除く定期運行の路線なら誰でも利用できる。

 バスは時刻通りに道の駅を発車した。始発時点で他の利用者はいなかった。国道375号線を三次方面へ400mくらい進むとバスは左に曲がり県道55号線に入る。赤名駅までのメインルートだ。

 55号線に入るとすぐ、やや狭い道幅の曲がりくねった登り坂が続くようになる。峠越えをするのかと思いきや、途中に下り坂はほとんどなく、山岳路線の装いに近いかもしれない。

山道をポンチョが登る!!
山道をポンチョが登る!!

 実際にぐんぐん高度を稼いでいるようで、数日前から降り積もった雪の量が進むに連れて増えていき、あれよあれよと一面の銀世界に変わった。

 (当日は雪景色ながら)緑の多いエリアを走行するが、民家が途切れて無人地帯になる区間は極めて少ない。赤い瓦屋根の家々が建ち並ぶ様子は中国地方ならではの見どころだ。

 10kmほど進むと勾配を登り切り、前方の視界が開けてくる。標高にすると450m程度、出発点より360mくらい高い場所まで来たことになる。

 ほぼ平坦線になった県道55号線から数分で国道54号線に移り赤名の町へ入る。バスは時間通り14:15に終点の赤名駅バス停に到着した。

 運賃は通しで400円。最初から最後までほかに利用者はいなかった。

赤名駅止まりの便は終点に到着後すぐ回送バスに
赤名駅止まりの便は終点に到着後すぐ回送バスに

 江津からおよそ80km、三江線代替バスの旅も大詰め。次で最後のバスとなる備北交通赤名線が来るまで、飛行機に乗るんじゃあるまいし、とばかりにまた長い時間を潰す……必要はそれほどなくキレイにつながり、約15分の連絡だ。

投稿 三江線代替バスに乗ってきた!! 道の駅グリーンロード大和〜赤名駅 後半戦も油断は禁物!?自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。