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 トラックの電動化では世界をリードしていると言っても過言ではないボルボトラックスだが、この度、バッテリー電気(BEV)トラックの設定車種の拡充を発表した。

 追加されるのはリジッド系(けん引車ではない単車)の大型トラックで、2023年の3月~9月にかけて量産を開始する。量産型のBEVトラックではすでに世界で最も広範なボルボのポートフォリオが、さらに拡大する。

 欧州では建設系の特装車や地場の集配送に多いリジッドトラックだが、日本では長距離輸送などでも多く使われる。ゼロエミッションのリジッド系大型BEVトラックの導入を求める声は日本にも多くありそうだ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/Volvo Trucks


BEVトラックにリジッド系を追加

日本にも導入して欲しい!! ボルボが単車系のEVトラックをローンチして電動ラインナップを大幅拡充!
ボルボが新たに追加したリジッド系の電動トラック

 スウェーデンの商用車メーカーで、世界中でトラックの電動化を進めているボルボトラックスは2022年12月12日、新たなバッテリー電気式(BEV)トラックをローンチした。

 ボルボのBEVトラックはこれまでトラクタ(けん引車)系を中心としていたが、今回発売されたのはリジッド(単車)系で、同社の電動トラックレンジはさらに拡大した。これにより地場輸送や特装車、都市内で働くクルマなど、多くの輸送分野の電動化が可能となる。

 来年(2023年)発売予定のトラックを含めると、モーター出力やバッテリー容量、ホイールベース、PTO(ボディ=架装物へ動力を供給する装置)などリジッドトラックのオプションは豊富に用意されることになりそう。リジッド系の追加により、BEVトラックで市場をリードするボルボの地位はさらに確かなものになるだろう。

 なお、トラックで言う「リジッド」とは、単一のシャシーにより車両が構成されているトラックのことで、つまりトラクタ・トレーラのような連結車(けん引車)ではない単車トラックのこと。

 欧州や北米は長距離輸送などを中心にトレーラ化が進んでいるが、クレーン車や塵芥車、ダンプやミキサー車などの特装系車両もあり、大型リジッドトラックの需要も多い。日本では長距離の大型トラックを含めてもリジッド系が多くなっている。

 「物流の2024年問題」などを背景に運送業の人手不足が続く日本では、ドライバーに魅力的なトラックをアピールする意味もあり、ボルボやスカニアなど欧州メーカーのプレミアム・トラックの存在感が増している。

 ボルボは日本市場への展開についてはまだ言及していないが、リジッド系のBEV大型トラックを望んでいる日本のユーザーは多い。

柔軟性が求められるリジッド系

 電動のリジッドトラックにより、排気ガスを出さず、騒音も少ない輸送が様々な分野で可能になる。ボルボは世界でも最も広範囲の電動トラックラインナップを有するメーカーだが、新たに導入するリジッド系トラックで、これをさらに拡大することになった。

 追加されるのは「ボルボFH」「ボルボFM」「ボルボFMX」の、それぞれのBEVバージョンのリジッドトラックだ(ディーゼル車だと、FHとFMXが日本に導入されている)。都市内輸送や地場輸送を行なっている運送会社は、これにより電動トラックの使い勝手が大きく高まるだろう。

 様々なトレーラと連結できるけん引車とは違って、リジッドトラックはシャシーに直接ボディを架装する。このため様々な要求に応えられる柔軟性が求められる。

 バッテリー、モーター、キャブ、ホイールベース、アスクル構成など多くのオプションを用意することで、新しい大型リジッドトラックは様々な架装に対応する。いっぽうでオプションが多くなるためか、発売(量産)開始時期を3回に分けた。

 最初に販売を開始するのはモーター出力490kW(666ps)、バッテリー容量450~540kWhのトラックで、2023年の第1四半期に量産を開始する。

 欧州でリジッドトラックの用途として多いのは、商品の集配送、廃棄物(ゴミ)の収集運搬、そしてダンプやミキサーなど建設現場の特装系トラックだ。新しいトラックにより、特殊な輸送や特定の分野に特化した仕事をゼロエミッションで行なうことができるようになる。

 ボルボトラックス社長のロジャー・アルム氏は次のように述べている。

 「これらの新しい電動トラックは、より多くのお客様が輸送を電動化することを容易にします。また、都市部のほとんどすべての輸送フローを、ゼロ・エミッション車両によって実現できるようになります。

 私たちのお客様は、新しいBEVトラックに用途に合わせた架装を施し、排気ガスを出さずに、現在ご使用中のディーゼル車と全く同じ機能性を持たせることができます」。

ドライバーと都市にとって魅力的

 都市内で重量物を運ぶトラックはほとんどがディーゼル車だ。リジッド系のBEV大型トラックの投入で、もうすぐこうした分野もBEVで代替することができるようになる。

 電動のトラックは排気ガスを出さないだけでなく、ドライバーが仕事をする環境としても優れている。なぜなら、とても静かだからだ。もちろんこれは都市住民の居住環境にとっても良いことだ。

 2023年に発売する車種も含めるとバッテリー容量を180~540kWhをカバーする(搭載するバッテリー数としては2~6個の5種類と思われる)。多くのバッテリーオプションを用意することで、様々な運行に最適なトラックを構成できるようにした。

 「これらのトラックは軽量の貨物から重量物まで、あらゆる種類の輸送を行なうことになります。お客様は自社の業務に必要となる、ちょうどいいバッテリー容量を選択することができます。

 バッテリーは重量が嵩むので、必要以上に搭載することはありません。適切な容量を選択することで、その分の積載量を確保することができます。簡単に言えば、私たちはどのような仕事を行なうにしろ、それに最適な最もコスト効率に優れた電動輸送ソリューションを用意しているということです」。
(同氏)

 ボルボトラックスはトラックの電動化では世界をリードするメーカーで、中型・大型のトラックではフルレンジでBEVトラックの量産化を果たした。ボルボは2030年までに世界全体のトラックセールスの少なくとも半分を電動化することを目標としている。

スペックと発売・量産開始時期

 発売・量産開始時期やオプションなど、プレスリリースの時点で明らかになっている情報は次の通りだ(いずれも、大型フラッグシップトラック「FH」、大型汎用トラック「FM」、大型特装シャシー「FMX」のリジッド系電動車)。

2022年12月に販売開始、2023年3月に量産を開始するトラック
●モーター出力(合計) : 490 kW
●電動モーター数 : 3基
●バッテリー容量 : 450 ~ 540 kWh
●バッテリー個数 : 5 ~ 6 個
●キャブ : スリーパー、ハイ、Xハイスリーパー
●ホイールベース : 4300 ~ 6700 mm
●アクスル構成 : 4x2R, 6x2R, 6x4R, 8x2R, 8x4R
●PTO : 電動PTO(ePTO), トランスミッションPTO, 電動メカニカルPTO

2023年2月発売、同5月に量産を開始するトラック
●モーター出力(合計) : 330 kW
●電動モーター数 : 2基
●バッテリー容量 : 360 kWh
●バッテリー個数 : 4 個
●キャブ : デイキャブ
●ホイールベース : 3900 ~ 6700 mm

2023年6月発売、同9月に量産を開始するトラック
●バッテリー容量 : 180 ~ 270 kWh
●バッテリー個数 : 2 ~ 3 個

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