2018年に廃線となったJR三江線の代替バス。島根県の江津から石見川本までを結ぶ石見交通 江津川本線の様子を紹介した第2回に続き、石見川本から出発する次の代替バスを使い、さらに奥へと進んだ!!
文・写真:中山修一
長く待つのは以前と同じ?
石見交通 江津川本線で石見川本に到着したのが13:42。石見川本バス停には高速バス1路線、路線/スクールバス9路線の合わせて10路線が出入りしている。
この中で三江線代替バスに相当するのは大和観光バス 川本美郷(みさと)線の1路線のみ。他を選ぶと不正解で脱落になる。13:42に着くと、16:10発の「浜原駅前」行きに乗り継げる。
実は13:35発という川本美郷線の便が設定されており、不思議なことに江津川本線との接続を取らずに出て行ってしまう。
乗り換えの猶予を含めて出発を10〜15分程度後ろにずらしても大きな影響はなさそうに見えるが、できない事情が込められているのかもしれない。
次の便までおよそ2時間28分。鉄道時代ちょうどいい時間帯の列車で三次から江津方面へ向かうと、やはり石見川本で1時間40分ほどの待ち時間が発生したのとよく似た感覚だ。
周辺散策をして過ごそうかと思いきや、訪問当時の2022年12月下旬に中国地方を襲った異様な寒さでは外での自由が利かず、昭和感あふれる超渋い喫茶店と石見川本駅舎内の待合室で時間を潰した。
待合室で、町営バスを待つ地元のご婦人に話しかけられた。実家がある石見川本近くに数年前戻ってきたそうだ。「若い頃に比べて人が減ってしまって寂しい」とはご本人の弁。バスが来るまで世間話に花が咲いた。
乗り間違えにはこちらでも御用心!!
川本美郷線の5分前に、おおなんバスが運行する邑南(おおなん)川本線の便が出発する。江津駅と同様、ここでも乗り間違えには注意したい。
この邑南川本線でも途中の「田所道の駅」バス停で下車して、羽須美田所線に乗り換えると三江線代替バスのルートに戻れるが、時間的に翌日までバスがないため本気で詰んでしまう。
もし16:05発の邑南川本線に乗り、かなり遠くまで来た頃に間違いだと気付いてしまった場合、どこかの停留所で下車して石見川本方面の邑南川本線最終バスをつかまえれば、18:36に石見川本に到着する。
そうすると19:45発の川本美郷線最終バスに間に合う。ただし、その先のバスが繋がらず三次までは行けないのでやっぱり詰む。
三江線代替バスの経路をきっぱり諦めて、来た道を戻らない緊急回避措置としては終点の「三坂口」まで行き、おおなんバス大朝線に乗り換え終点の「大朝駅」で下車する。
さらに大朝駅から接続している中国JRバス広浜(こうひん)線の最終便に乗ると、広島県のJR可部線の可部駅前へ20:05に辿り着ける。
JR可部線の広島方面最終は23時台なので、可部駅まで抜けてしまえば後はあまり心配しなくていい。
こちらの回避ルートもなかなか面白そうなバス路線が揃っているのだが今回のテーマから外れるため、次にまた石見川本へ来る口実ができたということで日を改めて挑戦してみたい。
クリーム色のマイクロバスが目印
16:05頃、石見川本バス停に大和観光バス 川本美郷線のクルマが入ってきた。クリーム色を基調に赤とグレーのストリームラインが入れられたマイクロバスの三菱ふそうローザが、次に乗る三江線代替バスだ。
マイクロバスとはいえ前面に行先表示が付いており、車内にも整理券発行機や運賃表示器・運賃箱が並ぶ、れっきとした一般路線バス仕様の車両だ。
16:10、地元利用者を2名ほどを乗せて石見川本を出発した。さきほどのご婦人に手を降り挨拶する。街中を抜けると、江の川の右側・線路と並行している県道40号線を進んでいく。
この40号線、軽自動車同士でもすれ違いが難しいほど幅狭な箇所が点在していて、小柄なマイクロバスでもよくこんな道を経路に設定したものだと感嘆にふけってしまった。バス趣味ジャンルの一つでもある激狭路線ファンにはこたえられない区間である。
15分ほど進んだ先の停留所で1人が下車、しばらく三江線の線路と並走したのち、県道40号線は橋を渡り江の川の左側へと移る。石見川本から約17kmの地点に、三江線の駅で言うと「粕淵駅」の所在地だった美郷町がある。
美郷町の手前で江の川が「M」の字を描くように大きく右へカーブする。バスの車窓からはカーブ上に架けられた三江線の立派な3連下路式トラス橋が見える。
美郷町内の停留所で1名が下車し乗客が誰もいなくなった。ちなみに石見川本〜美郷町までの区間は北上する形となっており、南下しなければいけない最終目的地の三次には、直線距離で言えば大して近づいていない。
美郷町内を出てしばらく進んだ16:46に終点の浜原駅前に到着した。運賃は後払い方式で740円。ホーム等には入れないものの、旧・浜原駅の駅舎がそのままバスの待合室に使われている。トイレもある。
当日中には着けないので、泊まる!!
次のバスも川本美郷線で、今度は「上野」行きに乗り換える。「うえの」ではなく「かみの」と読むのがミソ。26分の待ち時間だ。
日が暮れて気温もますます下がり、待合室にも暖房がないため、冬場はこれくらいの待ちで勘弁しといてやる、といったところだろうか。
浜原駅前17:12発の上野行きに乗車し、この日は7停留所先の「潮温泉」で下車した。浜原駅前からの距離約7km、所要時間で9分程度、運賃は370円だ。
そのまま進んでも時間的にバスが途中までしかなく、どうやっても結局のところ当日中に三次までは行けない(詰む)。
詰まないための措置である以上に、せっかく島根県の奥深くまで来たんだし、滞在に時間を割くのも悪くないと考え、潮温泉バス停から歩いてすぐのホテルを予め手配しておいた。
停留所名の通り温泉が出ており、泉質はトロっとした濁り湯だ。日帰り入浴にも対応している。
ちなみに潮温泉周辺には飲食店がなく、ホテル(こちらも1軒しかない)でも素泊まりの場合は朝夕の食事の用意ができないとのこと。
バスとは直接関係ないにせよ、知らずに行ったら食えなかった、というのは何気にバスを乗り間違えるよりも深刻な事態かもしれない……。
ちょっとややこしい乗り継ぎポイント
翌日の潮温泉から利用するのは11:21の上野行き。その前に8:23発があるのだが、これで行っても次に乗るのは結局同じ時刻のバスになる。早起きしたら得しなかった、というのは路線バス旅では大いに有り得るのだ。
数分前にバス停まで赴いて、スルーされてしまわないようバスがやって来たらシッカリ挙手して確実に停まってもらう。この区間はずっと国道375号線を走り、進行方向右側に江の川が流れる。
また次もバスの乗り継ぎが必要となる。ここで重要なのが、乗り継ぎポイントが終点の上野ではなく、潮温泉から7.5km先・13分ほど行った「道の駅グリーンロード大和(だいわ)」停留所であるところだ。
11:34に道の駅バス停で下車、運賃は440円だ。もし乗り過ごして終点まで行ってしまっても、上野から道の駅まで2kmくらいなので、歩いて戻れなくもない。
江津からの通算距離およそ68km、次の飯南町営バス 谷・赤名・頓原線の出発まで約2時間16分だ。
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