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 1月15日、W2RC世界ラリーレイド選手権第1戦『第45回ダカールラリー2023』は競技最終日のステージ14が行われ、ディフェンディングチャンピオンとして今大会に臨んだナッサー・アル-アティヤ(GRダカールハイラックスT1+)が総合優勝を達成。TOYOTA GAZOO Racingとともに2連覇を飾った。

 2022年の大晦日に行われたプロローグを皮切りに元日の競技スタート以降、2週間にわたって続いた長く厳しいラリーがフィナーレを迎えた。

 TOYOTA GAZOO Racingが大会連覇を目指して参戦した四輪部門では、ラリーの序盤から中盤にかけてアクシデントが多発。シリーズハイブリッド式のパワートレインを備えた電動車『アウディRS Q e-tron E2』で参戦したチーム・アウディスポーツのカルロス・サインツ、ステファン・ペテランセルの両優勝経験ドライバーが姿を消したほか、14日(土)にダカールラリー新記録となる6ステージ連続優勝を飾ったセバスチャン・ローブ(バーレーン・レイド・エクストリーム)も大きく遅れを取るなど波乱の展開となった。

 そんななか前年王者であるアル-アティヤは、大きなトラブルやアクシデントを避けつつラリーを進め、競技3日目以降は大量リードを持って総合首位の座を守り続けた。

 サウジアラビア東部のアル・フフーフから同じくペルシャ湾に面するダンマームを結ぶ417kmのルートが組まれた競技14日目の最終ステージでもそれは変わらず。全長136kmのスペシャルステージを8番手で走破した“砂漠の王”が、ローブを抑えて自身5度目となる総合優勝を飾った。

 一方のローブは序盤のトラブルやアクシデントによって一時は総合31番手まで後退し、早々に勝負権を失ってしまった。それでも中盤以降に怒涛の追い上げで総合2番手まで戻ってきた。WRC世界ラリー選手権のレジェンドはステージ7連勝の期待もかかるなか、最終日はペースを抑え6番手でフィニッシュ。アル-アティヤから1時間20分49秒差の総合2位で表彰台に立つこととなった。

左から2位:セバスチャン・ローブ組(プロドライブ・ハンターT1+)、優勝:ナッサー・アル-アティヤ組(GRダカールハイラックスT1+)、3位:ルーカル・モラエス組(GRダカールハイラックスT1+) ダカールラリー2023
左から2位:セバスチャン・ローブ組(プロドライブ・ハンターT1+)、優勝:ナッサー・アル-アティヤ組(GRダカールハイラックスT1+)、3位:ルーカル・モラエス組(GRダカールハイラックスT1+) ダカールラリー2023

 表彰台の最後のひと枠を獲得したのは、オーバードライブ・レーシングから参戦したルーキーのルーカス・モラエスだ。GRダカールハイラックスT1+をドライブしたブラジル出身の31歳は、競技6日目から表彰台圏内を走り一時は総合2番手につけた。その後プロドライブ・ハンターT1+を駆るローブに逆転を許したが、初出場のダカールラリーで堂々の3位表彰台を獲得している。

 総合4位はTOYOTA GAZOO Racingのジニエル・ド・ヴィリエール。同5位にはチームメイトのヘンク・ラテガンが続いたため、トヨタはトップ5に4台のGRダカールハイラックスT1+を送り込んだことになる。

「いま終わったばかりだが、とてもハッピーだ。誰にとっても難しいダカールだった。その中でタイトルを守ることができて本当にうれしい」と語るのは、連覇を果たしたアル-アティヤ。

「僕はいつだって、もっともっと勝ちたいと思っているし今は世界(ラリーレイド選手権)チャンピオンのタイトルを守りたい。(今日は)狂ったように攻める必要はなかった。2週目を乗り切り、最後にダカールで優勝できたこと、それが本当に大事なことだ」

W2RC世界ラリーレイド選手権ではアル-アティヤ組を2ポイント上回りランキング首位に立つセバスチャン・ローブ(右)とコドライバーのファビアン・ルルカン(左)
W2RC世界ラリーレイド選手権ではアル-アティヤ組を2ポイント上回りランキング首位に立つセバスチャン・ローブ(右)とコドライバーのファビアン・ルルカン(左)
ダカールラリー初出場で3位となったルーカル・モラエス(右)。コドライバーはティモ・ゴットシャルク(左) ダカールラリー2023
ダカールラリー初出場で3位となったルーカル・モラエス(右)。コドライバーはティモ・ゴットシャルク(左) ダカールラリー2023

■二輪部門は大接戦! トップ2台が12秒差で最終日に突入

 早くに大勢が決しラリーの後半にかけては静かな戦いとなった四輪部門とは対照的に、二輪部門は目まぐるしくトップが入れ替わる接戦が展開された。

 ラリーの中盤はスカイラー・ハウズ(ハスクバーナ・ファクトリー・レーシング)が安定感を見せ、部門首位の座をキープしたが、後続とのタイム差は小さく前半戦終了時点のトップ3のギャップは、わずか13秒。また、首位から3分以内に6台がつけていた。

 この接戦のなか、ステージ10以降はベナビデス、ハウズ、トビー・プライス(レッドブル・KTMファクトリー・レーシング)と日毎に首位が入れ替わった。迎えたラリー最終日のステージ14は、競技13日目も首位を維持したプライスに対し12秒のビハインドで僚友ベナビデスが続く状況でのバトルとなり、1分31秒後方に下がったハウズも含め3人のうち誰が優勝しても不思議ではない状況にあった。

 そんななか始まった最終決戦では、総合2番手のベナビデスが序盤からリードを奪う。対する首位プライスはステージ中盤から後半にかけて序盤の遅れを取り戻しにかかったが一歩及ばず。55秒早いタイムで首位フィニッシュを果たしたベナビデスが総合でもプライスを逆転し、自身2度目の部門優勝を飾った。

 チームメイトバトルに敗れたプライスは43秒差の2位となりこの結果、レッドブル・KTMファクトリー・レーシングはワン・ツー・フィニッシュを達成している。総合3位は最終ステージを5番手で走破したハウズで、ベナビデスからは5分04秒遅れた。

 ホンダ所属時の2021年以来、2年ぶりの優勝を果たしたベナビデスは「今朝はステージの0kmから136kmまでの各キロメートル以外は、頭の中が空っぽだった」と最終対決を振り返った。

「この完全にクレイジーなダカールの最後に、しかもわずかな差で優勝できたのは信じられないことだ。また、ふたつの異なるバイクブランドで優勝したのも初めてだから、そのことをとても誇りに思う」

■TLCがクラス10連覇、日野は部門トップ10フィニッシュ

 日本勢は、新型『トヨタ・ランドクルーザー・GRスポーツ』を投入したチームランドクルーザー(TLC)のロナルド・バソ/ジャン・ミッシェル・ポラト組と、三浦昂/ローラン・リシトロイシター組が四輪部門・市販車クラスでワン・ツー・フィニッシュを達成。前日にターボトラブルい見舞われたバソが総合107位、三浦が同108位(ともに暫定)で“世界一過酷なラリー”を走破し、クラス10連覇を決めた。

 また、トラック部門にエントリーしている日野チームスガワラの菅原照仁/染宮弘和/望月裕司組は、2年目の『日野600ハイブリッド』で前年の部門22位を大きく上回る順位でラリーを走破。部門トップ10フィニッシュ(暫定)を果たしている。

2年ぶり自身2度目のダカールラリー優勝を果たしたケビン・ベナビデス(KTM 450ラリー・ファクトリー) ダカールラリー2023
2年ぶり自身2度目のダカールラリー優勝を果たしたケビン・ベナビデス(KTM 450ラリー・ファクトリー) ダカールラリー2023
左から2位:トビー・プライス(KTM 450ラリー・ファクトリー)、優勝:ケビン・ベナビデス(KTM 450ラリー・ファクトリー)、3位:スカイラー・ハウズ(ハスクバーナ450ラリー・ファクトリー) ダカールラリー2023
左から2位:トビー・プライス(KTM 450ラリー・ファクトリー)、優勝:ケビン・ベナビデス(KTM 450ラリー・ファクトリー)、3位:スカイラー・ハウズ(ハスクバーナ450ラリー・ファクトリー) ダカールラリー2023