12月15日、静岡県の富士スピードウェイで、スバルとスバルテクニカインターナショナル(STI)は、2023年のニュルブルクリンク24時間レースに挑むスバルWRX STI NBR CHALLENGE 2023のシェイクダウンを行った。ベース車両をWRX S4にスイッチし、これまで培われてきた技術と新技術を融合させた新車両は、開発に携わるドライバーにも好感触を得ているようだ。
2008年からニュルブルクリンク24時間に挑戦し、人財育成、さらに技術開発を進めているスバル/STI。世界一過酷なコースであるニュルでクルマを鍛えてきたが、GRB型インプレッサWRX STIでスタートした挑戦はGVB型WRX STI、さらに2014年から登場したVA型WRX STIに引き継がれてきた。
今回登場するVB型スバルWRX STI NBR CHALLENGE 2023は、これまでのニュル挑戦で培われ、市販車にも投入されてきた技術とともに、車両のスイッチとともにさまざまな新機軸が投入される。開発コンセプトとして、SGP(スバルグローバルプラットフォーム)をベースにボディとサスペンションを新規開発しており、フロントからリヤまで荷重を効率的に活かせるボディを使いながら、曲げ剛性の向上を狙っている。
また、FA24エンジンをベースとしたレース用新型2.4リッター直噴ターボエンジンは、クランクシャフト、動弁系、高圧燃料システム、点火プラグのみを量産技術から流用し、その他はニュル用に新規開発。性能向上、信頼性向上を果たし、これまでの340馬力に対し、380馬力にパワーアップを果たしている。
エンジンについては、フジツボの協力によるエキゾーストマニフォールド、BMCの協力による吸気ダクト、小倉クラッチの協力によるフライホイール・クラッチ、モチュールのオイル・冷却材など、信頼性と出力向上に対応。また車体部品でも信頼性向上を目指し、フロントのロワアームのボールジョイントを強化したほか、フジツボのマフラーも大型化、レイアウト変更を行っている。
さらに、走りの熟成を目指しSGPボディをさらに活かすべく、IPFの協力でフレキシブルドロータワーバー、フレキシブルドロースティフナーなど軽量化や見直しが行われ、これらの内容は市販パーツにも活かされていく。
これらの改良が、2022年までの専用サスペンションやAWD制御、さらに空力や塗装などニュルブルクリンクで培われた技術と組み合わされたのが、「スバル/STIファンのために『勝つこと』で走りの確かさをお届けする」を目標とするスバルWRX STI NBR CHALLENGE 2023となる。信頼性底上げ、操縦安定性向上、旋回スピード向上を目指しており、「お客様の『運転が上手くなる』クルマづくりに活かすことをお約束します」という。
この日のシェイクダウンでは山内英輝、佐々木孝太がステアリングを握ったが、コロナ禍で出場できなかったものの、国内でテストをこなしてきた山内によれば「最も違いがあるのはやはりエンジンですね。トップスピードも速く、元気がある感じです。良い部分が多いですね」と感想を語った。
一方で車体については、「昨年までのクルマは何年もずっと開発を続けてきたものなので、ロールやフロントの入りなどは昨年までの方がまだ良いところがあります。しかし、そこはもう少し詰めていきたいですし、ポテンシャルがあるから成長させていけると思います」という。
また山内は、今回の挑戦がスバルのプロモーションに繋がればとも期待しているという。「(ベース車の)WRX S4は街中でよく見かけるか……というと、そこまでではないと思うんです。この挑戦をきっかけに販売店さんにも貢献できればとも思いますし、優勝してお店にポスター等も貼っていただければ話題になると思うんです」と山内。
「皆さんのお役に立てるよう、頑張っていきたいですね」
先述のように「スバル/STIファンのために『勝つこと』で走りの確かさをお届けする」がコンセプトのWRX STI NBR CHALLENGE 2023。辰巳英治総監督は「スバル乗りの皆さんに『自分のクルマは良いクルマだ』と思っていただけるよう、勝って日本に帰ってきたいと思います」と宣言した。2.4リッターとなったことでクラスはSP4Tとなるが、朗報を届けられる日を楽しみにしたいところだ。