12月15日、静岡県の富士スピードウェイで、スバルとスバルテクニカインターナショナル(STI)は、2023年のニュルブルクリンク24時間レースに挑む車両のシェイクダウンを行った。来季は新たにベース車両をスバルWRX S4にスイッチ。新型2.4リッター直噴ターボエンジンを積み、SP4Tクラス優勝を目指す。
スバル/STIは、2008年から初代インプレッサ発売直後から量産車両のテストに活用しているニュルブルクリンクを舞台とするニュル24時間に挑戦。2009年からSTIの独自プロジェクトとしてたゆまぬチャレンジを続けてきた。ニュルで得られた知見はスバル/STIの市販車にもフィードバックされている。
コロナ禍のため2020〜2021年は参戦が叶わなかったこの挑戦だが、2022年は3年ぶりの参戦が実現した。ただトラブルによりクラッシュ、リタイアという結果に終わっており、2023年はこの悔しさを胸に、ふたたび参戦し完走、そしてクラス優勝を目指し、同時にスバル/STIのクルマづくりのたしかさを証明するべくニュルブルクリンクに挑むが、そのためのニューウェポンがこの日シェイクダウンされたWRX S4だ。
2023年の目標は、ズバリ「スバル/STIファンのために『勝つこと』で走りの確かさをお届けする」だ。さらに人材育成、技術開発を推進、確認、そしてファンとのコミュニケーションを強化していく。2022年はリタイアに終わったが、今季はSP4Tクラス優勝を掲げていく。
新型車両は信頼性底上げ、操縦安定性向上、旋回スピード向上を目指し、SGP(スバルグローバルプラットフォーム)をベースにボディとサスペンションを新規開発。FA24エンジンをベースとしたレース用新型2.4リッター直噴ターボエンジンを開発し、380馬力以上を目指す。これらの最新技術をAWD制御など、これまで培ってきた基本パッケージと組み合わせることで、さらなる深化を実現した。
また2022年にリタイアの原因となったフロントのロワアームのボールジョイントを強化したほか、市販車の先行開発も兼ねるフレキシブルパーツなどが採り入れられる。外観では、カラーリングイメージもWRブルーとブラック、チェリーレッドの構成は変わらないが、AWDの力強さをフェンダーに沿ってカラーを配することで表現。STIブランドの強調、さらにカーボンパーツを際立たせることで、レーシングカーとしての存在感を表現した。また、これまでニュルで培われてきたフロントバンパーのサメ肌やフェンダールーバーなども採り入れられる。
参戦体制としては、辰巳英治総監督を中心に渋谷直樹プロジェクトリーダー、沢田拓也監督、宮沢竜太チーフレースエンジニア、そして全国のスバルディーラーのメカニックたちが今回も実戦に携わっていく。ドライバーとしては、開発ドライバーとして山内英輝、井口卓人、佐々木孝太が紹介された。
「2022年は私の配慮ミスでリタイアを招いてしまいまして、2023年は私の出番はないかと思っておりましたが、社長はじめ皆さんに『負け逃げは許さない』と言われてしまいました(苦笑)。この新型車の良さを皆さんにもご覧に入れたいですし、何度か勝たせていただいた経験を活かし、新型車で勝利を収め、スバル乗りの皆さんに『自分のクルマは良いクルマだ』と思っていただけるよう、勝って日本に帰ってきたいと思います」と2023年の挑戦に向け、辰巳英治総監督は力強く語った。
この日は富士スピードウェイでスーパーGTに参戦するSUBARU BRZ R&D SPORTとともに専有走行が設けられ、山内がステアリングを握りコースイン、佐々木に交代しつつ、シェイクダウンを行った。ニュルでは現地ファンにとってもすっかりお馴染みとなっているスバル/STIの挑戦。2023年の『勝利』という絶対目標に向け、WRX S4が走り出した。