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 来年度(令和5年度/2023年度)の政府予算編成が始まろうとしている。週内(12月16日頃)にも決定すると予想される政府与党の税制大綱では、かねてより自工会が「世界一高い」と言い続けている自動車関連諸税が大きな焦点のひとつ。今まさに検討されているこの問題を考えるにあたり、豊田章男会長が2022年11月の記者会見で語った言葉を改めて紹介しておきたい。

文/ベストカーWeb編集部、画像/日本自動車工業会公式サイト、ベストカー編集部

■「日本という国をどうしたいんだ」というビジョン

 税制改正の骨子をまとめた与党税制大綱が、今週末にも決定される。防衛費や社会保障費と並んで、焦点となっているのが自動車関連諸税だ。報道では「EVが普及した時代を見据えた具体的な税制の枠組みを3年後までに示す、という記述を入れ込む方向で調整中」とされている。

 自動車関連諸税については、燃費のいいHVやそもそも給油を必要としないEVが普及することによって、(これまで道路整備などインフラ整備予算を支えてきた)燃料税が減少する…という懸念があった。またそれと並行して「そもそも日本の自動車関連諸税は、先進国のなかで突出して高い」という批判もあり、明確なビジョンをともなった抜本的な改正が望まれている、という背景がある。

 クルマの税金を巡る話題は、今がまさに議論の渦中、正念場であり、そんな時だからこそ自動車ユーザー側の代表的な意見のひとつとして、2022年11月17日に実施された記者会見での、日本自動車工業会の豊田章男会長のコメントを改めて紹介しておきたい。

2022年11月17日に実施された日本自動車工業会の会見にて、豊田章男会長が自動車関連諸税についてコメントした

 この会見はオンラインで実施され、自工会側から「経団連モビリティ委員会の立ち上げと、官邸との懇話会の実施」などの報告があって、質疑応答に移ったのち、大手新聞記者から「自工会の豊田会長は、以前から【日本の自動車関連諸税は世界一高い】とおっしゃっていました。そうしたなかで、走行距離に応じた課税などの論議も出て聞いております。来年度の税制改正に向けて、(政府に対して)どのような議論を求めますか」という質問に、豊田会長が「この回答はわたしから」と引き取ったかたちでコメントされた。

(豊田章男会長のコメント引用ここから)

 今おっしゃったように、(日本の自動車関連諸税が)世界一高い税金である、ということは変わっておりません。そのうえ、非常に複雑です。

 わたくしどもは「この複雑な税体系を、もう少し簡素化してください」だとか、「世界一高い自動車税を軽減してください」と、ずっと申し上げてきました。それに加えて、「自動車ユーザーも、バイクユーザーも、軽自動車ユーザーも、国民ですよ」ということを申し上げております。

自工会調査資料/前提条件: (1)排気量2000cc (2)車両重量1.5t以下 (3)JC08モード燃費値 21.4km/L(CO2排出量108g/km) (4)車体価格269万円(軽は142万円)、13年間使用で計算

 そのうえで、未来の日本にどういう税制がいいのか、という中で、わたくしども自動車業界は、高いんですが、ただ減らすことだけを要望しているわけではありません

 先ほども申し上げたように、いま自動車業界は本当に、100年に一度の大変革を迎え、未来に向けた大規模な投資ですとか、インフラ整備ですとか、 来たるべきモビリティ社会に向けて、いろいろとお金が必要だということは理解をしております。

 その中で、各省庁間で「財源はどこである」とかいうような綱引き合戦ではなくて、日本という国をいったいどういうふうに持って行きたいんだと、そのためにはこの自動車関連諸税で集めた税金をどう活用していくんだという議論をお願いしたい、ということを声を大にして申し上げたいと思います。

自動車関連諸税は非常に複雑な上、日本の税収の約8%を占める(注:1.租税総収入内訳の消費税収は自動車関係諸税に含まれる消費税を除く。 2.自動車関係諸税の消費税収(自動車整備含む)は自工会の推定。 3.消費税収には地方消費税収を含む(資料:財務省、総務省/自工会より)

 その中で経団連モビリティ委員会ですとか、官邸との懇話会というのは、非常にいい議論をさせていただけるんじゃないかなと思っております。

 今後日本の競争力を強化するために日本全体の税制のあり方を見直すという点で、わたくしどもから抜本的な見直しの議論が始まった第一歩ではないかなと思っております。

 短絡的な成果を求めるのではなく、これを機に日本という、この20年、30年で競争力を失った日本経済の存在を高めるためにご活用いただきたい。自動車産業も力になりたいと思いますので、ぜひその点をご理解いただきたいと思っております。

(豊田会長の引用ここまで)

■ただでさえ問題の多い自動車関連税制に

 現在クルマは「買う時」、「使う時」、さらに「持っているだけ」でも税金がかかる。たとえば車両価格269万円の車を13年間使用すると、6種類の自動車関係諸税が課せられ、その負担額は合計で約180万円になる(自工会試算)。自動車ユーザーは、これらの税金以外にもさらに有料道路料金、自動車保険料(自賠責および任意保険)、リサイクル料金、点検整備など、多種・多額の費用を負担している。

「欧米に比べ日本はEV転換が遅れている≒日本のCO2削減努力は滞っている」と思われがちだが、過去20年間のCO2削減実績で見ると日本は欧米諸国を大きく上回っている。日本メーカーと日本人の努力の結晶と言っていいい。この流れを叩き切るような税制にはしないでほしいのだが…

 そのいっぽうで、自動車は日本の基幹産業であり、多くの雇用と税収、外貨獲得を支える日本経済のエンジンともいえる存在だ。そうした産業の国内事業に対して、日本政府はあまりにも冷たいのではないか。

 よく知られるとおり、現状の自動車関連諸税には問題点が多い。二重課税(税金に税金を課けている)問題や古いクルマへの重課税、自動車ユーザーが支払った自賠責保険積立金から国が一般財源へ流用し、その返済が6000億円も残っているという状況も、いっこうに解決しそうにない。

 そうした状況で、いま日本は「EVを含む次世代技術車を普及させ、カーボンニュートラル社会を目指す」という目標を掲げ、官民一体となって突き進んでいる。

 税制度はその手段であるべきではないか。

「自動車ユーザーも国民です」

 豊田章男会長の発言を、最後にもう一度引用しておきます。

【画像ギャラリー】高くて複雑!! 日本の自動車関連税制とクルマの大事さを示すグラフと図(8枚)画像ギャラリー

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