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 2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーの大賞を授賞したニッサン・サクラ/ミツビシeKクロスEV。43年目を迎えた日本カー・オブ・ザ・イヤー史上、軽自動車がイヤカーに輝いたのは初めてだ。

 主催者が発表した授賞理由のひとつとして「現実的な価格帯で本格的なバッテリーEVを購入できること」が挙げられていたが、それ以外にもいくつかの理由を挙げることができる。ここでは、ニッサン・サクラ/ミツビシeKクロスEVを語る上で見逃せない強み&魅力を抜き出してみたい。

 まず、運転席に座った瞬間に感じるのはインパネ&シートまわりの仕立ての良さだ。最近は、軽自動車の販売価格帯が上がったこともあって上質感を意識させる凝ったつくりを採用するモデルも増えているが、サクラはその中でもトップクラスの出来栄えだ。

スタイリングはサクラ専用に設計されたもの。フロントマスクはニッサンのEV-SUVのアリアの流れを感じるVモーショングリルデザインを採用している。未来を意識した先進感あふれるスタイリングだ。
スタイリングはサクラ専用に設計されたもの。フロントマスクはニッサンのEV-SUVのアリアの流れを感じるVモーショングリルデザインを採用している。未来を意識した先進感あふれるスタイリングだ。
ニッサン・サクラのインパネまわり。中央モニターと運転席前のアドバンスドドライブアシストディスプレイが連なる統合型インターフェースディスプレイを採用。パネルやトリムにファブリック素材を多用するなど、上質感を巧みに演出する。
ニッサン・サクラのインパネまわり。中央モニターと運転席前のアドバンスドドライブアシストディスプレイが連なる統合型インターフェースディスプレイを採用。パネルやトリムにファブリック素材を多用するなど、上質感を巧みに演出する。

 肌触りの良いファブリック素材を多用するほか、ニッサンの最新モデルに採用が進む統合型インターフェイスディスプレイの採用など、室内は先進感の溢れる仕立てだ。オプションで選べるプレミアムインテリアパッケージ(4万4000円)ともなると、“小さな高級車”と呼ぶにふさわしいレベルとも感じるほどだ。

 一方、eKクロスEVは、全体的に先進的なデザインでまとめているサクラに対して、アクティブな雰囲気を強めたデザインとなっている。メーターやメインディスプレイは、オーソドックスな配置になるため、サクラと比較すると平凡にも思えるが、パネルやトリム類は質感は良好で、こちらも既存の軽自動車を超えている。

ミツビシeKクロスと同様のフロントマスクを採用。サクラと並ぶとSUV風なアクティブ感を押し出したルックス。ルーフレールが装着されるなど軽SUVらしさを持つことも特徴。
ミツビシeKクロスと同様のフロントマスクを採用。サクラと並ぶとSUV風なアクティブ感を押し出したルックス。ルーフレールが装着されるなど軽SUVらしさを持つことも特徴。
ニッサン・サクラ
ニッサン・サクラ

■これまでの“軽”を超えた実用性と上質な走り

 そして忘れてはいけないのが、サクラ/eKクロスEVには軽自動車離れした動力性能が与えられたこと。最高出力は47Kwと軽自動車の自主規制内に留まるが、最大トルクは195Nmと、コンパクトクラスのガソリン車を凌駕するスペックが与えられている。

モーターのパワースペックは47kW/195Nmを発揮。最高出力こそ軽自動車の自主規制制限値に留まるが、最大トルクは軽ターボを大きく凌駕する数値を叩き出す。航続距離の問題もあって高速走行はあまり想定されていないが、煮詰められたシャシー性能のおかげもあって、決して高速走行を苦にするタイプではない。
モーターのパワースペックは47kW/195Nmを発揮。最高出力こそ軽自動車の自主規制制限値に留まるが、最大トルクは軽ターボを大きく凌駕する数値を叩き出す。航続距離の問題もあって高速走行はあまり想定されていないが、煮詰められたシャシー性能のおかげもあって、決して高速走行を苦にするタイプではない。

 モーター駆動ならでは発進からの鋭い出足は、ターボを含めた内燃機の軽自動車では味わえないもの。さすがに80km/hを超えたあたりから力強さは頭打ちになってくるが、街中での扱いやすさは圧倒されてしまう。ドライバーの意志に対してキビキビと応えてくれる様は、かわいい見た目とは裏腹に相当な実力を秘めていることが窺える。

 ちなみに搭載する駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は20kWhと小型になるため、航続可能距離(一充電走行距離)は180km(WLTCモード)とかなり短い。実際に走った印象では、街中をゆったり流す速度ではこの数値にかなり近く、高速道路などで速度を上げていくとやや減りが早まる感じだ。

バッテリーは鉄の格納ケースに収納された状態で床下に配置。バッテリー容量は350V/20kWhとBEVとしては少なめで、WLTC走行モードでの一充電走行距離は180kmとなる。充電方式は普通充電とチャデモ式DC急速充電に対応。普通充電による満充電までの時間は約8時間が目安になる。
バッテリーは鉄の格納ケースに収納された状態で床下に配置。バッテリー容量は350V/20kWhとBEVとしては少なめで、WLTC走行モードでの一充電走行距離は180kmとなる。充電方式は普通充電とチャデモ式DC急速充電に対応。普通充電による満充電までの時間は約8時間が目安になる。

 入念に設計されたシャシーのおかげもあって、軽自動車としては高速走行を苦にしないタイプなので、もう少しバッテリーの余裕があればと思うのだが、そうなるとサクラ/eKクロスEVの魅力である“こなれた価格”が実現できなくなってしまう。

 リーフやアリアとの関係も考えれば、街中での普段使いで便利なクルマを求めるユーザーのためのEVということは間違いない。ただし、EVとしての基本性能はしっかりと煮詰め、世代トップの実力が与えられるなど、価格が安いだけの廉価モデルにしていないところがサクラ/eKクロスEVの凄いところ。現時点で販売されているEVの中で、最も身近でかつ安心して選べるモデルであるのは間違いない。

■サクラeKクロスEVはベーシックグレードに必要装備をプラスした買い方がオススメ

 サクラにはビジネス向けグレードの『S』の設定もあるが、一般ユーザーにオススメできるのはサクラもeKクロスEVもふたつのグレード。サクラを例に挙げれば、ベーシックな『X』(239万9100円)と上級仕様の『G』(294万300円)を選ぶことができる。EVとしての基本性能は共通なので、差が出るのは内外装の加飾や利便装備の設定によるもの。

 『G』は、プレミアムEVとも言える内容で専用ナビシステムや最新のプロパイロットが標準装着されている。ただ、プロパイロットは高速道路で真価を発揮する先進装備で、高速長距離をあまり想定していないサクラにとっては、ミスマッチともいえる。『X』と『G』の価格差は約55万円。『X』をベースに純正ナビを追加して選んだ方が満足度は高そうだ。

 サクラとeKクロスEVの購入に際しては、公的機関からの補助金の存在も見逃せない。ユーザーの居住する地域によって金額は異なるが、2022年夏頃は、国から令和4年度「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」(55万円)と地方公共団体からの補助金(対象の自治体で金額は異なる。東京都で購入する場合は45万円)が購入後に補助金として給付されることになっていた。ベーシックな『X』であれば実質的に150万円を切る費用で狙うことができたユーザーもいたことになる。

 なお「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」は、予定していた予算を使い切り今後の見通しが不透明になっていたが、この12月に補正予算が通過したことで正式に延長が決定。令和5年2月17日登録分まで補助金が支給されることになった。ちなみに2月18日以降に関しても“決定次第公表予定”とされているため、来年度も何らかのカタチで支援が続く可能性が高い。

運転支援機能は、サクラはプロパイロット、eKクロスEVはマイパイロットとして設定。プリクラッシュブレーキや周辺検知機能などは軽自動車としてトップレベルの内容が注がれている。
運転支援機能は、サクラはプロパイロット、eKクロスEVはマイパイロットとして設定。プリクラッシュブレーキや周辺検知機能などは軽自動車としてトップレベルの内容が注がれている。

■ニッサン・サクラ/グレード構成

駆動 バッテリーサイズ グレード 車両価格
2WD 20kWh S 233万3100円
2WD 20kWh X 239万9100円
2WD 20kWh G 294万300円

■ミツビシ eKクロスEV/グレード構成

駆動 バッテリーサイズ グレード 車両価格
2WD 20kWh G 239万8000円
2WD 20kWh P 293万2600円

ニッサン・サクラ
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ミツビシeKクロスEV
ミツビシeKクロスEV