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 2023年は全9戦へのスケジュール復帰拡大が決まったETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップだが、兼ねてより代替パワートレインとして導入の協議が続けられてきたフル電動EVとハイブリッド・ユニットに関して、技術規則の改訂により2023年から正式承認されることが確定した。

 現在は総重量5.3t、最高出力1100PS超えの13リッター直列6気筒、内燃機関レーシングディーゼルを搭載するETRCの“レーシング・ジャイアント”だが、2021年には100%持続可能な燃料(HVO)が導入されるなど、欧州の物流市場を牽引するチャンピオンシップの責務として、さまざまな施策が取り入れられてきた。

 その飛躍的なステップとなる今回の決定により、現世代の内燃エンジンレーストラックとともに、2023年より全電動のBEVや、ハイブリッドのパワートレインが許可されることとなった。

「電動化技術とハイブリッドを技術規則に追加するという、今回のFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)による新しい規則の承認は、我々の持続可能性ロードマップにおける重要な次のステップになる。これにより選手権にも本格的に持続可能性への道が開ける」と語るのは、シリーズ統括団体であるETRAのマネージング・ディレクターを務めるゲオルグ・フックス。

「ここ数年、我々はFIAの技術部門と協力してエネルギー転換に取り組んでおり、おなじグリッド上で合成燃料、ハイブリッド、または電気を動力源とするあらゆる技術とエネルギー形態を受け入れる準備ができている」

 これら代替パワートレインを備えたトラックは、FIAによる完全な技術検査を受け“FIA/F”のテクニカルパスポートを取得してからコースに入ることが可能となる。

「グリッドに電動パワートレインを追加することで、まったく新しい可能性が開かれる。電動モーターによる巨大なトルクは、よりエキサイティングでアクション満載のレースを可能にするんだ」と続けたフックス。

「我々には素晴らしいプラットフォームがあり、それを利用して変化を推進することがシリーズの責任だ。新しい開発が極限のレース環境で機能することを示すことができれば、顧客やエンドユーザー、プロのトラックドライバーの間でも、こうした持続可能な技術が受け入れられるようになるだろう」

2023年は参戦車種が登場次第、現在の内燃機関レーシングディーゼルとEV、ハイブリッドが混走することになる
2023年は参戦車種が登場次第、現在の内燃機関レーシングディーゼルとEV、ハイブリッドが混走することになる
2021年には100%持続可能な燃料(HVO)が導入されるなど、欧州の物流市場を牽引するチャンピオンシップの責務として、さまざまな施策が取り入れられてきた
2021年には100%持続可能な燃料(HVO)が導入されるなど、欧州の物流市場を牽引するチャンピオンシップの責務として、さまざまな施策が取り入れられてきた
ETRCは2022年シーズンを通じて新たな試みにも挑戦しており、毎戦、パドックにて"INNOVATION CAMP(イノベーション・キャンプ)"と呼ばれる次世代技術の見本市を開催してきた
ETRCは2022年シーズンを通じて新たな試みにも挑戦しており、毎戦、パドックにて”INNOVATION CAMP(イノベーション・キャンプ)”と呼ばれる次世代技術の見本市を開催してきた

■2022年シーズンを通じて新たな試みにも挑戦しているETRC

 そのETRCは2022年シーズンを通じて新たな試みにも挑戦しており、開幕戦のイタリア・ミサノからは毎戦、パドックにて“イノベーション・キャンプ”と呼ばれる次世代技術の見本市を開催してきた。

 この催しでは、各メーカーが持続可能な開発成果を紹介し、トラック業界やドライバー、そしてファンに向け、代替動力源のトラックを紹介するためのプラットフォームが提供されてきた。

「このイノベーション・キャンプも、業界の代表者とファンの両方から非常に好評を博した」と、その手応えを語ったフックス。

「我々の戦略の一環として、EVやハイブリッドに限らず、あらゆる種類の技術にオープンでありたいと考えている。合成燃料やHVO、バイオLNGなどあらゆる技術の車両をパドックに展示できたのは素晴らしいことだったね」

 開幕戦以降、すでにメルセデスやボルボ、ルノー、ヒョンデ、イベコ、そしてオランダのDAFなどが出展し、フランスに拠点を置くガウシンの『ダカールラリーH2レーシングトラック』や水素バスなど、あらゆる車両が姿を見せた。

 トラックレーシングの“聖地”とされるドイツ・ニュルブルクリンクのレースウイークには、ヒョンデが『エクシエント・フューエル・セル』と呼ばれる燃料電池を搭載した水素駆動のトラックを初めて展示し、同社としてもロードカーの技術で成功を収めた後、2019年に最初の燃料電池駆動の商用車を発売し「水素の未来を確信している」との見通しを明かしていた。

 グループ傘下であるヒョンデ・ハイドロゲン・モビリティAGのCEOを務めるベアト・ハーシも「ヒョンデは過去20年間、燃料電池の開発を続けてきた。そして4年前、乗用車部門で成功を収めた燃料電池をトラックに搭載することを決定し、これが将来の解決策であることに気付いたんだ」と強調する。

 さらに世界初、最古のトラックブランドのひとつとして知られるボルボ・トラックは、2019年にEVトラックの連続生産を開始し、それ以来、さまざまな輸送ニーズに合わせて電動トラックの事業を拡大している。

「企業が自らの責任をますます認識するようになるにつれ、より環境に優しい車両に対する需要は過去数年間で確実に増加している」と、電動車両を扱うボルボFEエレクトリックのドイツ法人ディーラー責任者を務めるミハエル・ブレナー。

「しかし、現在市場で入手可能な代替ソリューションに関する知識の欠如と、充電インフラストラクチャの欠如により、多くの企業が車両を代替動力車に切り替えることを妨げている可能性がある……とも考えているよ」

"INNOVATION CAMP(イノベーション・キャンプ)"に展示されたガウシンの『ダカールラリーH2レーシングトラック』
“INNOVATION CAMP(イノベーション・キャンプ)”に展示されたガウシンの『ダカールラリーH2レーシングトラック』
「合成燃料やHVO、バイオLNGなどあらゆる技術の車両をパドックに展示できたのは素晴らしいことだった」とゲオルグ・フックス
「合成燃料やHVO、バイオLNGなどあらゆる技術の車両をパドックに展示できたのは素晴らしいことだった」とゲオルグ・フックス
ドイツ・ニュルブルクリンクのレースウイークには、ヒョンデの『XCIENT Fuel Cell』と呼ばれる燃料電池を搭載した水素駆動のトラックも展示された
ドイツ・ニュルブルクリンクのレースウイークには、ヒョンデの『XCIENT Fuel Cell』と呼ばれる燃料電池を搭載した水素駆動のトラックも展示された