12月12日、例年よりも約1カ月早まって発表されたホンダの2023年モータースポーツ活動計画。国内の四輪、二輪を中心に2023年のラインアップが発表されたが、そのなかでも今回一番のサプライズとなったのが、全日本スーパーフォーミュラ選手権の体制概要のなかで大湯都史樹、大津弘樹、笹原右京の名前がなかったことだ。大津については事前に噂が挙がり、笹原は先日の鈴鹿ルーキーテストでトムスから参加したことで移籍が推測されていたが、大湯のシートがないのはサプライズだと言える。その大湯に、発表会の場で聞いた。
2022年のスーパーフォーミュラでは、大湯は第5戦SUGOでの2位がシーズン最高位ながら、第8戦もてぎでポールポジションを獲得したように予選ではQ2の常連として誰もが認める一発の速さを持っている。海外志向も強く、年齢も24歳と若いことからホンダ陣営のなかでも今後の活躍が期待されるドライバーのひとりであることは間違いないが、2023年の参戦はスーパーGTのみの発表となった。
「先日の(鈴鹿ルーキーテスト)は中継で気にして見ていました」と大湯。12月7、8日に開催されたルーキーテストには今年のホンダのレギュラードライバーとして野尻智紀、牧野任祐とともに大湯も不参加だったが、大湯のみは事情が違ったようだ。
「単純にシートがなかったので、今回の(スーパーフォーミュラの)発表には名前がありません。いろいろ事情があって、今は言える範囲では難しいのですけど、噂に挙がっているような事実も今のところはありません」と大湯。
大湯についてはTCS NAKAJIMA RACINGからの移籍の可能性とともに、新チーム、またはFIA-F2など海外カテゴリーへの参加が噂されていたが、現段階でそのふたつについての可能性はないという。
「(スーパーフォーミュラのシートがないことについて)僕もびっくりしました。現状はスーパーフォーミュラについては何も決まっていません」
「これからいろいろな方々のお力添えとか、声を掛けてもらえたら是非ともお話をさせて頂きたいです」
2023年のスーパーフォーミュラのシートがなかったことについて、大湯自身も自分に足りない部分があったことは理解している。
「速さについてはひとつ抜けているという評価を頂いていますが、言ってしまえば結果を出さないと何も始められないんです。2022年もポールは獲れていますけど、どうしても(決勝)の数字が大事になる」
自分の実力、速さには自信と手応えを感じているだけに、大湯としては今回は悔しい体制発表になった。
「僕の想いとしては(もし乗せてもらえるなら)必ずチャンピオンを獲る。乗ったら必ず結果を出す。今は(チャンピオンの)野尻(智紀)さんが速いですが、野尻さんよりもリアム(ローソン)よりも全然速く走れると思っています」
今回の発表の段階ではスーパーフォーミュラに関しては何も決まっていないことを強調する大湯。それでも、スーパーGTでは2台体制となったARTA、そしてメンテナンスを無限が受け持つ新体制のチームに移籍し、野尻智紀とタッグを組むことになる。
「野尻さんと無限、そしてタイヤのパッケージを考えると万全の体制だと思います。ARTAと無限のジョイントということで(2台体制になって)情報量もノウハウも多いですし、ARTAとしても2007年以来のGT500クラスのチャンピオン獲得はぜんぜん夢ではない。それくらい、野尻さんとのコンビ、ドライバーとしてのパッケージは本当に最強だと思っています」
ホンダの育成で同期の角田裕毅がF1で活躍を見せているが、海外志向の強い大湯の目指す将来像を聞いた。
「僕はF1が最終目標ではないんですね。世界三大レースに全部出たいですし、ドリフトもやりたいんです。僕の目標は世界で認められるような運転がうまいドライバーになること。今で言うと(フェルナンド)アロンソとか、小林可夢偉さんとか。(キミ)ライコネンも好きなドライバーで、そういうドライバーを目指しています。いろいろ我慢しなければいけないこともありますが、とはいえ、優等生にはなってはいけないと思っています」
走りもキャラクターも、これまでの枠に収まらないポテンシャルを秘めている大湯都史樹。2023年のスーパーGTでのパフォーマンスも楽しみだが、やはりこれだけの逸材にフォーミュラのシートがないのは、ホンダというメーカーだけではなく、日本のモータースポーツにとっても大きな損失になりかねない。一部で噂がある、スーパーフォーミュラの参戦台数追加に期待したいところだが、いずれにしても大湯にとって2023年シーズンは自身のドライバー生命、自身のキャリアの大きな分岐点を迎えることになる。