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 バスマガジン記者が多くの事業者の現役バス運転士との取材の中で、世間話から出たよもやま話をお届けする。話題は順不同で書いた。本文中の写真とは参考程度とご理解いただければ幸いである。

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(写真は本文とは関係ありません)

外車は運転しにくい?

香港・マカオと中国本土を結ぶMAN社のバスは左右どちらからでも乗降できる

 今や外国製の輸入車バスはその数を増やしつつある。路線バスでは欧州製の連節車や中国製のEV車、高速車や貸切車では韓国製ハイデッカーや欧州製のダブルデッカーまでさまざまだ。国産車も輸入車も運転したことがある運転士からは次のような声が聞かれた。

 「慣れないと運転はしにくいですよ(笑)。ウインカーが反対側なのは乗用車の輸入車でも同じですから本当に慣れですけど、ATのセレクトがボタンやシフトレバーではなく、右側レバー(記者注:国産車でウインカーのあるレバー)を回すことで変わるんですよね。アレはATとはいえ結構な頻度で使いますからね」

 ダブルデッカーについてはこんな意見も。「ふそう車(エアロキング)は力がありましたね。スカニアは走りますけどキングに比べたら物足りない気がします。現在の排ガス規制では仕方のないことなんでしょうけどスカニアで峠はいやですね。うちにそんな路線はありませんけどね(笑)」

意外と好きな運転士が多い西工ボデー

 以前は国産車でもボデーが異なると全く違うバスで、乗客としても選ぶ楽しみがあったのだが、運転士の立場からはどうなのだろうか。運転士とヲタ話をしているとこんな声が漏れてきた。

意外にも西工好きの運転士は多い?

 「今ではもう古い車体になってしまいましたけど、私は意外と好きでしたよ、西工って。無骨すぎて野暮ったい印象はありましたけど、変な樹脂は使わずに鉄板多様でカッチリしてましたよ」「具体的にどのあたりがですか?車体の鉄板ですか?」

 「いやいや、運転席まわりですよ。例えばココ(と、右側の操作盤付近をポンポン叩く)あたりは西工車は総鉄板で壊れなさそうでしたからね。樹脂形成の技術が未熟だったのかもしれませんし、鉄板を組んだ方が安上がりだったのかどうかはわかりませんが、扱う側からすればデザインよりも壊れないことが一番ですから。今だから言えますけど富士重工のは結構壊れましたねぇ(笑)」

 「ただし日産ディーゼル車だったので、そこが弱点でしたかね。本家の西鉄さんでは全メーカーあったようですけど、ウチには日産ディーゼルしかなかったものですから(笑)」

最近の多発する事故については……

 2022年はバスの事故が目立ってしまった残念な年だった。そんな話題に話が行くと、ついつい本音が。

 「事故にもいろいろとありまして、どんな事故もあってはならないことですけどね。ただ運転士にはどうすることもできなかった不可抗力的な事故は別としても、明らかに運転技術の未熟さで起こった事故は我々でもわかりますよ」「例えばどんな事故でしょうか?」

教習と実際の道路では異なる…

 「峠での横転事故とかありましたよね? あれなんか最たるものではないですかね。車両の特性を知ってか知らずか下り坂をフットブレーキで下ってしまったのはまずかったです」「実際にはどのように操作するのですか?」

 「もちろんエンジンブレーキとリターダを使うのですが、それだけでは乗り心地が悪くなるんですよね。ですから勾配とスピードとギアとの関係を瞬時に判断してずっと低速ギアで降りるのではなく、エンジン回転数を読みながらシフトアップもこまめに駆使して速度と乗り心地を調整します」

 「そのタイミングは車重と道路形状により異なりますので、やはりよく知っておかなければ両立は難しいのかもしれません。貸切車で通ったことのない道だと、乗り心地を犠牲にしてもエンブレとリターダを使い続けて降りるべきだったのかもしれませんね」

香港を走る路線バスはボルボ社のダブルデッカーも!

 「運転士の未熟さもそうですが、そのコースで未経験の運転士を配置してしまう会社にも問題があります」「しかし、そんなことは会社も百も承知なのではないですか?」

 「そうなんですよ。あくまでも一般論ですが、通常だとそのコースを熟知した運転士を行かせますけど、たまたま前日のお酒が残ってアルコール検知に引っ掛かったとか」

 「また今の時代ですとコロナに感染しないまでも熱があるとか咳が出るとか、そんな理由で急きょ代替運転士を探した結果、未熟な運転士が割り当てられてしまうことはあり得ますよね。さすがにその状態で乗務させる方が問題ですから」

運転士だって聞いてほしい話はある?

 運転士によもやま話を聞いてきたが、あくまでも語ってくれた個人の意見でこれが総意ではないことはお断りしておく。普段は寡黙にハンドルを握り続ける運転士だが、口を開くと意外と多くの話が飛び出してきて時間切れということもあった。

 2022年に聞いてきたものだけでも、まだまだ多くのヲタ話や運転士しか知らない話もあるので、折を見てお届けしたい。

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