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 バスは一般的に乗用車とは異なり搭載される機器が多いため、それぞれの専門分野の会社が作っている。乗客にかかわりの深い装置はどうなっているのか、取材したのでいくつかの分野に分けて紹介する。今回はこんなところにも! という隠れたところや乗客からは見えにくい場所で重要な機器を紹介する。

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
取材協力:富士急行・フジエクスプレス・富士急バス・レゾナントシステムズ


監視カメラは法律で決められたもの+α

 今回もレゾナント・システムズというバスの機器を開発・製造する専門メーカーを取材した内容だ。行先表示器についての特集は関連記事にあるので、画像ギャラリーと合わせてご覧いただきたい。

 今回も富士急行グループのフジエクスプレスが保有するダブルデッカー車で取材をした。実写でどんなところに、どんな装置が付いているのかを紹介する。

 まずは監視カメラだ。いたるところに設置されていて運転席から切り替えて、または一覧表示にして確認することができる。いわゆるドライブレコーダーの他にも、運転士が直接目視できない2階席にも多くのカメラが設置されている。

車内の監視カメラ

 車外にも防水の超小型カメラが埋め込まれていて、安全確認のために活用されている。1階席トイレ前の中ドア方向にもカメラが付いているが、これは法律の要請によるもので、監視カメラというよりも必要なミラーの代替として取り付けられている。

車外の安全確認カメラはミラーの補助として使用する

 路線バスであれば中ドアの上には円盤状の凸ミラーが設置され、運転席から後方確認用ミラーを介して中ドア付近の様子を確認することができる。しかしダブルデッカー車は運転席からは後方の一部は見えるが1階席の座席が視界を遮るので中ドア付近の確認はできない。

 できないと車検に通らないので、代替措置として認められた監視カメラで中ドアでの乗降の様子を確認しているのだ。トラブルや犯罪抑止のために「見せる監視」も必要だが、安全確認用のカメラはなるべく威圧感がないように工夫され、超小型でバス走行時の振動や風雨に耐える仕様だ。

 そしてこれらの監視カメラはメーカーやディーラーのオプションではなく、事業者の要求と仕様により決定される。後付けが可能であれば、納車前に施工することもできるが、電気配線やボディの加工が必要な事例が多く、発注があれば同社ではバスメーカーに部品を送り、製造段階で取り付けている。

運転席モニターは分割表示も可能

 そこで不思議なのは、スカニア・バンホールは輸入車だということだ。製造はベルギーで行われている。どうするのか聞いてみると、答えは簡単。ベルギーに部品を送って取り付けてもらうとのこと。

 一度、日本を出た同社のシステムがベルギーで取り付けられて、完成車が海を渡って再び日本に上陸するわけだ。長い旅路を経て乗客の前に姿を現す。

なんとトランクにまでハイテクシステムが潜んでいた!

 一般的にダブルデッカー車のトランク容量は小さい。ボディーを目いっぱい客室に割り当てているので、トランクに割ける容積は大きくはない。トランクに荷物を入れるのは事業者により異なるが、運転士やターミナルスタッフの場合もあれば、乗客がセルフサービスで入れる場合もある。

スカニア・バンホールのトランクはスルー構造

 トランクを開扉したときに注意喚起のアナウンスがトランクルームの中で流れる場合は同社のシステムであることが多い。運転士にしても乗客にしても、収納や走行時の揺れに対する注意や免責を注意喚起する。

壁面上部に注意喚起放送システムが取り付けられている

 フジエクスプレスの場合は外国人の利用も多いことから、多言語で注意喚起が流れる。このような預託手荷物に対する損害は免責なのが普通だが、そうならないように積み込み時に乗務員と乗客双方に注意を促すアナウンスは日本的な親切なのかもしれない。

運転席まわりには機能に徹した隠れた業務用機器!

 運転士は自動放送装置の操作を行い乗客に対する案内を行うが、その装置もレゾナントが担当している。コンピューターで音声そのものを生成して流す(音声合成)か、あらかじめさまざまなフレーズをナレーターに録音してもらいそのデータをつなぎ合わせて流す(合成音声)かの二択である場合が多い。

放送装置の操作盤

 ほとんどの案内は自動放送で事足りるが、運転士が補足の案内や挨拶を肉声で行うことも多い。当然ながらマイクを使用して増幅回路(アンプ)に送り、車内放送するわけだが、そのマイクも有線式と無線式が選べるようになっている。

運転士放送用の接続部

 取材したフジエクスプレスのスカニアバンホールには両方が設置されていた。通常の車内放送時にはプラグをさして有線式で流せばよいのだが、無線式は乗務員が降車して改札を行っている場合や、荷物の積み込みや積み下ろしを行っている際に役に立つ。運転士が運転席にいなくても案内放送ができる仕組みが備わっているわけだ。

実はマイクは一般でも購入可能!

 これらの運転士が使用するマイクは業界内では「ワンマンマイク」というが、実はこれ、ネットショップで本物を売っている。マニアならば新品を手に入れたいところだが、同社のネットショップで様々なタイプのマイクが購入可能だ。

ワンマンマイクとUSB充電ソケットは売られているので愛車にいかが?

 もちろん業務用でバス専用の機器に接続して使用するのを前提に作られているため、バスファンがオンラインミーティングでPC接続しようとしてもそのままでは使用できないし、3.5mmプラグではなく6.3mmであることも使用環境を考えれば当然なのかもしれない。

 しかし多少の知識と技術があれば中身はエレクトリックコンデンサーマイクなので、動作電圧とマイクのインピーダンス(抵抗値)を確認し、配線とプラグの極性を整合させれば3.5mmプラグに付け替えて、あるいは変換アダプターを用いてPC接続することは可能だろう。お好きな方は自己責任で本物をお試しいただきたい。

これらの装置はすべて安全と快適のために!

 同社のシステムは、安全なバスの運行と運転士の負担を軽減し、もって乗客が快適なバス旅を満喫できるようにという想いで製作されている。

バス車外とのインターホンもレゾナントの製品!

 もちろんバス車内のみならず、ターミナルでの案内装置やモバイル定期券のシステムも手掛けているので、バスに乗るときにはいつの間にか同社のシステムの中で過ごしているのかもしれない。

投稿 バスに隠された秘密の装置を大暴露!! こんなところにこんなモノが!?自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。