2015年に採択されたパリ協定を境に、世界が脱炭素社会の実現へ動き出している。日本でも2020年の施政方針演説で2050年カーボンニュートラル実現を宣言し、翌年には「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」旨を発表した。
電動車に対応するため、ショッピングセンターや道の駅などに急速充電設備が目立ってきた。しかし、BEVを販売する各ディーラーの充電設備は、十分とは言えない状況だ。本稿では、ディーラーにおける充電設備の今をお伝えしていく。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA、NISSAN、MITSUBISHI、ベストカー編集部
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■リードするのは三菱と日産! 追いかけるのはどのメーカーか
量産モデルにBEV(電気自動車)を早々に取り入れた日産と三菱では、ディーラーへの急速充電設備の拡充も十分だ。リーフやアウトランダーPHEV(プラグインハイブリッド)を販売の中心に据えていただけあって、多くの店に急速充電設備が整っている。
この設備は、他メーカーのBEVに乗るオーナーにとっても重要なライフラインとなっていて、日産と三菱にある急速充電設備の周りには、欧州メーカーのBEVが並び、充電している姿を見かけることも多い。
国産自動車ディーラーで、日産と三菱を追いかけるのはレクサスだ。2020年10月にUX300eを発表・販売したと同時に、全国のレクサス販売店へ急速充電設備を次々に配置した。BEVオーナーが困らない販売環境づくりを進めている。
レクサスにおいては、2030年までにBEVのフルラインナップを実現すると明言しており、メーカー・ディーラーともに電動化への準備は万端と言えるだろう。
日産・三菱・レクサスに関しては、充電に十分な投資を行い、ユーザーに不便の無い環境を提供するという意識が見える。しかし、その他の国産ディーラーでは、BEVへの対応遅れが大きく見えてしまう。
■MX-30EVのあるマツダの充電事情は厳しい
年々BEVの選択肢は増えつつあり、かつては輸入車一辺倒だったBEVも、国産メーカーが発表・発売し、身近なものになりつつある。
ただし、「売るのは良いが充電は?」と目を向けた時に、まだまだ十分な充電設備が整っているとは言い難い。
MX-30EVを扱うマツダでは、本社のある広島県、そして首都圏では少しずつ急速充電設備を備えるディーラーが増えてきたものの、充電設備の全体的な普及率はまだまだ低い。
これではBEVを売っているものの、充電は他人事と見えなくもない。マツダディーラーのBEV対応は、まだ始まったばかりだ。
■トヨタには充電設備がたくさんある! しかし普通充電では利用価値が低い
トヨタは、プリウスPHVを2012年1月に登場させ、同時に全国のトヨタディーラーへ普通充電設備を普及させている。G-Stationと言われる充電スタンドを2010年代初頭に多数設置していったのは良いのだが、設置後のアップデートが進んでいない。
お出かけ途中に利用したいのは急速充電だ。しかしトヨタにある多くのG-Stationは古く、普通充電にしか対応していないものが多い。
2025年までに、全国にある約5,000店のトヨタ販売店に急速充電設備を導入するという計画が進んでいるようだが、コロナの影響を大きく受けるディーラーでは、対応も難しさを増すだろう。
新車が納車できず、採算の厳しい状況が続くディーラー側が、どのようにして身銭を切り、急速充電設備導入を進めるのか、その道筋を示してほしい。
販売現場への良い意識改革になると思われたbZ4Xは、KINTO専用販売となった。ディーラーで直接販売を行わないBEVになってしまったことで、トヨタディーラーの電動化に対する関心はまだまだ薄いままである。
国やメーカーは、BEVを普及させると意気込んでいるが、ユーザーに最も近いディーラーでは、BEVを強く意識できない状況だ。現場の意識が変わるのには、まだ時間がかかる。
トヨタに関して言えば、bZシリーズのKINTO専用を解き、ディーラー販売を解禁するのが、最も効果的にBEVへ目を向ける方法になると筆者は思う。すると、レクサス同様に急速充電設備への投資が一気に進み、全国に多数あるトヨタディーラーが、充電インフラの拡充に一役買ってくれるはず。
まだまだ、充電難民になることが多いBEVユーザー。BEVを売るなら、利用しやすい環境を整えるのもまた、自動車産業の役目である。販売店の数からいって、そのきっかけを作り出せるのはトヨタだ。
BEVの普及には、インフラ拡充と販売を十分リンクさせることが重要。故に、BEV社会の構築は、ディーラーの力なくしては進んでいかない。
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