毎年、冬になると思わぬ大雪で高速道路が通行止めになり、クルマが立ち往生するニュースを耳にする。そんな不運に遭遇してしまった人は本当にお気の毒だが、帰省やレジャーで雪国を走る人にとっては他人事ではない。
もし自分のクルマが大雪の中立ち往生してしまったらどうなるのか。しばしば話題になる電気自動車のバッテリーはどのくらいもつのか。こんな疑問についてJAF(日本自動車連盟)がテストを行っている。極寒の地での対応は命にも関わるだけに、その内容を紹介しよう。
文/ベストカーWeb編集部、写真/JAF、AdobeStock(トップ画像=Takahiro@AdobeStock)
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エンジン車はマフラーの雪詰まりに注意!
まずは雪に埋もれると車内の空気はどうなるのかというテスト。山形県の豪雪地帯にエンジン車と電気自動車を1台ずつ持ち込み、エアダクト(車内への空気取り込み口)やマフラー周辺を雪で埋め、さらにクルマの周囲を窓近くまで覆って、車内の空気の状況をモニターしてみた。
まずエンジン車だが、新鮮な空気が取り込めない中でマフラーから排気ガスが吐き出され続けるため、車内に有害な一酸化炭素が還流してしまうことになった。
その還流の速度が予想以上に早く、試験開始後1分24秒で警報値の50ppmに到達。この値は8時間以上その場に滞在すると人体に悪影響を及ぼすレベルだという。その後も一酸化炭素は上昇を続け、おおむね18~50分で測定値上限となる300ppmを記録した。激しい頭痛や嘔吐などに見舞われるレベルだ。
同時に計測した酸素濃度は逆に減少の一途をたどった。空気中の酸素は普通21%程度だが、これが13分14秒で安全限界の18%まで低下、さらに35分後には13.2%まで低下した。意識が朦朧となり、皮膚が青みを帯びるチアノーゼを発症するレベルだ。
では電気自動車はどうだろう。こちらはエンジンがないので、車内の一酸化炭素や酸素濃度に変化はなかった。乗員1名が乗って呼気による二酸化炭素の変化も調べたが、人体に影響があるという0.1%を超えず、体調変化も見られなかったという。
この結果から分かることだが、エンジン車に乗っていて立ち往生した際は、防寒と同時に換気に注意する必要があるということだ。特に雪の降り方が激しい場合は、積もった雪でマフラーがふさがれないように定期的な雪掻きを行う必要があることを覚えておきたい。
いっぽうの電気自動車は、一酸化炭素中毒については安心なものの、そのままでは周囲に雪が積もってドアが開かなくなる恐れがある。こちらもクルマ周りの状況には気を配る必要はありそうだ。
EVはエアコン次第でバッテリーの減り方が変わる
次は電気自動車の「電欠」について。ガソリン車の場合、アイドリングでは1時間あたり0.8~1リットル程度のガソリンを使うというが(普通車/エアコンオフの場合)、電気自動車の場合は、どのくらいでバッテリーが空になるのだろう。
JAFでは前半のテストと同じ状況に4台の満充電した日産リーフを持ち込み、条件を変えてバッテリーの消費を調べている。条件設定は以下の通り。外気温はマイナス8.1度だった。
1)オートエアコンを25度に設定してつけっぱなし
2)エアコンは使わず電源ソケットに電気毛布を繋ぐ
3)エアコンは使わずシートヒーターを使用、併せて電源ソケットからフットヒーターを使用
4)毛布を身体に巻き、寒く感じたらエアコンON、寒くなくなったらOFF
テスト結果だが、エアコンの使用がバッテリー残量に大きな影響を及ぼすこととなった。
1)のエアコン常時使用がもっとも電力消費が大きく、テスト開始から8時間半でバッテリー残量が10%となりテスト終了となった。4)の「寒くなったらエアコンON」がそれに続き、13時間のテストには耐えられたものの、バッテリー残量は25%程度と心細いものだった。
残る2)と3)についてはバッテリー消費がおだやかで、13時間経過後も50%以上の余裕を残していた。シートや足裏を直接温める局所暖房はバッテリー消費が少ないため、これと毛布や断熱シートなどを組み合わせて防寒対策とするのがベストと感じた。
EVに乗っている人は、車内の空気全体を温めるエアコンが非常に大きなエネルギーを使うことは覚えておいたほうがいいだろう。
とはいえエアコンを使わなかったスタッフは毛布や暖房器具でカバーできない部分の辛さを訴えており(窓ガラスは凍り付いてしまうようだ)、防寒では頭や肌をいかに露出させないかが重要だとも感じた。
テストの結果をまとめると、エンジン車に乗っている人は、マフラーの雪詰まりによる有害ガスに注意すること。EVに乗っている人は、エアコンに頼らない防寒対策を考えることが重要のようだ。
雪国に出かける際は燃料やバッテリーを満タンにして、荷室には除雪用スコップと防寒グッズを積んでおくのがいいだろう。
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