厚生労働省は自動車運転者の働き方の基準を定めた「改善基準告示」を改正するとともに、トラック運転者のための特別チーム「荷主特別対策チーム」を発足した。
長時間労働の要因が荷主側にあると疑われる場合に、国交省とも協力して荷主に要請・働きかけを行なうとした。「2024年問題」が目前に迫るなか、厚労省は荷主対策に本気だ。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
改善基準告示を正式に改正
厚生労働省は2022年12月4日、「改善基準告示」(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準/平成元年労働省告示第7号)を改正した。
改善基準告示はトラック、バス、タクシーなど業務で自動車を運転しているドライバーの働き方の基準を定めたもの。2018年に成立した働き方改革関連法を受けて見直しが進められ、2022年9月に厚労省が見直し案を承認していた。
正式に改善基準告示が改正されたことで、スケジュール通り2024年(令和6年)の4月1日からその適用が開始される。なお、2024年4月から従来通りの働き方が不可能になることで生じる諸問題は「物流の2024年問題」と呼ばれ、トラック運送業の大きなトピックとなっている。
令和6年度から自動車運転者の時間外労働に年960時間の上限規制が適用されるほか、今回改正された改善基準告示によりトラックドライバーの年間の拘束時間は、現行の3516時間から3300時間に短縮する(労使協定による例外で最大3400時間)。
また、1か月の拘束時間は「原則293時間・最大320時間」から「原則284時間・最大310時間」に、「継続8時間」となっている一日の休息期間は「継続11時間を基本とし9時間を下回らない」に改正される。
連続運転時間は現行の「4時間以内」を維持するいっぽう、SA・PAに駐車できないなどやむを得ない場合に「4時間30分まで延長可能」とする例外が設けられた。
こうした改正に加えて厚労省は「荷主特別対策チーム」を編成し、各都道府県の労働局にトラックドライバーのための特別チームが発足した。
トラックドライバーのための特別チーム
改善基準告示の改正に合わせて編成された「荷主特別対策チーム」は、トラックドライバーの長時間労働の是正のため、発着荷主等に対して長時間の荷待ちを発生させないことなどについての要請と、改善に向けた働きかけを行うことを目的とする。
道路貨物運送業は、他の業種に比べて労働時間が長いという実態があり、過労死等の労災支給決定件数が最も多い業種でもある。
このため、長時間労働の是正などの働き方改革を一層積極的に進める必要があるのだが、取引慣行など個々の事業主の努力だけでは見直すことが困難なものも多く、荷主側の協力が欠かせない。
厚労省では、改正された改善基準告示を広く周知するほか、荷主特別対策チームによって発着荷主への要請と働きかけなどの取組を強化し、トラックドライバーが健康に働くことができる環境整備を進めていく。
また、特別チームの発足とともに「長時間の荷待ちに関する情報メール窓口」を厚労省に新たに設置した。窓口では荷主や元請事業者の都合による荷待ちに関する情報を受け付けている。荷主側への監視を強化するため匿名での情報提供も可能だ。
寄せられた情報は厚労省による「要請」のほか、国土交通省とも共有し、法に基づく「働きかけ」などに活用する。
荷主特別対策チームの概要は?
都道府県労働局に荷主特別対策担当官を新たに任命し、担当官を中心にトラックドライバーの労働条件の確保・改善に知見を有する都道府県労働局・労働基準監督署のメンバーにより荷主特別対策チームを編成する。
労働基準監督署は発着荷主等に対して「長時間の恒常的な荷待ちの改善に努めること」「運送業務の発注担当者に改善基準告示を周知し、トラック運転者がこれを遵守できるよう協力すること」などを要請する。
いっぽう都道府県労働局は長時間の荷待ちなどの改善等に向け発着荷主等に働きかけを行なう。また、労働基準監督署から要請された事項に発着荷主が積極的に取り組めるよう、荷待ち時間等の改善に係る好事例の紹介などアドバイスも行なう。
先述の通り荷主特別対策チームの発足に合わせて、長時間の荷待ちを発生させている荷主・元請事業者に関する情報を収集するためのメール窓口が厚労省に新設された。
この窓口は荷主側に長時間・過重労働の要因があると疑われる場合に、労働基準法と改善基準告示に基づきその情報を受け付け、要請・働きかけに活用するもので、情報に関する照会や相談には答えられないとしている。
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