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 2018年に廃線となったJR西日本の三江線の後を引き継いだ鉄道代替バス。鉄道に比べ、あまりにも利用が難しくなりすぎて誰もがサジを投げるとウワサされるこのバス路線群、実際のところ、ちゃんと乗って目的地まで行けるのだろうか? 現地へ赴いた。

文・写真:中山修一

代替バスのスタート地点は江津駅前だ!!

石見交通 江津川本線に使われる中型路線車

 日本海の海岸線を沿うように敷かれているJR山陰本線の、地図で見て島根県の中間地点より少し左に位置する江津(ごうつ)が、JR三江線の始点だった場所で、代替バスのスタート地点でもある。

 2022年12月現在、島根県のバス事業者・石見交通が江津駅前〜石見川本間の約35km分を「江津川本線」の路線名で代替バスを運行している。

 訪問当日は、島根県左寄りの山口県との県境に近い日本海側の街・益田に前泊し、益田駅10:40発の列車で江津まで向かった。江津駅前12:34発の石見川本行きがあり、ちょうど良い時間にアクセスしようという算段だ。

 また、遅延しやすいため少々リスキーであるが、東京方面から「サンライズ出雲」を使って出雲市で普通列車に乗り換えて江津に向かっても、その日のうちに同じ12:34発に乗れる。

 江津には11:52に到着した。青春18きっぷのシーズンであったが、18きっぷは1日あたりの“ノルマ”がある故、ここで乗りバスも!! という向きはさすがにゼロだった。

病院からやって来る江津川本線

 石見交通 江津川本線のバス停は駅舎を出てすぐ右へ行った端に置かれている。駅前が最初の出発点ではなく、ローカル路線バスによくある病院が始点になっているのは江津川本線も同様だった。

 目的のバスの前に、12:29発の「嘉戸塩田口」行きが同じ停留所から出発する。こちらも石見交通の運行でバスの車種も似ているので、乗り間違えには注意したい。

 12:34、時刻通りに「川平 川戸 石見川本」の表示を掲げた石見交通の中型路線車が入ってきた。2016年にモデルチェンジした、いすゞエルガミオだ。

 後ろ側のドアが開く。距離によって運賃が変わる、後乗り・前降りの後払い方式。交通系ICカードの読取機が付いていたが現在は準備中で、2023年3月頃のサービス開始を予定しているとのこと。ここはセオリー通り整理券を取る。

 5名ほどお客を乗せて、江津駅前を出発。駅前を右折して山陰本線の隣に架かる全長約400mの江川橋を渡り、更に方向転換して国道261号線に入り、一路内陸部へと進んでいく。

江の川沿いに敷かれた国道261号線をひた走る

川沿いを走る風光明媚な路線

 江の川に沿って敷かれた国道261号線が江津川本線のメインルートとなる。基本的には進行方向右側に江の川を絡めた景色が広がる。

 JR三江線の線路は、国道とは川を挟んだ反対側に敷かれていた。廃線が比較的最近のためか、それほど片付けられていない様子で、あちこちに線路跡やガーダー橋などが残っており、バスの車窓からもよく観察できる。

 時々バスが橋を渡り、線路が敷かれていた対岸まで移動することがある。さすが鉄道代替バスというだけあって、元々駅があった場所に立ち寄る経路になっているのだ。

 それなりに大きめの駅跡には駅舎が現役当時と変わらない様子で建っており、立入はできないがホームもそのままにバスの停留所として機能している。

 途中の停留所で乗客が一人また一人と降りていき、江津駅前から16kmくらい進んだ川戸に到着する頃には、とうとう誰もいなくなった。

三江線の川戸駅跡にしばらく停車

 川戸では時間調整とトイレ休憩を兼ねて数分間停車するようで、運転手さんは何も言わず率先して駅跡併設のお手洗いへ向かっていった。

 バスはメインルートと対岸の駅跡立ち寄りを繰り返しながら順調に進んでいく。幅が広く、山々の間を縫うようにして流れる曲がりくねった江の川は眺めていて飽きがこない。

バス利用だと見てるだけ? 魅惑の2大施設

 江津駅前から28km地点に、最近すっかりメジャーどころに昇格した、うどんとラーメンのレトロ自販機が置かれたコインレストランが営業している。

 約1km離れた「鹿賀」がコインレストランの最寄りバス停だ。ちょっと立ち寄ってズルズルやってきたいところであるが、バスの本数が少ないのと、目的地の石見川本まで約7kmと、歩くには微妙に遠い(おまけに極寒)。

 目の前を通過するもののバスで乗り付けての利用は工夫が要りそうだ。

 さらに数km先には道の駅があり、こちらも大変魅力を感じる施設である。ただし今回は諦めるしかない。道の駅から石見川本まで約4kmなので、もう少し暖かい時期なら寄れるかも……。

以前と変わらない様子の終点

 江津駅前を発って1時間8分、13:42にバスは石見川本に到着した。元々鉄道駅があった石見川本駅跡がそのままバス停に使われている。江津からの運賃は1,120円、現金で支払って前のドアから下車する。

 石見川本の駅舎は鉄道時代から殆ど変わらないようで、駅舎を前から見て左側に銀行が入り、右側がバスの待合所になっている。跨線橋が撤去された以外は鉄道のホームやレールも残されていて郷愁を感じさせる。

バス発着場と銀行になった石見川本駅跡

 石見交通 江津川本線はここで終了。とはいえ三江線代替バスとしてはまだ全体の1/3程度しか進んでおらず、ここから最深部へと入り込みクリア条件が厳しくなってくる。次の大和観光バス川本美郷線の便が来るまで約2時間28分のフリータイムだ。

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