2022年12月31日に開幕した第45回『ダカールラリー』は1月4日、ステージ4までが終了した。2022年大会に続く大会連覇を狙うTOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、サウジアラビアで開催されている今大会に向けて改良を施した『GRダカールハイラックスT1+』の3台体制で参戦している。
同チームのエースでディフェンディングチャンピオンであるナッサー・アル-アティヤ/マシュー・ボーメル組200号車は、3日(火)に行われたステージ3を終えた時点で総合首位に浮上。4日(水)も首位のポジションを守った。
チームメイトのヘンク・ラテガン/ブレット・カミングス組217号車は序盤のステージ4を終えた時点で総合5番手につけ、同じく僚友のジニエル・ド・ヴィリエール/デニス・マーフィ組205号車が僅差の7番手で続いている。
西部のシーキャンプで迎えたラリー開幕日から、ハイルに到着したステージ4までの各日のラリーレポートは以下のとおりだ。
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【プロローグ】
ラリーがスタートする前日の12月31日(土)、45年にわたるダカールラリー史上最大のビバーク地が設けられたシーキャンプで、GRダカールハイラックスT1+を含む4輪車、2輪のオートバイ、4輪バギー、トラックなど総計300台以上によるスタートセレモニーが行われたあと、周辺に特設されたコースで、翌日ステージ1のスタート順を決定するプロローグランが行われました。
13kmにわたるこのコースで、アル-アティヤ/ボーメル組は4番手、ラテガン/カミングス組が10番手、ド・ヴィリエール/マーフィ組が13番手タイムをマークしました。
【ステージ1】
1月1日(日)のステージ1は、シーキャンプをスタートし、南側の海岸線から山間地を巡るルートで、シーキャンプへとふたたび戻ってくる、SS距離367km、総走行距離602.56kmの、岩場から砂丘までバラエティに富んだチャレンジングなステージでした。
プロローグランで4番手につけたアル-アティヤ/ボーメル組は、7番手でスタート。序盤は安定したペースで走行を続けるも、終盤、ナビゲーションの難しいセクションでタイムをロスし、首位と7分17秒差の6番手でステージ1を終えました。
昨年のダカールラリー2022で2度のステージ優勝を果たしたラテガン/カミングス組は、プロローグランを10番手で終えたことで、ステージ1は最初のスタート。コースを切り拓いていく役割となったラテガン/カミングス組は、スタートしてまもなく低木に接触してフロントウインドウを破損。視界が制限されたままでの走行を強いられました。
その後、スタートから29km地点でパンクを喫したため、このパンク修理のタイミングで割れたフロントウインドウを取り去り、ドライバーとコ・ドライバーはそれぞれゴーグルを装着して、残りの367kmに渡るロングステージを走り抜くことに。しかし、ラテガン/カミングス組はこのアクシデントをものともしない走りで、首位から11分45秒遅れの総合11番手という好タイムでステージ1をフィニッシュしました。
ド・ヴィリエール/マーフィ組はステージ序盤にパンクに見舞われ、限られたスペアタイヤでの岩場越えを強いられるとともに、難しいナビゲーションにも苦しみ、トップから18分31秒差の18番手でステージ1を終えました。
【ステージ2】
1月2日(月)のステージ2は、シーキャンプからアル=ウラーへと向かう、SS距離430km、総走行距離589.07km。鋭利な岩場のコースで、多くの参加者を苦しめる難コースでしたが、アル-アティヤ/ボーメル組は豊富な経験を活かしてペースをコントロールし、ステージウィン。トップと2分12秒差の総合2番手へと浮上しました。
一方で、ド・ヴィリエール/マーフィ組はこの日も序盤から2度のパンクに見舞われ、スペアタイヤ無しで後半の200kmを走ることとなりました。これでペースを落とさざるを得なかったド・ヴィリエール/マーフィ組でしたが、こちらもベテランらしい走りを見せステージ6番手でアル=ウラーへと到着。総合5番手に順位を上げました。
ラテガン/カミングス組にとっては厳しい一日となってしまいました。序盤に2回、後半にも1回のパンクに見舞われ、2本しかないスペアタイヤを使い切ってしまいました。同じGRダカールハイラックスT1+を駆るプライベーター、ルーカス・モラエスから新品タイヤを譲り受け、トップと33分12秒差でフィニッシュ。ライバル勢はさらに厳しい戦いを強いられていたこともあり、総合10番手に浮上しました(その後20分のペナルティを科され総合18番手へ後退)。
【ステージ3】
1月3日(火)のステージ3は、アル=ウラーからハイルへと向かう、SS距離447km、総走行距離669.15kmの、サウジアラビア北部山岳地帯を舞台とするコース。石の多い路面で、多くの参加者がパンクに悩まされました。また、この日、コース周辺は豪雨に見舞われ、主催者によりステージ3は短縮終了されることとなりました。
このステージ3では、前日苦戦を強いられたラテガン/カミングス組が好走を見せ、トップから僅か3分2秒遅れのステージ2番手でフィニッシュ。総合順位を11番手へと上げました。
そして、前日総合2番手へと浮上したアル-アティヤ/ボーメル組は、序盤2度のパンクに見舞われ、スペアタイヤ無しの状況でペースを落とすこととなりましたが、それでもトップと20分58秒差の13番手でフィニッシュし、ライバルがアクシデントでタイムを失ったこともあり、総合首位に浮上しました。
ド・ヴィリエール/マーフィ組も序盤に2度のパンクに見舞われながら着実な走りを見せましたが、ステージ23番手、総合では7番手となりました。
【ステージ4】
1月4日(水)のステージ4は、ハイルを起点としハイルへと戻る、SS距離425km、総走行距離574.01kmのループコース。前日総合首位に立ったアル-アティヤ/ボーメル組は、この日も1度のパンク以外はノートラブルの好走を見せ、トップから2分6秒遅れの4番手でフィニッシュ。プライベーター参戦のGRダカールハイラックスT1+で2番手につけ総合首位を争う、ヤジード・アル・ラジとの差を約5分広げることに成功しました。
前日ステージ2番手フィニッシュを果たしたラテガン/カミングス組はこの日2番手でのスタートだったため、ルートを見出すのに苦戦することとなりましたが、トップから7分23秒遅れの6番手でフィニッシュ。ステージ1で20分のペナルティを課されながらも、総合5番手へと浮上しました。ラテガン/カミングス組は翌日のステージ5を6番手と好位置からスタートすることになります。
ド・ヴィリエール/マーフィ組もこのステージ4ではクリーンな走りを見せました。27番手と後方からのスタートとなったため、序盤は濡れて荒れた砂のステージに苦しみましたが、この難コンディションをものともせず、跳ねのける走りでトップから16分11秒遅れの9番手でフィニッシュ(その後2分のペナルティを科されトップから18分11秒差へ修正)。ステージ5は9番手スタートと好位置を得ることとなりました。
この結果、ド・ヴィリエール/マーフィ組は首位から48秒13秒差の総合7番手をキープ。前を行く6番手のプライベーターGRダカールハイラックスT1+のルーカス・モラエスとは3分弱の差、その前の5番手ラテガン/カミングス組はモラエスと僅か2秒差という僅差で、トップ5争いが繰り広げられています。
翌日のステージ5も、寒波と豪雨の中で1月3日に到着したハイルを起点としたループコースになります。その後南下してサウジアラビアの首都リヤドでの休息日を挟み、エンプティ・クォーター(空白地帯)と呼ばれる砂漠での戦いを経て、1月15日(日)にサウジアラビア東海岸の都市ダンマームでフィニッシュを迎えます。
■ダカールラリー2023 ステージ4終了時点の総合結果
総合順位 | ドライバー/コ・ドライバー | 車両 | 首位との差 |
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首位 | #200 ナッサー・アル-アティヤ/マシュー・ボーメル | GRダカールハイラックスT1+ | ― |
5番手 | #217 ヘンク・ラテガン/ブレット・カミングス | GRダカールハイラックスT1+ | 0h45’25 |
7番手 | #205 ジニエル・ド・ヴィリエール/デニス・マーフィ | GRダカールハイラックスT1+ | 0h48’13 |
■ステージ4 終了時のコメント
●チーム代表 グリン・ホール
「ダカールでリードしている日は良い日だと言われるとおり、今日も我々にとって良い一日だった。ナッサーはトラブルもなく非常に安定した走りで、2番手との差を5分も広げて首位を守ってくれた。今日は何の文句もない。明日も期待している」
●ナッサー・アル-アティヤ(No.200)
「今日も楽な一日ではなく、非常に難しかった。しかし、そんな中でも1回のパンクを除いて、深刻なトラブルに見舞われることなくステージを走り切ることができたので満足している。今日は4番手フィニッシュということで、明日の良い位置からスタートできると思う。今のところ総合トップをキープしているので、ラリーの前半戦をコントロールするためにも、このポジションを守ることがとても重要だ」
●ジニエル・ド・ヴィリエール(No.205)
「午前中は濡れて重い砂路でとても苦労しましたが、全体的にはなかなか良い一日でした。比較的クリーンな一日で、GRダカールハイラックスT1+もずっと好調だった。そして、少なくともスタートポジションという点で順位を上げることができたので、明日は多少なりとも楽になるだろう」
●ヘンク・ラテガン(No.217)
「今日のステージは、序盤良い走行ラインを見出すのに苦戦し、最良のスタートとは言えなかった。砂丘での経験が浅いこともあったと思うが、ステファン(・ペテランセル/チーム・アウディスポーツ)に追いつかれてからは、彼をフォローする形でうまく走ることができた。道があるときは我々が前を行き、道がなくなると彼らが前になるという形で走っていたんだ。今日は多くのことを彼から学んだ。全体的に今日の結果には満足している」