F1レースディレクターのニールス・ヴィティヒは、2023年も引き続きグランプリでレースディレクターを務めるが、次世代のレースディレクターを育成するためのプログラム推進の責任者も務める予定だ。
ヴィティヒは、2021年のシーズン最終戦アブダビGPを巡る論争を受けて職務を退いたマイケル・マシの後を引き継いで、エドゥアルド・フレイタスと共にレースディレクターに就任した。当初の計画では、ヴィティヒはエドゥアルド・フレイタスと交代でレースディレクターを務めることになっていた。このポジションの責任は、ひとりの人物が対処するには大きすぎるものになったと考えられたためだ。
しかし、この体制には裁定に一貫性がないという不満が寄せられた。ジョージ・ラッセル(メルセデス)は、「次のレースに前戦のスチュワードが来て、特定の裁定について話をしたことは一度もない」と指摘している。
その結果、ヴィティヒは2022年シーズン後半にはフルタイムでレースディレクターを務め、2023年も引き続きその職務にあたる。しかしながら、ふたたび「ひとりの人物にすべてを負わせる」ことへの懸念がある。
FIAはマシの後任に適任者を見つけることの難しさについて言及していた。マシ自身は、2019年オーストラリアGPのわずか数日前に前任のチャーリー・ホワイティングが死亡したために、直前になってその職務を引き継いだのだった。
「難しい状況だった。チャーリー・ホワイティングというひとりの人物がすべての中心となるレースディレクターを長期間務めていたからだ」と、経験豊富なF1スチュワードのエマニュエル・ピロは『formulaPassion.it』に語った。
「ホワイティングが亡くなってからは、危機が続いている。彼の後任となるはずだったローレン・メキースは、フェラーリに引き抜かれた」
「誰もが知っているように、マシはポジションから外された。ニールス・ヴィティヒとエドゥアルド・フレイタスに任せるのが、可能な範囲で最善の選択だった」
「だが交代制は機能しなかった。もっと多くの人材をそろえておく必要がある。なぜならレースディレクターは現場でしか成長できないからだ。外部からレースディレクターを訓練することはできない」
FIAは、ヴィティヒが何らかの理由で仕事ができなくなった場合に備え、完全な“後継者プラン”を確かなものにしたいと考えている。これにより、新たなトレーニングと育成プログラムが実施される予定だ。F1のレースウイークにおけるコースアクティビティを運営できるように、選抜された人員の専門性と経験を必要なレベルに引き上げるものだ。
『The High Performance Programme for Officials』は、来月ジュネーブで2日間のイベントとして正式に開始される。世界中のモータースポーツカテゴリーから、8名のスチュワードと16名のレースディレクターが登録されている。F3レースディレクターのクラロ・ジーガン、F2レースディレクターのルイ・マルケス、またシルビア・ベロットのようなシニアスチュワードらの参加が報じられている。2月18、19日の初回のイベントと同様に、参加者は経験を積むためのカスタムプログラムに加わり、FIAのイベントで現職のシニアオフィシャルについて、業務を見学する。
FIAはまた、レースディレクターセミナーと、国際スチュワードプログラムを刷新し、毎年恒例のイベントから、参加者とのやり取りを向上するためのウェビナーシリーズへと移行させる。
「レースディレクターとスチュワードへの道筋が整備されているのを大変うれしく思う」とFIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、先週モンテカルロで語った。
「2月にFIA本部でトレーニングがある。その後には変化と進歩が見られるだろう」
ビン・スライエムは、ラリーの元コドライバーのロナン・モーガンが、新たにオフィシャルを育成するための全体的な“道筋”を担当すると明かした。
「ラリーのコドライバーは、ラリードライバーより体系的だと言えるだろう。彼らは非常に体系的で、分析的な人々だ」