クルマ購入時、車検時に加入または更新が義務付けられる自賠責保険。
近年、保険料は値下げ傾向だったが、政府は保険料の一部となっている賦課金を「事故被害者支援の強化」を名目に、2023年度から一台あたり最大150円値上げすると発表した。事故件数は減っているのに、本気か!?
※本稿は2022年12月のものです
文/片岡英明、写真/AdobeStock(メイン写真=BlueBeans@AdobeStock)、ベストカー編集部 ほか
初出/ベストカー2023年1月26日号
■事故は減っているのになぜ値上げ!?
クルマを買って公道を走るために強制的に加入が義務付けられているのが「自動車損害賠償責任保険」と呼ばれる自賠責保険だ。
保険料は2年連続で値下げしていたが、2022年6月に政府は自賠責保険の値上げを発表した。自動車のユーザーにとっては晴天の霹靂。なんで今、値上げするの、と怒るのは当然である。
日本の交通事故は毎年減り続け、死傷者数も減少してきた。
その理由は、衝突安全ボディに加え、21世紀になって運転支援の先進安全装備や衝突被害軽減ブレーキが新車に装備されるようになり、これが普及したからである。
事故が減っているのに、値上げ決定では筋が通らない。
値上げの理由は、自賠責保険の積立金が足りないからだ。
車検が切れたまま乗っている無車検車は、自賠責保険が切れているから事故を起こしても補償されない。
そこで被害者を救済するために、自賠責保険には積立金が含まれており、これを使って補償費に充てているのである。
だが、介護料がかさみ、積立金が底をついたから値上げすることにした、と財務省は言うのだ。
■解決のカギを握るのは財務省からの借入金返済!!
政府は窮状を訴えるが、待ってくれ。積立金が激減したのは、自賠責保険の積立金を国の一般会計に回してしまったからだろう。
1兆円を超す積立金が出ていったが、30年近く経った今も返還されたのは貸した額の半分程度だ。
残りは5000億円以上あるのだから、財務省は借りた積立金を速やかに返し、この返還金を使ってうまく運用していけば、自賠責保険を値上げしなくてもすむ。
また、20万台と言われている無車検車の摘発と罰則を併せて行えば、さらに効果的だろう。
※2022年12月16日、自賠責保険の保険料が2023年4月の契約分から平均で1割前後引き下げられる見通しとの情報が入った。賦課金の値上げは決定しているが、保険料が1割引き下げられれば、実質値下げとなる。今後の動きを注視したい。
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