もっと詳しく
かぶせ右折はアウト? セーフ?? 超危険な交差点のマナー違反

 交差点で、右折車が、対向するクルマが左折するタイミングで、対向車線に進入し右折していく、というシーンに遭遇することがあります。「かぶせ右折」とよばれる行為ですが、強引に入り込んでくるため、ブレーキをかけなければならないこともしばしばあり、イラっとしますよね。

 しかし、右折待ちの後続車にとっては、先頭の車が右折できるのに右折せず待たれるのも、イライラしますし、右折渋滞の原因となります。かぶせ右折は、マナーなのか、マナー違反なのか!?? かぶせ右折の実態と交通違反の可能性、安全な右折の方法について、ご紹介します。

文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:Adobe Stock_xiaosan
写真:Adobe Stock、写真AC

悲惨な事故も多い、右折車との事故

 2019年5月、滋賀県大津市で幼稚園児の列にクルマが突っ込んだという痛ましい事故がありました。T字路で、強引に右折しようとしたクルマが直進車と衝突、直進車が衝突の勢いでコントロールを失い、歩道を歩いていた園児の列に突っ込んだという事故でした。

対向車が左折するタイミング(スピードが落ちている)で対向車線に進入し右折する「かぶせ右折」。対向左折車の後続のクルマにとって、迷惑だし危険(画像/AdobeStock)
対向車が左折するタイミング(スピードが落ちている)で対向車線に進入し右折する「かぶせ右折」。対向左折車の後続のクルマにとって、迷惑だし危険(画像/AdobeStock)

 直進車や左折車のクルマの数が少なく、十分な車両間隔があれば、安全に右折できますが、クルマが多くて十分な車間がない場合は、右折する、しないかは、右折ドライバーの判断であり、また道路環境や交通事情にもよるので、危険なかぶせ右折やそれに起因する事故は、なかなか減らないのが実態です。

交差点では、直進車、左折車、右折車が混在。右折車は、「進むか、待つか」の判断を適切に行わなければならない(PHOTO:写真AC_kakkiko)
交差点では、直進車、左折車、右折車が混在。右折車は、「進むか、待つか」の判断を適切に行わなければならない(PHOTO:写真AC_kakkiko)

「法規違反」ではあるが、実質的には「マナー違反」

 道路交通法37条では、「車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、または左折しようとする車両等があるとき、当該車両の進行妨害をしてはならない」と定められています。交差点では、直進車や左折車が優先されるという、ごく当たりまえの内容です。

 これは、直進車や左折車の進行を妨げる進路妨害は、法規違反ですという抽象的な表現なので、危なかったと警察に訴えても、それが認められることはまずないでしょう。衝突して初めて右折車の違法性が認められるのではないでしょうか。ただ、事故となれば、法規的には右折車の方が悪いとはいえ、過失割合は相手側が100%悪いとはなりません。

 一般的に、交差点で直進車と右折車が衝突した場合の過失割合は20:80、左折車と右折車が衝突した場合は30:70が多いようです。直進車や左折車にも、進路状況を注意しながら衝突を回避する義務があるので、過失はゼロとはならないのです。また、左折車が直進車よりも過失割合が高いのは、左折車は交差点でスピードを落とすことが義務づけられており、その分事故が回避しやすいと考えられているからです。もちろん、この過失割合は一般論であり、状況によって変わってきます。

 以上のように、かぶせ右折は法規違反ではありますが、実質的にはマナー違反という方が的確ではないでしょうか。

かといって、慎重になりすぎるのもNG

 ただ、無理な右折は危険だからと、過剰に怖がったり、安全を重視し過ぎて、右折するチャンスを見逃すのは、後続車の渋滞につながります。右折矢印のある信号の交差点なら、矢印点灯中にある程度右折車は流れますが、ない場合は最悪1台か2台しか右折できないこともあります。そんな場面に出くわして、ストレス感じることもありますよね。

 安全な右折のチャンスがあるのに右折しないのは、流れに乗らずに一般路をゆっくり走行するのと同じで、「安全運転」というより、「独りよがりの運転」であり、スムーズな流れを阻害する原因となります。右折の後続車がいる場合は、渋滞を緩和するように、先頭車両はできるだけ多く右折車を右折させる気遣いも必要だと思います。

 また渋滞時には、状況は少しばかり異なり、交差点で直進車や左折車が進まず、右折するチャンスが生まれる場合があります。直進ドライバーが譲ってくれる意思表示をしてくれれば、注意しながら右折すればよいのですが、この場合は、止まっている直進車の陰から出てくるバイクや自転車、場合によってはクルマと衝突する「サンキュー事故」に注意しなければいけません。

右折のタイミングを逃すと、右折渋滞になる可能性があるので注意が必要(PHOTO:写真AC_自然体)
右折のタイミングを逃すと、右折渋滞になる可能性があるので注意が必要(PHOTO:写真AC_自然体)

対向車とその脇をすり抜けてくるバイク、そして横断歩道にも注意を

 運転免許を取って、初めて一般路を走行した際、右折にはかなり緊張したという人は多いことでしょう。右折には判断力と運転技量が求められますが、右折時に気を付けるべき点は、次の3点です。

・対向車が遠くにいる、または比較的近くでもスピードが遅く、完全に右折を終える(交差点を出る)まで対向車が到達しないと判断できること
・右折方向の横断歩道に歩行者や自転車がいないこと
・交差路の車線が複数ある場合、左折車が第1車線に入ると思い込んで、左折車の左折と同時に右側の車線(第2車線や第3車線)に無理して右折しないこと

 歩道には、自転車に乗ったままスピードを出して横断する自転車(一般的には横断歩道を自転車に乗って渡るのは、違反行為)もいるため、右折開始後に横断歩道者に気づいて手前で止まると、直進車の進路を塞ぐことになってしまいます。また、左折車の左折と同時に右折し、(右折した先の車線の)右側の車線に入ろうとするのは、左折車が第1車線に入るとは限らないので危険。道路交通法では、左折車は左側端に沿って徐行することになっていますが、このルールを忘れて守らない左折車も多いからです。

 対向の先頭車両だけでなく、全体の流れと、右折方向の横断歩道に留意しながら、途切れるチャンスが来たらいつでも発進できるようにスタンバイしておき、速やかに右折することが大切です。

右折時には、対向車だけでなく、右折方向の横断歩道に留意しながら、途切れるチャンスが来たらいつでも発進できるようにスタンバイしておくことが必要(PHOTO:写真AC_ Rosh164)
右折時には、対向車だけでなく、右折方向の横断歩道に留意しながら、途切れるチャンスが来たらいつでも発進できるようにスタンバイしておくことが必要(PHOTO:写真AC_ Rosh164)

◆     ◆     ◆

 かぶせ右折は、法的に違反してなくても、完全なマナー違反。もちろん、慎重になりすぎるのはよくないですが、後続車がたくさんいるからといって焦ったり、対向車が止まってくれることを前提に突っ込んでいくギャンブルのような運転は、大変危険。焦ることなく、丁寧な運転を心がけるようにしたいものです。

【画像ギャラリー】かぶせ右折は、マナーじゃなくてマナー違反!! (7枚)画像ギャラリー

投稿 かぶせ右折はアウト? セーフ?? 超危険な交差点のマナー違反自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。