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国産車の価格はこれからどうなる?? 国産メーカー23年の動向

 自動車メーカー各社の2022年度中間決算が出揃った。為替の乱高下や物価上昇など多くの混乱が続く経営環境のなか、決算から見えてくることとは? 経済評論家の福田俊之氏が分析する。

※本稿は2022年11月のものです
文/福田俊之、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年12月26日号

■自動車メーカーにとって円安がプラスとは限らない

増収減益となったトヨタの2022年度中間決算。決算会見では「半年先の状況を見通すことも難しい」と近副社長(写真右から2人目)はコメントしていた

「トヨタ、2年ぶり減益」、「円安『追い風』でも暗雲」─。トヨタ自動車が中間決算を発表した翌朝の全国紙には、こんな衝撃的な見出しが躍っていた。

 歴史的な円安は最大の輸出産業の自動車メーカーに爆益をもたらす。その円安の恩恵でどこの企業も好決算が期待できると思っていただけに、一瞬目を疑ったほどである。

 自動車大手7社の2022年9月中間決算は全社が増収を確保し、スズキ、スバル、マツダ、三菱の4社は最終利益でも増益だった。

 また、ホンダや日産を含めた6社が今期の純利益予想を上方修正した。このうち、スバルは前期比で3倍、三菱が89.1%増、マツダも59.4%増と桁違いの大幅な増益を見込んでいる。

 ただ、1円の円安で年間450億円の利益が増大するというトヨタは、売上高は過去最高を更新した一方、最終利益は前年同期を約35%も下回って2年ぶりの減益となった。

 しかも、今期の業績予想は円安効果で売上高を従来の34兆5000億円から36兆円に上方修正したものの、純利益は前期比約20%減の2兆4000億円に据え置いた。

 決算会見で近健太副社長は「リーマンショックを超えるような出来事が頻発して、半年先を見通すことも本当に難しい」と発言。

「円安はプラス」とは必ずしも言えない経営環境の激変ぶりを理解してもらいたいようにも見受けられる。

■トヨタの予防線

 それも道理、岸田首相が掲げる経済政策「成長と分配の好循環」では、賃上げを分配強化の柱に位置付けており、それには550万人の雇用を抱える自動車産業の協力は欠かせない。

 なかでもトヨタは春闘相場にも影響を与えて賃上げの波及効果も大きい。それだけに、円安で利益が増えた企業は賃上げを通じ、物価高の影響を緩和するために貢献すべきだというプレッシャーも大きい。

 経営基盤が盤石のトヨタは賃上げ要求に積極的に応えることは可能でも、取引先のサプライヤーなどでは、仕入れコストの上昇が経営を圧迫して厳しい決算が際立つ。自動車産業でも二極化が進み、貧富の差が拡大しつつある。

 こうした系列の下請け企業の支援を最優先して「賃上げは後回しにしたい」というのが本音だろう。決算発表で「円安メリット」をアピールすればするほど‟狙い撃ち”されるのは明白である。

 トヨタは「減益」を強調しながら、利益見通しも「据え置いた」のは、その予防線を張ったしたたかな作戦とも読み取れる。

■スズキ社長の注目発言

車両価格の値上げを実施するメーカーが増えるなか「本当に必要な装備は何か、ユーザーと一緒に考えていきたい」と語ったスズキの鈴木俊宏社長

 それはともかく、中間決算でも取り沙汰されたのは原材料費の高騰に伴う車両価格への転嫁の動き。円安に頼らないでも安定した収益を維持するには、新車の値上げに踏み切れるかでも明暗が分かれる。

 スバルや三菱、マツダ、日産が一部の車種で値上げを実施したが、今後は「庶民の足」でもある軽自動車や小型車が売れ筋のトヨタ、ホンダ、スズキなどの決断が注目される。

 そんななかで興味深かったのはスズキの鈴木俊宏社長が「皆さんの懐具合を考えると単純には値上げできない」と前置きしながら「充実した装備が本当に必要なのか。使わないけどあったほうがいいのか、それともなくてもいいのか。ユーザーの皆さんも考えていただきたい」と問い掛けたことだ。

 半導体不足などで納車遅れも解消されないなかで、ユーザー目線で既成概念を打ち破る柔軟な思考も大切であり、無駄な装備を外して価格を抑えるのも一理あるようだ。

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