あけましておめでとうございます。さあ2023年、新しい年の始まりです! トラック関連業界では、やはり目前に迫った「物流の2024年問題」が大きな話題を集めています。
果して運送業界はどう動くのか!? 公益社団法人 全日本トラック協会の坂本克己会長の年頭所感から、その答えを探ります。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部(全ト協・坂本会長年頭所感より)
写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
目前に迫った「2024年問題」
働き方改革関連法などにより、2024年4月からトラックドライバーは従来通りの働き方ができなくなります。これにより発生する諸問題を「物流の2024年問題」と呼び、運送業に限らず大きな話題となっています。
日本の運送事業者によって構成される公益社団法人全日本トラック協会(全ト協)でも、このところトラックドライバーの労働環境の改善を強く打ち出し、問題ある荷主には強い態度で臨むことを明言しています。
年が明けていよいよ目前に迫ったドライバーの働き方という課題に、運送業界はどう対処するのか? 全ト協の坂本克己会長の年頭所感にその答えがありそうです。ちょっと異例ですが、以下、要約してお伝えします。
中小企業が99%の運送業界で深刻化する若年ドライバー不足
トラック輸送事業は、全国各地域で地域の経済と人々の暮らしを支えており、エッセンシャル事業として公共交通機関の重責を担うとともに、地方創生の旗頭として、高い評価を得ているところであります。
いっぽうで、中小企業が99%を占めるトラック運送業界では、少子高齢化などによる若年ドライバー不足が深刻化し、大きな問題となっております。
さらに、今年4月からは中小企業において、月60時間超の時間外労働割増賃金率が引き上げられるほか、来年4月には自動車運転業務の時間外労働に年960時間の上限規制が適用されるなど、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う輸送量の減少や一昨年から続いている燃料価格高騰の影響によって苦しめられてきた中小トラック運送事業者にとっては、経営環境が一層厳しさを増す危機的な状況にもなりかねません。
このような状況を打破するため、トラック運送事業における「生産性の向上」、「働き方改革」の推進など、官民挙げて課題解決に向けた様々な取り組みが進められています。平成30年12月には改正貨物自動車運送事業法が成立し、令和2年4月には法改正の柱でもある「標準的な運賃」が告示されています。
「標準的な運賃」「荷主対策の深度化」が徐々に浸透
都道府県トラック協会のご尽力により、(全ト協の)会員事業者ベースの「標準的な運賃」届出率は7割を超え、徐々に浸透しつつあり、また、「荷主対策の深度化」の方策についても、徐々にその実効が図られてきているところです。
しかしながら、「標準的な運賃」や「荷主対策の深度化」については来年3月までの時限措置とされていることから、現場で働いておられるドライバーの労働条件改善を実現していくため、時限措置延長・恒久化への対応が強く求められてきます。
悪貨が良貨を駆逐することのないよう公平公正な競争の基盤を確立するとともに、問題のある荷主に対しては、改正貨物自動車運送事業法や独占禁止法等の諸々の法律により、適切な指導を行なっていただき、真面目な事業者がより効率的に事業運営を行なえる社会にしていかねばなりません。
全日本トラック協会では、政府・与党等に対する要望活動を一層強化するなど、引き続きこれらの問題に取り組んでまいります。
会員事業者の皆様におかれましては、「今がまさに、業界のさらなる健全化への勝負時」と捉えていただき、荷主に対して果敢に運賃・料金交渉を継続していただきたいと存じます。
トラックドライバーの健康問題にも注力を
いっぽうで、多くのドライバーが脳・心臓疾患のリスクを抱えているなかにおいて、昨年には「改善基準告示」(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)が改正され、来年4月に施行されることになっております。
全日本トラック協会では、改善基準告示の改正を受けて、荷主向け・事業者向けリーフレットや、改正内容を詳しくまとめた冊子を作成し、配布いたします。また、各都道府県トラック協会でのセミナーを開催するなど、新改善基準告示の周知徹底に努めてまいります。
新改善基準告示では、全日本トラック協会からの主張を受けて、厚生労働省による「荷主対策」が盛り込まれております。
厚生労働省による荷主対策の実効性を高めるためには、荷主の実態に関する情報が必要となってまいります。会員事業者の皆様方におかれては、遠慮なく行政に対して荷主情報を申告していただき、実効性の高い荷主対策の実現に繋げていただきたいと考えております。
また、新改善基準告示の施行により、ドライバーの健康と安全を確保し、過重労働や過労死を何としても防いでいくために、会員事業者の皆様方におかれては総拘束時間の縮減をはじめとしたドライバーの労働環境の改善に向けて、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
国民生活と経済のライフラインを守るために
併せて、トラック運送事業者が「国民生活と経済のライフライン」としての機能を果たし続けていくためには、利用者目線での計画的な道路整備の推進が不可欠です。
全日本トラック協会では、高速道路料金の引下げ、物流基盤の整備(高速道路ネットワークの整備・充実、休憩・休息施設、中継物流拠点の整備・拡充、暫定2車線区間の4車線化)など、トラック運送事業者にとって使いやすい道路の実現に向け、道路の環境整備の必要性を強く訴えてきました。
特に高速道路料金について、昨年12月に可決・成立した令和4年度第2次補正予算では、全国のトラック運送事業者の皆様の声が結実し、厳しい財政事情のなか、高速道路料金大口・多頻度割引の拡充措置が令和6年3月まで延長されました。
引き続き、全国道路利用者会議などと連携しながら、トラック運送事業者の生産性向上に資する道路環境整備の実現等に向けて、政府・与党に対して全力で働きかけを行なってまいります。
トラック運送業界は、「安全で安心な輸送サービスを提供し続けること」が社会的使命であり、常に「安全」を最優先課題と位置づけ、環境対策や労働対策などとともに、持続可能な産業として将来に向けた様々な取り組みを進めてきました。
トラック運送事業者として環境・SDGs対策の推進も
その取り組みの一環として、全日本トラック協会では、令和4年度事業計画において「環境・SDGs対策の推進」を掲げ、昨年12月の理事会において、「物流の視点から社会に貢献するSDGsに取り組む」と宣言を行ないました。
運送事業者がSDGsに取り組むことで、人材採用や定着に直結するとともに、荷主企業や地域社会からの信頼獲得にも繋がることから、全日本トラック協会においても会員事業者におけるSDGsへの理解促進とSDGs達成への取り組み推進を図ってまいります。
本年中には、国土交通省において、「自動車局」が「物流・自動車局(仮称)」に再編される予定と伺っております。
これからは、「物流」という広い観点からトラック事業の将来を見つめなおし、業界の発展をとおして強く求められているGX(環境問題)、DX(デジタル化)等の社会問題に積極的に対応し、社会貢献に力を注いでいく所存です。
経済情勢が厳しさを増すなかではありますが、そうした環境下においてもトラック運送業界が一丸となり、業界を取り巻く諸課題の解決に向けて必死に取り組んでいくことで、当業界の健全的な発展に向けての道が大きく開かれるものと確信しております。
今年が「魅力あふれるトラック運送業界への大きな転換点」となるよう、新たな気持ちで精一杯取り組んでまいりたいと考えております。
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