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 フォードの商用車部門・フォードプロとDHLグループは、ラストマイル輸送(消費者に届くまでの最後の輸送区間)の電動化で提携することなどで合意し、覚書(MoU)を締結した。

 フォードプロは2023年末までに2000台の電動バンをDHLに提供するほか、輸送分野に特有の課題への対処や、車両の稼働時間・サービス・生産性の最大化などのソリューションを提供する。

 また、合意ではフォードプロのデジタル化・充電ソリューションなど革新的なアイデアや製品に対するDHLのアーリーアクセスを認めており、将来的にはDHLの運用に最適化した製品の共同開発も視野に入れている。

 フォードは経営危機後の2016年を持って日本市場から撤退しているが、世界的な輸送プロバイダーとの提携を通じてラストマイル輸送の電動化をグローバルに主導したい考え。もしかしたら商用車での再参入もありうるかも?

文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/Deutsche Post DHL・The Ford Motor Company


フォードとDHLが提携

DHLとフォードがラストマイル輸送の電動化で合意! フォードが商用車で日本市場に再参入する未来もありうる!?
フォードの電動車両。左から、エレクトリックF150、Eトランジット、マスタング・マッハE

 アメリカの自動車メーカー・フォードの商用車部門であるフォードプロと、ドイツを本拠とする世界的輸送プロバイダーであるドイチェポストDHLグループは、グローバルに展開する運送事業を対象にした電動バンの導入に関する覚書(MoU)を交わした。

 これにより両社は持続可能な輸送サービスを提供するというコミットメントへの道筋をつける。

 予定されている提携には、2023年末までにフォードプロがDHLグループに2000台以上の配送用電動バンを提供することも含まれている。220か国以上で事業を行なう多国籍企業との提携を通じて、フォードはラストマイル輸送の電動化をグローバルに主導する地位を確かなものにしたい考えだ。

 覚書は、電動フリートを運用するために必要となるすべてのソリューションをカバーしており、これにはフォードプロのコネクテッド技術である「Eテレマティクス」ソフトウェアや充電ソリューションなど、両社の共通のゴールであるゼロ・エミッションに向けて、運行コストを低減し、事業を効率化するための技術も含まれている。

 フォードのゼロ・エミッション目標は、欧州においては販売車両と施設、輸送、サプライヤーの全てにおいて、2035年までにカーボン・ニュートラリティを実現することを目指している。また、遅くとも2050年までにグローバルにこれを達成するとする。

 いっぽうDHLグループは環境保護のためによりクリーンな運行を行なうことにコミットしおり、輸送のゼロ・エミッションに向けて2030年までに70億ユーロを投資する計画だ。集配用の車両は2030年までに60%を電動化する。

Eトランジットは既に運行を開始

 フォードプロはこの合意の元、最初のEトランジットを既に納車しており、DHLグループの電動フリートの一部として複数の国でラストマイル輸送に活躍している。
(DHLがEトランジットの運行を開始しているのは、ブルガリア、ベルギー、チェコ、ドイツ、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、イギリスとのこと)

 フォードプロ・ヨーロッパのゼネラルマネージャー、ハンス・シェップ氏は次のようにコメントしている。

 「フォードプロとドイチェポストDHLグループは、より優れた持続可能性と電動ソリューションへのコミットメントというビジョンを共有しています。この合意は、世界中の数100万件という輸送が電動車両により行なわれるための、重要な一歩となります。

 Eトランジットは北米の商用EVで最も売れている商品です。6月以降は欧州においても同セグメントでベストセラーとなっています。この全電動の2トン車は、私たちの野望を実現するために、もう動き出しているのです」。

 いっぽう、DHLグループで調達を担当する役員で、モビリティ部門のトップを務めるアンナ・スピネッリ氏は次のように話した。

 「ラストマイル輸送の電動化は、私たちの事業を脱炭素化するための柱となります。フォード・Eトランジットを加えたことで、私たちのグローバルフリートは2万7000台の電動バンを保有することになり、世界中でグリーンな輸送を提供する能力がさらに強化されました。

 共同で輸送分野に特徴的な要求に対処することで、運行とサービスにおける効率はさらに高まるでしょう」。

車両の共同開発も視野に

 これらの車両がDHLグループのフリートに加わったのは、配送が一年で最も忙しくなる時期に当たり、繁忙期を通じてサステナブルな輸送が可能になった。

 今回の合意により注文されたEトランジットのパネルバンは、アメリカと欧州における速達貨物の取り扱いを前提としたもので、日本市場は対象となっていない。そもそもフォードは2016年に日本市場から撤退しているので、いま国内に入ってくるフォード車は個人輸入など少数のみだ。

 ただし、DHLは日本でもビジネスを行なっており、両社はラストマイル輸送の電動化をグローバルに進めるということなので、もしかしたらフォードが商用車で日本市場に再参入する未来があってもおかしくはない。

 なお、DHLグループはドイツの都市内輸送用にカスタマイズしたフォードプロ製の電動ボックス車の購入も行なっている。DHLはかつてドイツのストリート・スクーター社を子会社化して自社で配送用バッテリーEVを製造していたが、同社はルクセンブルクの企業に売却されている。

(DHLはストリート・スクーターの事業を「閉鎖」と発表したが、その後方針転換して売却。ちなみに日本ではストリート・スクーターの配送車はヤマト運輸に納入されている)

 自社での車両製造をやめた後、DHLはフォードプロやメルセデス・ベンツ、ボルボ・トラックスなど外部から配送用EVを調達していた。

 両社が署名した覚書では、フォードとDHLグループの更なる協業の可能性についても言及している。たとえば新しいデジタル/充電ソリューションのほか、将来的には車両の共同開発も目指すようだ。共同開発が実現すればDHLのEV開発の経験が活きてくるだろう。

 また、フォードプロはDHLグループに対して革新的アイデアへのアーリーアクセスを提供することに加えて、製品化前(開発中)の車両やサービスへのアクセスも提供する。これにより両社は、グローバルにあらゆる市場での協働機会の拡大を模索している。

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