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 果たしてどちらがコンパクト4WDターボマシンの真髄にふさわしいのか? 今回、「BMW M240i」と「アウディRS3セダン」の乗り比べをドイツにて行った。アウトバーンを含むおよそ1000kmに渡る長距離でのドライブ比較のレポートをお届けする。

文/木村好宏、写真/木村好宏、BMW

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■世界的にも珍しいコンパクトFRのBMW M240i xDrive VS アウディRS3

 世界的に見てコンパクトセグメントで2ドアモデルは非常に珍しくなってきている。さらに後輪駆動となると、まさに絶滅種でわが国ではトヨタ86、あるいはスバルBRZくらいしか存在しない。ヨーロッパでも同じで唯一BMWが2021年、後輪駆動の2シリーズをフルモデルチェンジして販売を続行することを発表していた。

 しかも、このシリーズ(G42)にはBMW M社がプロデュースするスポーツモデル、「M240i xDrive」が存在する。搭載されるエンジンは3L直列6気筒ターボで最高出力374ps、最大トルク500Nmを発生、8速オートマチックを介して4輪を駆動0-100km/hを4.3秒で加速、最高速度は250km/hに達する。

 このBMWのスポーツクーペが世に出て間もなくアウディの子会社、アウディスポーツ社がドイツで同じコンパクトセグメントにRS3を投入した。こちらもコンパクトセグメントに属するが、セダンそしてスポーツバック(ハッチバック)ともに4ドア(あるいは5ドア)ボディを持っている。

 フロントに横置き搭載されるエンジンは2.5Lの直列5気筒ターボだが、最高出力は400ps、最大トルクは480Nmを発生、0-100km/hを4.1秒、最高速度は250km/hだがオプションで280km/hまで引き上げることが可能だ。

 両モデルともにすでに日本への上陸を果たしているが、今回はドイツでアウトバーンを含むおよそ1000kmに渡る比較試乗を行った。

今回、ドイツで1000km比較試乗したアウディRS3とBMW M240i xDrive。ボディカラーに個性があふれている両車の魅力はいかに?

 2021年、富士スピードウェイでお披露目されたのと同じキャラミグリーンと名付けられたショッキングなカラー、さらに大型化されたシングルフレームグリルで登場したRS3セダンに対して、M240iはサンダーナイトメタリックという深いバイオレットブルーの控えめなカラーをまとっていた。

 また、これは好みの問題だが、私にとっては嬉しい(!?)ことにキッドニーグリルは4シリーズのように巨大化していない。

 デザインはアウディがFF独自のキャビンフォワードなのに対して、BMWはキャビンバックワード、すなわちロングノーズのシルエットを持っている。装着タイヤはともに19インチでスポーティな安定感を見せているが、アウディのほうが若干へん平率は高い。

 キャビンに入ると、両モデルともにデジタル化されたインフォテイメントモニターが目に入る。RS3のほうはコックピット、そしてダッシュボード中央にはタッチスクリーンがレイアウトされている。

 また、アルカンタラステアリングホイールの12時の位置にはボディ・カラーとマーキングが入るなどマニアックな演出が行われている。ただし、コンソールのシフトスイッチがゴルフと同じなのはちょっと興ざめだ。

BMW M240i xDriveには、ワイドスクリーンのカーブド・ディスプレイを採用。ただ、アナログスイッチをできるだけ省略しているため、操作性に戸惑うことがある

 一方、BMWは最新のOP8を搭載、ワイドスクリーンのカーブド・ディスプレイが用意されている。操作性に関してだが、BMWはアナログスイッチをできるだけ省略しており、最初は戸惑うかもしれないが慣れれば探したいアイテムには正しく引っ張り出せる。

 片や、アウディはマニュアルスイッチなどが残されており、すぐにスタートすることができた。

■走行性能と乗り心地の比較はいかに? 

 走り出すと両モデルの違いはいっそう明らかになってくる。BMWの6気筒エンジンと8速オートマチックは快適でバランスが取れており、操舵力、ギア比、そして路面からのフィードバックは非常に自然であった。

 いっぽう、アウディの直列5気筒ターボは、BMW伝統のシルキーシックスには及ばないまでもスムーズでトルクフルなパフォーマンスを発揮してくれた。また、アイコニックなサウンドと独特なバイブレーションは玄人には垂涎ものだ。

 しかも、テスト後のオンボード燃費チェックでBMWよりもわずかながらいい結果が示されていた。また、ステアフィールはBMWに勝るとも劣らないが、全体的にやや軽すぎで路面情報はわずかにフィルターがかかっているような感じが残った。

 両モデルともに4WDが装備されているが、操縦&駆動特性はアウディのほうが全体的に安定感は高かった。さらに、コーナーでは新たに採用されたトルクスプリッターのおかげで必要に応じて各後輪にトルクが適正に伝わり、スポーツ走行では思い切ってスロットルを踏んでも安定した姿勢でクイックな脱出が可能だった。

 一方、BMWは4WDではあるが、後輪駆動のキャラクターが大きく残されており、コーナーでスロットルを踏み込むと後輪が外側に出ようとする。

 しかし、最後までコントローラブルでBMWのスローガンどおり、「駆け抜ける歓び」を楽しめる。また、ブレーキは例えウェットな状況でも確かなペダルフィール、そして制動コントロール性ともに明らかにBMWのほうがよかった。

アウディRS3とBMW M240ixDriveの最高出力はほとんど差がない。さまざまなドライブモードを楽しめるスポーツ性の強いハイパーコンパクトだ

 アウディRS3とBMW M240ixDriveの最高出力はわずか26psの差であったが、トルクスプリッターに代表される最新のシャシー技術、そして数々のドライブモードを与えられたRS3セダンのスポーツ性はハイパーコンパクトにふさわしいものだった。

 しかし、これらはもともとFF特性をFR風に演出するためのもので、楽しむにはちょっと頭とスキルが必要だ。さらに、そのほとんどはクローズドサーキットで本領を発揮するもので日常のドライブではほとんど試すチャンスはない。

 ゆえに4ドアの持つ実用性と快適性をウィークデイで発揮、そして週末にはスポーツ走行を楽しみたいと思うドライバーにお薦めする。また、アウディ最後のRSモデルという意味でも価値ある存在になるに違いない。

 いっぽう、BMWはもとよりFRなので動きは自然で、肩の凝らないスポーツドライブを楽しむことができる。さらに2ドアを自分のパーソナルなライフスタイルの象徴として隠れたぜいたくを楽しめる。

 同時にダイナミック・パフォーマンスは日常ドライブには必要にして充分だ。加えてアウディよりも60万円安い価格も魅力的だ。

 それでも満足しないBMWファンにはあと登場したばかりのM2(G87型)しかない。最高出力460psを後輪で駆動するM社のアイコニックなスポーツセダンは間違いなく最高の「お気に入り」になるに違いない。

今回、比較試乗した「BMW M240i」と「アウディRS3セダン」のスペック表
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