オートスポーツwebでは、2022年シーズンも世界各地のさまざまなモータースポーツ情報をお届けしてまいりました。今回は2022年編集後記ということで、各カテゴリーの担当スタッフが選んだ個人的名レース&名シーンをご紹介いたします。今回はNTTインディカー・シリーズ編。
インディカー担当の編集ISOが個人的にゾクゾクしたレースをセレクトしました。
■開幕戦でいきなり見せた前年度のルーキー・オブ・ザ・イヤー
2月末という早い開幕を迎えたインディカー。2021年にインディカーデビューを果たしたオーストラリアV8スーパーカーシリーズの王者スコット・マクラフラン。
常勝ペンスキーで1年培った経験を2年目の初戦のセント・ピーターズバーグでいきなり結果に結びつけました。
インディカー初ポールを獲得すると、前年王者のアレックス・パロウを抑えインディカー初勝利。マシンから降り際に転んでしまったマクラフラン。その後、2勝を挙げた際も転がるパフォーマンス“ローリングマクラフラン”を披露していました。
チャンピオン争いも繰り広げランキング4位で2022年を終えたマクラフラン。常勝ペンスキーにふさわしいドライバーへと成長を見せるきっかけのレースが開幕戦だったと思います。
■インディカー最強ドライバーの劣らない強さ
インディカー現役ドライバーの中で最強ドライバーの座に君臨する“アイスマン”ことスコット・ディクソン。歴代単独2位となる通算53勝目を挙げたナッシュビル戦は、ディクソンのレース巧者ぶりが発揮されるレースとなりました。
インディ500ではポールポジションを獲得し、レースでも速さを見せ2度目のインディ500制覇が近づいていましたが、最後のピット作業でまさかのピットレーン速度違反で後退し勝利をつかむことはできませんでした。
その後も勝利をなかなか掴めずにシーズン前半を終えてたディクソン。第10戦トロントでようやく今季初勝利をつかみ、チャンピオン争いにも加わることに。
さらにディクソンらしいレースを見せたのがナッシュビル戦でした。2022年も荒れた展開となったミュージックシティGP。
予選14番手と振るわなかったディクソンは序盤のアクシデントでマシンにダメージを負い23番手まで順位を下げることに。
しかし、フルコースコーション中にピットストップを繰り返しマシンを修復していくと、絶妙なタイミングで最後のピット作業を行い上位に浮上。最後はマクラフランを抑え、今シーズン2勝目を挙げました。気づいたらディクソンがトップという何度も見てきた展開にゾクゾクしたレースでした。
通算53勝目を挙げ、AJ・フォイトの67勝に次ぐ歴代勝利数単独2位となったディクソン。8度目のチャンピオン獲得とはなりませんでしたが、いまだ衰えを見せない強さにAJ・フォイトの記録に並ぶ日が来るのではないかと期待してしまいます。
■デイル・コインのふたりがみせた終盤の速さ
デイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングに移籍するも厳しいシーズンとなった佐藤琢磨。勝利にいちばん近かったレースがワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイで行われたインディカー第15戦でした。
予選8番手からレースに挑んだ琢磨。膠着する展開を読み、予定より20周ほど早く2回目のピットストップを行うと、コースの空いているところに出ることに成功。ハイペースで走り続け、127周目にトップに浮上しました。
その後も快調に飛ばし2番手以下に6秒以上差をつける琢磨選手の速さを見て、このレースは勝てると速報へ向けて記事制作にも気合が入ります。
しかし、145周目のジャック・ハーベイのクラッシュによりイエローコーションとなると、ピットインのタイミングが一瞬遅れポジションを大きくロス。終盤、誰よりも速いマシンとなっていましたが、5位まで順位を上げるのが精一杯となり悔しいレースとなりました。
その琢磨に代わってレースをさらに盛り上げたのが同僚のデイビッド・マルーカス。残り10周でマルーカスは3番手に浮上。さらに2番手のスコット・マクラフランに急接近し、最終ラップでオーバーテイク。優勝には届かなかったもののルーキーの初表彰台獲得の走りに驚いたレースとなりました。
■連日のトップタイムに期待が高まったインディ500
レースではありませんが、2022年のインディ500は期待が抑えられない展開となりました。初日からトップスピードを記録した佐藤琢磨。毎日のようにトップに名を連ね、決勝へのセッティングを煮詰めていく姿に、“今年はやばい”と3度目のインディ500制覇に期待が膨らんでいきました。
決勝レースでは、歯車がかみ合わず残念な結果となりましたが、30万を超える観客がインディアナポリス・モータースピードウェイに帰ってきたことも相まって、スタート前のゾクゾク感は忘れられません。
2023年も引き続きインディカー参戦を発表している佐藤琢磨。どのような体制になるのか注目ですが、インディ500では再び夢を見させてくれることでしょう。