『NASCARガレージ56プロジェクト』は、2023年のル・マン24時間レースに特別枠から参戦予定の改造版のNASCAR“Next-Gen”車両『シボレー・カマロZL1』の耐久テストを強化していくと表明した。
ヘンドリック・モータースポーツが主導するこのプロジェクトは今週、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイにて、水曜日の12時間連続走行を含む2日間のテストセッションを行う。
1月28日にこのプログラムに加わることが発表された、2009年F1ワールドチャンピオンのジェンソン・バトンも、このデイトナでのテストで初めてカマロZL1を走らせる。ル・マンでのチームメイトとなるジミー・ジョンソン、マイク・ロッケンフェラーもテストに出席するほか、リザーブドライバーを務めるコルベット・レーシングのジョーダン・テイラーもテストに加わる。
■すでに3200kmを走行。NASCARにはない悪天候で得たものも
かつてジョンソンの7度のNASCARカップ・タイトルをクルーチーフとして支え、現在はヘンドリックの競技担当副社長を務めるチャド・クナウスは、12時間の耐久テストでは新たにマシンに取り付けたヘッドライトで夜間走行も行う予定だと説明している。
NASCARガレージ56プロジェクトはその後、2月下旬には同じくフロリダ州に位置するセブリンング・インターナショナル・レースウェイへと向かい、ル・マンのフルレース距離に匹敵する長時間走行を行うことを目指しているという。
デイトナで行うテストについて、クナウスは「夜の時間帯のテストもあるので、どうなるのか我々は楽しみにしている」と記者団に語った。
「NASCARのマシンにライトをつけるなんて、何年ぶりか思い出せないくらいだ。我々はその作業に取り組み、ワークショップでそれらを装着し、いくつかの予備テストを行った。とても興奮しているよ」
「テストでやらねければならないセットアップは、大量にある。全体的な設計の観点からは、(理想とする)クルマにかなり近づいていると感じている。どこかの時点で線を引かなければ(仕様を確定しなければ)ならないが、その段階まで来たという感じがしている」
「そして、セブリングでは18時間から24時間、連続走行することが目標だ」
「セブリングでそれができれば、かなり近づいたと言える。セブリングでは、他のタイプの車両とコースを共有することになるから、追い抜いたり追い抜かれたりするという面でも良いのだ」
クナウスによると、NASCARガレージ56のテストカーは、昨年8月にミシュラン・レースウェイ・ロード・アトランタで最初のロールアウトを行って以来、アメリカ国内サーキットでのテストを重ね、約2000マイル(3200km)を走破したという。
悪天候の中での走行も、このプロセスの一部となった。
「台本通りにはいかないものだ」とクナウスは叫ぶ。
「これまで行ったすべてのテストで、必ず1日は雨に見舞われている。(雨天時はレースをしない)NASCARの世界から言わせてもらえば、最悪だ」
「だが正直に言えば、ロードコースでのレースに対して、そして我々の挑戦に対しては、(悪天候は)素晴らしいことだ」
「パートナーのグッドイヤーにとっては、雨天時のクルマの性格を知るための、いい機会になった」
「ワイパーについても、何が機能し、何が機能しないかを研究している。雨が降ると何がうまくいかないのか、ブレーキはどう動くのか、などもね。テストは素晴らしいものだった」
■サルトでのタイム予想は? ハイブリッドへの言及は避ける
クナウスはサルト・サーキットでのラップタイム予想について、「ターゲットは少し変動している」としながらも、チームとしては「GTEの少し下」、つまり総合争いの最後方に位置することを望んでいると述べた。なお、ガレージ56車両には、賞典外での参戦となるため、順位認定の対象外となる予定だ。
ヘンドリック・モータースポーツ、NASCAR、シボレーは、ハイブリッドパワートレインを搭載するかどうかなど、このクルマの技術的な詳細をまだ明らかにしていない。
ヘンドリックの社長兼ゼネラルマネージャーであるジェフ・アンドリュースは、充分な信頼性を確保するため、エンジンの開発に大きな力を注いできたと説明する。
「走行距離は、我々があまり経験したことがないものだ」とアンドリュース。
「我々はカップ・シリーズではひとつのエンジンを2レース使用するため、マイレージの観点からすると1200~1400マイル(1930〜2250km)ほどとなる」(※通常、ル・マンの決勝走行距離はトップカテゴリーで5000kmを超える)
「我々は、パートナーと協力してこのエンジンを開発している。ECRはキャデラックV8の世界で、多くの経験を持っている」
「これは素晴らしいグループ・プロジェクトであり、これまでのところ、エンジンの信頼性の面ではとても満足している」
マシンがハイブリッドシステムを搭載するかどうかという質問に対して、クナウスはこう答えた。
「いまは、そこに足を踏み入れることができない」
「それは最初に発表されていたものだが、まだそれを披露することには踏み切れない」
クナウスはさらに、マシンの開発作業を「感情のジェットコースター」と表現し、NASCAR、IMSA、シボレー、グッドイヤーのサポートを得ていることを踏まえ、この種のプログラムがもたらすプレッシャーについて言及した。
NASCAR車両によるル・マン参戦は1976年が最後だが、2台とも完走はしていない。
「我々は、我々ができる適切な方法、つまり速く走ることで、ヘンドリック・モータースポーツを象徴したい」とクナウスは語る。
「だが、腰を落ち着けて、いま我々が挑戦しようとしていることが何であるかを考えるならば、我々はプロフェッショナルでありたい。したがって、NASCARコミュニティとして何ができるか、ヘンドリック・モータースポーツが何であるかを示し、24時間レースに挑戦したいと思う」
「それ自体が、極端な挑戦なんだ。この何十年の間、24時間走行をするのに苦労してきた人たちがいるんだからね。それはクルマだけでなく、人々やコース上の他のクルマについても同様だ」
「ヘンドリック・モータースポーツとNASCARを代表して、いかにベストを尽くすか、それが我々のアプローチだ」