<p>エンタメで震災伝承、向き合う作り手 「すずめの戸締まり」100億円突破</p><p>エンタメで震災伝承「すずめの戸締まり」100億円突破 「君の名は。」の新海監督。東日本大震災について「僕の観客のボリュームゾーンは半分ぐらいの人しか震災を共有していない。でも今ならまだ巨大な出来事があったと共有できるんじゃないか」と思いを明かす</p><p>エンターテインメントを通じた東日本大震災の伝承に、映画監督たちが向き合っている。11月公開のアニメーション映画「すずめの戸締まり」(新海誠監督)は興行収入が1…</p><p>「すずめ-」は幼い頃に震災を経験し、母を亡くした女子高生、岩戸鈴芽が主人公。大地震を起こす化け物が出てくる「扉」を閉めて各地を巡っている青年と出会い、一緒に旅をしながら成長していく。 平成28年公開の「君の名は。」で興収250億円を超えた新海監督だが、「僕の観客のボリュームゾーンは、もはや半分ぐらいの人しか震災についての認識を共有していない」とし、「まだそんなに昔のできごとになっていない今であれば、日本を書き換えてしまった巨大な出来事があったんだということを、ギリギリ観客と共有できるんじゃないか」と新作発表に駆り立てた思いを明かす。 「天間荘-」は、天界と地上の間にある町が舞台で、主人公以外は津波で亡くなった人々だと示唆されている。原作は25年に高橋ツトムさんが発表した漫画だ。 北村監督は「震災の半年後に高橋君から『物書きとして生きている以上、震災や原発のことは作品にしなくてはいけない』と告げられ、漫画家としての覚悟に感銘を受けた。高橋君も僕も被災者ではないが、被災地を訪ねるなどリサーチを重ねた上で描いている」と作品に込めた熱意を話す。 犠牲者の思いも描く 福島第1原発事故を再現した「Fukushima50(フィフティ)」(令和2年、若松節朗監督)など、東日本大震災を描いた映画はこれまでもあったが、2作品の特徴は、震災をテーマにしながらエンタメに昇華させている点だ。そこでは今は聞けない亡くなった人々の思いも描かれる。「すずめ-」で主人公は、震災の朝に人々が交わした言葉を聞く。「天間荘-」では、亡くなった人々の思いを携えて主人公が現世へと戻る。 映画「天間荘の三姉妹」から 「不謹慎なことをするな、と怒る人がいるかもしれないという怖さはあった」と新海監督。「しかし、神話がそうであるように、災害であれ戦争であれ物語にしてエンタメの形をまとわせて表現し、語り続けてきたのが人間の文化だという気がしてならない」と語る。 映画評論家で経済解説者の細野真宏さんは「今でも緊急地震速報が流れれば震災が頭に浮かぶのが現実で、少しの震災描写でも必要以上に重苦しくなってしまう。そういった中で、震災を作品に取り入れるのはチャレンジングな構想だ」とし、「被災した人々や今苦しい状況の人に向けて前向きなメッセージを提示できたことは、価値があるのではないか」と評価している。</p>