路線バスもコロナの影響を少なからず被り、一部の座席を封鎖する対策で感染拡大防止に努めてきた。最近の動向はどうなっているのだろう?
文:中山修一
写真(特記以外):バスマガジン編集部
■ロックダウンされてしまったプラチナ席
路線バスで封鎖されている座席といえば、大抵は進行方向左側の一番前と運転席の真後ろだ。
前者は前面展望が楽しめることから「ヲタシート」のアダ名でおなじみ、後者はプライベート感の高さから着席希望者が多い、いずれも人気の座席である。
そんな最前列の座席がコロナ(COVID-19)の影響で利用できなくなったのが、緊急事態宣言が発出された2020年4月頃からだった。
これは乗客同士での感染防止よりも、乗務員を保護するために採られた措置と言える。最前列座席は左右いずれも運転席に最も距離が近いため、封鎖もやむ無しというわけだ。
もともと左側の座席がなく、代わりに燃料タンクが置かれている車種の場合も、運転席真後ろの座席は基本クローズとなっていた。
■法律で決まっているの?
一部座席の利用制限は、国が定めた絶対遵守の決まり事なのかといえば、実はそうではなく自主規制に近い。
実際の対策開始日よりも少し後に公開された、日本バス協会による「バスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」に基づいている事業者が殆どだ。
同ガイドラインを開くと、座席の使用に関する項目が二つ記載されている。該当項目を抜粋すると…
【運行中】
利用状況を踏まえ、バス車内の一部の座席の使用を禁止することや続行便を運行すること等により、乗客と乗務員や乗客同士の間隔を空け、乗客と乗務員が安心できる車内環境を確保するよう努める。
【利用者に対する協力のお願い】
定員上、後部座席に着席可能である場合には、利用者に対して可能な限り後部座席に乗車するよう理解を求めるよう取り組む。
…となっている。
2020年5月14日の初版をベースに、2022年12月1日リリースの第7版まで改訂されている。
上記の【運行中】の項目であるが、2020年7月21日の第4版から「(乗客と乗務員の飛沫感染を防止する対策がとられている場合は除く。)」が追加、第7版で全ての記載がなくなる。
【利用者に対する協力のお願い】のほうは、第4版の時点で早々に削除されている。
2023年1月現在、一部座席の利用制限に関して、ガイドライン的には感染対策の枠組みから既に外れていると解釈できる。
■判断は事業者それぞれ?
ガイドラインに書かれなくなれば即開放して良い、とも取れなくはないが、なにせ相手は玉虫色をしたウイルス……まだ暫く様子を伺っておいたほうが無難とも考えられる。
2023年1月現在のところ、最前列座席の利用可否状況は本当にバラバラだ。ビニールシートを被せたり、ロープやプラスチックの鎖を渡して利用禁止にしている路線バスはまだまだ多い。
いつ再開するのかを指定した日にコロナがパッタリ止む、などというミラクルはまず起こらないゆえ、最前列封鎖中の各事業者としても「当面の間」としか言えないのが現状だ。
それに対して、2021年の後半あたりから再開の兆しも見え始めている。最前列座席の利用を再開した事業者の例に…
・高槻市営バス(大阪府・2021年9月30日〜)
・東急バス(東京都・2022年3月22日〜)
・宗谷バス(北海道・2022年7月1日〜)
・京都市バス(京都府・2022年7月1日〜)
・神姫バス(兵庫県・2022年11月10日〜)
…が挙げられる。
それ以前から停止と再開を繰り返していた事業者もあったが、ちょうど2022年が転換期の始まりだったのかもしれない。
この他にも、運転席に飛沫防止カーテンを取り付けることで対策完了として利用を再開した宮崎県の宮崎交通(2020年11月から順次)や、左側のみを開放している神奈川中央交通などの事例が見られる。
神奈川県の横浜市交通局のように、利用は左右とも可能であるものの、混雑時以外は控えてもらうよう注意書きを掲示している事業者もある。
バスの座席に限って言うなら、コロナ前の姿に少しずつ戻ってきているようで、今後さらなる期待が持てる。
投稿 バスのヲタシート復活の兆し!? 路線バスの最前列座席は今…… は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。