今年度上半期(2022年4~9月)の国内販売でのEV率が国内大手自動車メーカーとしては初めて1割を超える10.1%を記録した日産。今後登場する日産のEVやe-POWER車はどうなるのか、すでに新型フェアレディZをオーダーした西村直人氏が占う。
文/西村直人、写真/ベストカー編集部
■日産EV軍団が好調を持続!
勢いづく日産の電動化戦略。BEV専用車である「アリア」、軽自動車のBEV「SAKURA」はいずれも好調で、「リーフ」もそれを下支えする。なかでもSAKURAの快進撃はすさまじく、発売から1カ月あまりの2022年7月末の時点で2万3000台を受注し、そのうち53%が日産以外からの新規顧客だった。
こうした快進撃はあらゆる数字に現れている。2022年上半期(4~9月)の国内市場では、BEVの販売比率(受注ではない)が初めて10%の大台を突破した(10.1%)。これは発売前から半導体をはじめとした希少部品の優先的な確保など、しっかりとした生産計画によるものだが、それにしてもSAKURAの影響力は大きい。
電動化なので、当然ながらシリーズハイブリッド方式である「e-POWER」も含まれる。2021-2022の日本カー・オブ・ザ・イヤーカーであるe-POWER専用車「ノート/ノートオーラ」は、2022年第一四半期(4~6月)のシェアを2021年同時期から4%伸ばして17%とした。
4代目の現行型エクストレイルも人気だ。e-POWERに「VC(可変圧縮化/Variable Compression)ターボエンジン」を組み合わせ、シングルモーターのFFモデルに加えて、前後ツインモーター方式の「e-4ORCE」も用意した。初代から継承するタフギヤ感覚と、最先端のe-POWER(VCターボ)+e-4ORCEは最強のタッグだ。
■クルマとしての魅力だけでなく、補助金の追い風も大きい
アリアやSAKURA、そしてエクストレイルにしても乗った瞬間にスッと動く反応のよさを実感する。電動駆動車ならではのメリットであり、同時に販売店での短時間試乗でも伝わる利点なので、結果的として販売実績も上向きになる。
加えて、BEVやPHV(プラグインハイブリッド車)などの場合は国と自治体の補助金対象となる。これも大きな後押しだ。東京都在住の場合、アリア「B6」モデルにProPILOT2.0をオプションで装備すると最大156万8500円、SAKURA「G」グレードでは最大116万5600円が各々優遇される。
なお、CEV補助金残高は、2022年11月18日時点で22億円。このままのペースでいけば2022年度(令和3年度補正予算及び令和4年度当初予算分)の終了見込みは11月下旬頃になる。
このようにクルマ単体での魅力に加え、補助金による経済的援助を受け、BEVを筆頭にした電動化車両の販売には追い風が吹き、それが昨今の日産の快進撃を生み出した。
■部品不足で電動車のみならずガソリン車も納期は遅延しているが……
ただ、コロナ禍に端を発する部品不足により、製造/販売が思うようにいかない状況が続く。結果、アリア、SAKURA、そしてエクストレイルは注文の一時停止、いわゆる受注停止を余儀なくされた。アリアにいたっては高精度な半導体や新技術を支える部品などの使用数が多いことから、契約者の納期が当初よりさらに遅れる見込みだ。
部品不足は電動車だけの問題ではない。純粋なガソリンエンジンモデルとしては最終型になるであろう新型フェアレディZにしても価格発表からわずか3カ月の7月末日をもって受注停止となり、現時点でも販売再開の目処すら立っていない。このことは読者の多くがご存じだろう。
2022年11月28日に発表された日産のドル箱ミニバン、新型「セレナ」にも強化型1.4Lのe-POWERと新型エンジンを搭載。すでに大ヒットの予感だが、先の状況から長期間に渡る納車待ちへの覚悟も必要だ。
さらに「エルグランド」や「スカイライン」の次期型も電動化モデルとしてのデビューが待たれるが、発表するクルマの多くが納車はおろか製造すらできていない実情で、本当に次期型が控えているのかという疑問すらわいてくる……。
■「Nissan Ambition 2030」ではEV15車種など新型電動車23車種の投入を表明
2021年11月29日、日産は長期ビジョンとして「Nissan Ambition 2030」を発表している。ここでは、今後5年間で約2兆円を投資し、電動化を加速すること、2030年度までに電気自動車15車種を含む23車種の新型電動車を投入し、グローバルの電動車のモデルミックスを50%以上へ拡大すること、全固体電池を2028年度に市場投入することの3つが掲げられた。
続く2022年6月28日に開催された第123回定時株主総会の事業報告で、取締役/代表執行役社長兼最高経営責任者である内田誠氏は次のように述べた。
「これまで進めてきた事業構造改革「Nissan NEXT」の結果として、生産能力の20%削減と、車種数の15%削減により無駄を排除し、3500億円以上の固定費も同時に削減。一方、e-POWERの積極的な導入で商品価値を高め1台あたりの売上高は18%高めた」
そのうえで電動化では車両、バッテリー、充電器の開発/生産などを含め、電動化技術に対して約1兆円の投資を行いつつ、今後5年間でさらに約2兆円を投資して電動化を加速すると強気だ。
さらにNissan Ambition 2030への踏み込んだ言及として、2026年までにBEVとe-POWER車を20車種投入し、電動車のモデルミックスをグローバルで40%以上に引き上げつつ、日本市場においては電動車の販売比率を55%以上にするとした。
■日産の内燃機関車は生き長らえる
少し前までの電動化といえば「内燃機関からの脱却」を意味した。だから、我々クルマ好きは置いてけぼりなのかと心配されたが、少なくとも2026年時点で残り45%、つまり約半分の日産車の販売は内燃機関車との目論見に。
具体的には、2021年国内販売実績が45万1000台だから、そこをベースに皮算用すれば20万台程度は内燃機関車となる。
将来的には「GT-R」を筆頭にすべてが電動化(e-POWER以外のハイブリッドシステムを含むと予想)され、一部はBEV化となるのだろうが、内燃機関車はゼロにはならない。VCターボのような内燃機関の利点を伸ばした電動化や、熱効率50%を達成する新燃焼コンセプト「STARC」技術によって内燃機関は生き長らえる。
これからもクルマ好きがワクワクするような新型車が次々に日産からデビューするぞ!
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